消え残るアクアマリン

清水レモン

鏡の向こう

 おれは自分を見る。
 正確には鏡を見ているだけ。鏡に映っているのが、たまたま自分。
 目的もなく鏡を見るのは好きじゃない。ふいうちは苦手だ。
 いまこうして向き合っているのは、物理的な鏡そのものなのか。それとも。
 映し出されて左右反転している景色と自分自身だろうか。なんなら。
 おれは鏡の向こうに行きたいと願っている。
 とか。
 あれ?
 なんか急に懐かしい感覚。そういえば、そういうような感覚って覚えがある。
 鏡の向こうに行くことが夢だった、みたいな感覚。どうしようもなく空想の世界。
 一瞬だけ『このまま空想にひたっていたい』と思う。コンマ秒速で脳を切り替える。
 ここは試験会場なんだぞ。
 いよいよ入学試験が始まるのさ。
 待ちに待ったやつ。だろう?
 ひとりごとは孤独なようで誰かの気配がいつもする。
 いまだってそうさ。ほら。
 誰が待った?
 入学試験そんなの望んだ覚えはない。
 ほうら、あらわれた。
 いいか試験会場ついに入学試験ここまで、たどりついたんだ。
 『じゃまなんか、するなよな』おれは言う。
 『そっちこそ』誰かが答える。
 誰かって、脳内ひとりごとの自分だけど。

 ぴちょん!

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