転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
58.再会
「リーゼロッテ嬢、その髪色には何か意味があるのですか?」
「えっ、変でしょうか?」
入学式前日。久しぶりに再会したパトリスとジョアンヌに誘われ、寄宿舎からも近い、公爵家御用達のティールームでゆったりとお茶を楽しんでいた。
パトリスの質問にリーゼロッテは首を傾げる。
明日からの学院生活に向け、折角なので地味スタイルを二人にお披露目して意見を聞いていたのだ。
クスクスと、ジョアンヌは笑って言う。
「よく似合ってますけど、学院には一緒に社交界デビューした方々が沢山いるのよ。リーゼロッテを見た方もいるでしょうし、髪色まで変えてしまったら、却って不自然で目立ってしまうのではないかしら?」
「あ! 確かにそうですね……。でも、私の髪など覚えてる方なんて居るかしら?」
拝謁の儀では、皆似たり寄ったりでヴェールもあり、そこまで覚えている者はいないだろう。強いて言えば、舞踏会だ。
本気で不思議がるリーゼロッテに、パトリスとジョアンヌは顔を見合わせ、呆れたような視線を交わす。
「何を言っているのかしら? あんなにも派手な登場をしておいて……」
「二人で会場に入ってきた時、それはもう美しくて息を呑む程だったよ。あのエアハルト辺境伯の瞳と同じ色の魔石のアクセサリーは、目を引いたしね。それに、ジェラール殿下とのダンスも目立っていたよ」
「そうでした……。お父様と、ジェラール殿下のそばにいたから、確かに目立っていたかもしれませんね」
(忘れてた! あの超イケメンの二人は令嬢達の注目の的だった)
パトリスはリーゼロッテの反応に苦笑する。
「いや、リーゼロッテ嬢だけでもとても美しくて、目が離せなかったよ」
「まあ、パトリス様はお優しいですね!」
優しくフォローしてもらい、リーゼロッテはニコッとパトリスに微笑む。
パトリスの耳が赤くなったことに気付いたジョアンヌは、報われない片想いの兄に少し同情した。
相手はあの、美貌の騎士と謳われたエアハルト辺境伯だ。
パトリスが将来、公爵を継げば辺境伯より地位は上になるが――。
あれ程までの魔石をプレゼントし、それをリーゼロッテは受け取っているのだ。ジョアンヌは、二人はもう婚約までいっているのではないかと感じた。
もしも……だが。
エアハルト辺境伯がリーゼロッテから引くことがあれば、ジェラール殿下が側室へと望むだろう。
残念ながら兄パトリスにはチャンスは来ない……女の勘がそう言っていた。
「髪色だけ戻して、他はそのままで良いのではないかしら? その分、私が派手めに振舞うわ」
「ジョアンヌ……」
(なんて良い人!)
思わず、ジョアンヌの手を握りしめる。
パトリスの羨ましそうな視線をジョアンヌは無視すると、話を変えた。
「ところで。お兄様の学年には確か、アントワーヌ侯爵家の……」
「レナルドかい?」
「はい。レナルド様も、リーゼロッテのことを話していたと言っていませんでしたか?」
「ああ、そうだった。どこかの舞踏会でリーゼロッテ嬢を見かけ、美しく品があって驚いたと言っていたよ。ただ、彼は人を見る目はあるが、少し女性に手が早いんだ。……リーゼロッテ嬢、彼には気をつけた方が良いかもしれないよ」
「ええ、気をつけますね」
(レナルド・アントワーヌ侯爵令息か……)
以前、リーゼロッテがループしているかもしれないと、ジェラールに気付かせる切っ掛けを作った人物だ。
父親のアントワーヌ侯爵は、リーゼロッテとして辺境伯領で一度、リリーとして離宮で一度会っている。
だが、息子のレナルドとは会った記憶が全く無い。
(ジェラール殿下に、どんな人物なのか訊いておいた方が良さそうだわ)
ふと、ジョアンヌがモジモジしていることに気付く。
「ジョアンヌ、どうかした?」
「リーゼロッテ……あのお花を、また頂くことは出来ないかしら? クリストフ殿下が……」
「殿下が?」
「クリストフ殿下が、とても喜んで下さったの!」
頬を染め嬉しそうにジョアンヌは言った。
(うっ、可愛い! パトリス様はジョアンヌを内気と言ったけど、これは恋する乙女の恥じらいだわ)
「わかりました! 今度、領地に戻ったら摘んで来ますね」
それから、ジョアンヌは魔術師コースを選んだと言った。少しでも、クリストフを手伝えるような存在になりたいそうだ。
ちなみに、パトリスはいずれ公爵家を継ぐ為に文官コース。レナルドは、武官コースを選択しているらしい。
お茶会を終えると、リーゼロッテは寄宿舎の自分の部屋へ戻った。
この国の貴族院の寄宿舎は、寮というには随分と立派な建物だった。
備え付けの立派な家具の他、必要と思われる物があれば持ち込みも可能だ。
リーゼロッテには、家具や装飾品にこだわりは無いので全く問題無かった。寧ろ転生前は、寝れさえすればワンルームでも満足していたので、十分過ぎるくらいだ。
まだ慣れていない、綺麗なベッドにゴロンと横になると、首に掛けていたネックレスを引っ張り出した。
『指に嵌めていたら目立ってしまうだろう?』と、ルイスがくれた物だ。
細く綺麗なチェーンに、魔石の指輪が通してある。
しばらく眺めてから、胸元でそっと握りしめた。
(明日から、新しい生活が始まる……)
リーゼロッテは、少しだけ緊張していた。
「えっ、変でしょうか?」
入学式前日。久しぶりに再会したパトリスとジョアンヌに誘われ、寄宿舎からも近い、公爵家御用達のティールームでゆったりとお茶を楽しんでいた。
パトリスの質問にリーゼロッテは首を傾げる。
明日からの学院生活に向け、折角なので地味スタイルを二人にお披露目して意見を聞いていたのだ。
クスクスと、ジョアンヌは笑って言う。
「よく似合ってますけど、学院には一緒に社交界デビューした方々が沢山いるのよ。リーゼロッテを見た方もいるでしょうし、髪色まで変えてしまったら、却って不自然で目立ってしまうのではないかしら?」
「あ! 確かにそうですね……。でも、私の髪など覚えてる方なんて居るかしら?」
拝謁の儀では、皆似たり寄ったりでヴェールもあり、そこまで覚えている者はいないだろう。強いて言えば、舞踏会だ。
本気で不思議がるリーゼロッテに、パトリスとジョアンヌは顔を見合わせ、呆れたような視線を交わす。
「何を言っているのかしら? あんなにも派手な登場をしておいて……」
「二人で会場に入ってきた時、それはもう美しくて息を呑む程だったよ。あのエアハルト辺境伯の瞳と同じ色の魔石のアクセサリーは、目を引いたしね。それに、ジェラール殿下とのダンスも目立っていたよ」
「そうでした……。お父様と、ジェラール殿下のそばにいたから、確かに目立っていたかもしれませんね」
(忘れてた! あの超イケメンの二人は令嬢達の注目の的だった)
パトリスはリーゼロッテの反応に苦笑する。
「いや、リーゼロッテ嬢だけでもとても美しくて、目が離せなかったよ」
「まあ、パトリス様はお優しいですね!」
優しくフォローしてもらい、リーゼロッテはニコッとパトリスに微笑む。
パトリスの耳が赤くなったことに気付いたジョアンヌは、報われない片想いの兄に少し同情した。
相手はあの、美貌の騎士と謳われたエアハルト辺境伯だ。
パトリスが将来、公爵を継げば辺境伯より地位は上になるが――。
あれ程までの魔石をプレゼントし、それをリーゼロッテは受け取っているのだ。ジョアンヌは、二人はもう婚約までいっているのではないかと感じた。
もしも……だが。
エアハルト辺境伯がリーゼロッテから引くことがあれば、ジェラール殿下が側室へと望むだろう。
残念ながら兄パトリスにはチャンスは来ない……女の勘がそう言っていた。
「髪色だけ戻して、他はそのままで良いのではないかしら? その分、私が派手めに振舞うわ」
「ジョアンヌ……」
(なんて良い人!)
思わず、ジョアンヌの手を握りしめる。
パトリスの羨ましそうな視線をジョアンヌは無視すると、話を変えた。
「ところで。お兄様の学年には確か、アントワーヌ侯爵家の……」
「レナルドかい?」
「はい。レナルド様も、リーゼロッテのことを話していたと言っていませんでしたか?」
「ああ、そうだった。どこかの舞踏会でリーゼロッテ嬢を見かけ、美しく品があって驚いたと言っていたよ。ただ、彼は人を見る目はあるが、少し女性に手が早いんだ。……リーゼロッテ嬢、彼には気をつけた方が良いかもしれないよ」
「ええ、気をつけますね」
(レナルド・アントワーヌ侯爵令息か……)
以前、リーゼロッテがループしているかもしれないと、ジェラールに気付かせる切っ掛けを作った人物だ。
父親のアントワーヌ侯爵は、リーゼロッテとして辺境伯領で一度、リリーとして離宮で一度会っている。
だが、息子のレナルドとは会った記憶が全く無い。
(ジェラール殿下に、どんな人物なのか訊いておいた方が良さそうだわ)
ふと、ジョアンヌがモジモジしていることに気付く。
「ジョアンヌ、どうかした?」
「リーゼロッテ……あのお花を、また頂くことは出来ないかしら? クリストフ殿下が……」
「殿下が?」
「クリストフ殿下が、とても喜んで下さったの!」
頬を染め嬉しそうにジョアンヌは言った。
(うっ、可愛い! パトリス様はジョアンヌを内気と言ったけど、これは恋する乙女の恥じらいだわ)
「わかりました! 今度、領地に戻ったら摘んで来ますね」
それから、ジョアンヌは魔術師コースを選んだと言った。少しでも、クリストフを手伝えるような存在になりたいそうだ。
ちなみに、パトリスはいずれ公爵家を継ぐ為に文官コース。レナルドは、武官コースを選択しているらしい。
お茶会を終えると、リーゼロッテは寄宿舎の自分の部屋へ戻った。
この国の貴族院の寄宿舎は、寮というには随分と立派な建物だった。
備え付けの立派な家具の他、必要と思われる物があれば持ち込みも可能だ。
リーゼロッテには、家具や装飾品にこだわりは無いので全く問題無かった。寧ろ転生前は、寝れさえすればワンルームでも満足していたので、十分過ぎるくらいだ。
まだ慣れていない、綺麗なベッドにゴロンと横になると、首に掛けていたネックレスを引っ張り出した。
『指に嵌めていたら目立ってしまうだろう?』と、ルイスがくれた物だ。
細く綺麗なチェーンに、魔石の指輪が通してある。
しばらく眺めてから、胸元でそっと握りしめた。
(明日から、新しい生活が始まる……)
リーゼロッテは、少しだけ緊張していた。
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