妖怪村の異類婚姻譚-失せ物さがし-

ノベルバユーザー613549

15.


 あれから、一週間たった。

 小姫の左腕と左足は消えることなく、今も以前の形を保っている。
 あの花の力なのか、はたまた、乙彦の妖力なのか。力の区別などつかない小姫には、考えたところでわからない。

 今回の件では、青峰にも、そしてもちろん母親にも、随分心配をかけてしまった。
 青峰と一緒に家に帰った後、母親からはきつくお叱りを受けた。彼女は普段、鷹揚おうようとしているのでわかりにくいが、小姫を跡継ぎから外したのも、妖怪がらみで危険な目に遭わせることを危惧したかららしい。意外に過保護なのだと、小姫はこの時初めて知った。

「心配かけちゃって、ごめんなさい。……でも、妖怪のこと、もっと知りたいの。跡継ぎのことは置いといて、私にも、少しずつ教えてくれない?」

 そう頼むと、母親は困ったように笑いながらも、小姫の願いを受け入れてくれた。今後は彼女の都合がよければ、青峰とともに教えを乞うてもいいそうだ。

 小姫の体については、やっぱり母親もよくわからないらしい。

「ふうん。乙彦君がそんなことをねえ。……要するに、これから小姫が左半身も自分の体だっていう自覚をもつようになれば、徐々に人間の体として再生されていくかもしれないってことでしょ? なら、信じてみれば?」

 彼のしたことを話しても、母親の乙彦への信頼は揺るがなかった。小姫の命の恩人であることに加えて、以前から乙彦の姿を時折見かけていたらしい。

(乙彦は……)

 彼のことを考えると、ちくりと胸に痛みが走る。

 乙彦は、どうなったのだろう。
 気が付いた時には、洞窟に彼の姿はなかった。血の跡だけを残して、それ以外の痕跡はすべて消えていた。
 もし小姫の左腕が治っていなければ、あの花の力は乙彦のために使われたのだと思えたのに。

 唯一の救いは、洞窟に残された血の量が案外少なかったことだ。だからきっと、彼は自力で洞窟を抜け出したのだろうと、そう信じている。

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