転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
53.新しい能力
ルイスに部屋の扉の前まで送ってもらった。
中に入り、扉を閉めるとそのまま寄りかかる。
さっきまで、繋いでいた手の温もりを確かめるかのように、開いた手の平をボ〜ッと眺めた。
テオがトコトコやって来ると、リーゼロッテの足首にスリっと体を寄せた。
『主人、良かったな』
「えっ!?」
従魔契約しているテオには、リーゼロッテの感情の起伏が筒抜けだったのかと内心焦る。とにかく恥ずかしい。
『その顔を見れば分かる』
契約とか関係なく……表情に出ていたらしい。
リーゼロッテは思わず顔を手で覆う。きっと、締まりの無い顔をしているに違いない。
(うー、どうしてもニヤけちゃう)
ペチペチと自分の頬を叩く。
そんなリーゼロッテを、テオは優しい眼差しで見守る。
「私、真っ赤よね?」
『別に誰も居ないのだから、気にするな』
「……ありがと」
リーゼロッテはソファーに座り、テオを膝の上に乗せて、ブラッシングしながらふわふわの毛並みを整える。
それから、自分の左手をテオの前に出すと、薬指に嵌められた指輪を見せた。
『婚約指輪というやつか?』
「ええ。……でも、貴族院を出るまでは親子のままよ。だから、公にもしないの」
『何だか、ややこしいな。まぁ、リーゼロッテが良いなら構わない』
「ふふ、私は今とても幸せよ」
明日からは、二度目ではない新しい日々が始まる。
(これからは未知だわ――)
分からなくて当たり前の未来。
期待と不安を感じられることに改めて感謝した。
◇◇◇
貴族院の入学までの間、とても穏やかで幸せな日々を過ごしていた。
王都から戻ってきてからは、領地の教会への慈善活動も再会している。
今は――。
ラシャド司祭に成り代わっていたクレマン司教はもう居ない。ユベールが司祭となり、新しい助祭がやって来ていた。新しい教皇、枢機卿により教会内部の改革が行われたのだ。
クレマンとラシャドの二人は、それぞれ罪の重さに合わせ罰を受けた。
本物のラシャドは、騙されて入れ替わっただけなので直ぐに戻れる筈だ。まあ、降格はするだろうが。
リーゼロッテは最近、ルイスの早朝訓練を見に行くのが日課みたいになっている。
リーゼロッテなら貴族院に入っても、いつでも転移すれば会いに来れるのだが……。それでも、領地に居る間は一緒に居たい、そう思ってしまうのだ。
朝練にはフランツも参加するようになり、めきめきと頭角を現してきた。このままいけば、かなりの強者になるだろうとテオが太鼓判を捺す。
リーゼロッテ自身は剣術は出来ないが、毎日見ているうちに目がかなり鍛えられた気がした。もともと目は良かったが、それだけでは無いみたいだ。
「ねえ、テオ。何だか……剣の動きが全て見えるのだけど」
「それはそうだろう。人の動きなど、遅い。リーゼロッテなら、全て簡単に避けられるだろうな」
「……何それ。凄くない?」
目を見開くリーゼロッテに、テオは尋ねた。
「リーゼロッテ、あの洞窟で何かあったか?」
ルイスとのやり取りを聞かれたのかと思い、真っ赤になった。
「……ルイスとの事ではない。魔玻璃に変わった所は無かったか?」
「魔玻璃? そういえば……お父様と魔力を込めた時にこれからも結界を守り続けると誓ったのよ。その時、何となく魔玻璃の光が強くなったかも。なんだか、魔玻璃に祝福されたみたいだったわ」
テオは、ジッとリーゼロッテを凝視した。
「……それだな」
「はい?」
コテリと首を傾げる。テオの言わんとすることが理解できなかった。
徐ろに立ち上がったテオは、訓練中のファーガスを大声で呼んだ。
いや……大声というより、込めた魔力を放ったと言った方が正しいかもしれてない。一瞬で、かなり遠くに居たファーガスに届いていたのだから。
何事かと、速攻でファーガスがやって来た。
ルイスも気になったようで、次の指示を他の上官に伝えてその場を離れ、こちらに向かう。
「何事ですか!?」
と、ファーガスは自分を呼んだテオに尋ねる。
人の目を避けるように移動したテオは、ファーガスを軽く無視しリーゼロッテに向かって言った。
「リーゼロッテ、ファーガスに癒しをかけてみろ。その無い左腕をイメージしながら」
「腕をイメージして癒し? 傷口は一度治ってしまっているのに?」
「そうだ」
テオはくだらない冗談は言わない。
つまり、それは出来るということだ。
「ファーガス、ごめんなさい。左肩を見せて」
真剣なテオとリーゼロッテに、ファーガスは黙って服を脱いで肩を出した。完全に傷は塞がって綺麗になっていた。
リーゼロッテは、ファーガスの見えない左腕をイメージしていく。骨、筋肉、血管、脂肪や皮膚。右腕のようなしっかりとした腕を脳裏に浮かべると、ファーガスに癒しをかけた。
ファーガスは金色の光に包まれ、無かった筈の腕が再生されていく。
「……これはっ!?」
信じられないとばかりに、ファーガスは言葉を失う。
光が消えると、無かったはずの左腕がそこにはあった。
「やはり、そうか。リーゼロッテ、あの方から祝福を受けたのだ。魔力が今まで以上に増えている」
「魔玻璃からの……祝福?」
「そうだ」
聖女を一時的にやっていた時、祝福で自分の魔力を相手に与えていたことを思い出した。
(うーん、ご先祖様の魔力を貰ったってことかしら?)
「あ、あのっ!! これは一体どういう事態でしょうか? 私の腕が……生えました?」
首を傾げたファーガスは、驚き過ぎたのか混乱していた。左腕をぶんぶん振り回し、動くのを確かめている。
「これは――。テオ、ちゃんと説明してほしい」
いつの間にかやって来ていたルイスは、硬く強張った表情で三人を見ていた。
中に入り、扉を閉めるとそのまま寄りかかる。
さっきまで、繋いでいた手の温もりを確かめるかのように、開いた手の平をボ〜ッと眺めた。
テオがトコトコやって来ると、リーゼロッテの足首にスリっと体を寄せた。
『主人、良かったな』
「えっ!?」
従魔契約しているテオには、リーゼロッテの感情の起伏が筒抜けだったのかと内心焦る。とにかく恥ずかしい。
『その顔を見れば分かる』
契約とか関係なく……表情に出ていたらしい。
リーゼロッテは思わず顔を手で覆う。きっと、締まりの無い顔をしているに違いない。
(うー、どうしてもニヤけちゃう)
ペチペチと自分の頬を叩く。
そんなリーゼロッテを、テオは優しい眼差しで見守る。
「私、真っ赤よね?」
『別に誰も居ないのだから、気にするな』
「……ありがと」
リーゼロッテはソファーに座り、テオを膝の上に乗せて、ブラッシングしながらふわふわの毛並みを整える。
それから、自分の左手をテオの前に出すと、薬指に嵌められた指輪を見せた。
『婚約指輪というやつか?』
「ええ。……でも、貴族院を出るまでは親子のままよ。だから、公にもしないの」
『何だか、ややこしいな。まぁ、リーゼロッテが良いなら構わない』
「ふふ、私は今とても幸せよ」
明日からは、二度目ではない新しい日々が始まる。
(これからは未知だわ――)
分からなくて当たり前の未来。
期待と不安を感じられることに改めて感謝した。
◇◇◇
貴族院の入学までの間、とても穏やかで幸せな日々を過ごしていた。
王都から戻ってきてからは、領地の教会への慈善活動も再会している。
今は――。
ラシャド司祭に成り代わっていたクレマン司教はもう居ない。ユベールが司祭となり、新しい助祭がやって来ていた。新しい教皇、枢機卿により教会内部の改革が行われたのだ。
クレマンとラシャドの二人は、それぞれ罪の重さに合わせ罰を受けた。
本物のラシャドは、騙されて入れ替わっただけなので直ぐに戻れる筈だ。まあ、降格はするだろうが。
リーゼロッテは最近、ルイスの早朝訓練を見に行くのが日課みたいになっている。
リーゼロッテなら貴族院に入っても、いつでも転移すれば会いに来れるのだが……。それでも、領地に居る間は一緒に居たい、そう思ってしまうのだ。
朝練にはフランツも参加するようになり、めきめきと頭角を現してきた。このままいけば、かなりの強者になるだろうとテオが太鼓判を捺す。
リーゼロッテ自身は剣術は出来ないが、毎日見ているうちに目がかなり鍛えられた気がした。もともと目は良かったが、それだけでは無いみたいだ。
「ねえ、テオ。何だか……剣の動きが全て見えるのだけど」
「それはそうだろう。人の動きなど、遅い。リーゼロッテなら、全て簡単に避けられるだろうな」
「……何それ。凄くない?」
目を見開くリーゼロッテに、テオは尋ねた。
「リーゼロッテ、あの洞窟で何かあったか?」
ルイスとのやり取りを聞かれたのかと思い、真っ赤になった。
「……ルイスとの事ではない。魔玻璃に変わった所は無かったか?」
「魔玻璃? そういえば……お父様と魔力を込めた時にこれからも結界を守り続けると誓ったのよ。その時、何となく魔玻璃の光が強くなったかも。なんだか、魔玻璃に祝福されたみたいだったわ」
テオは、ジッとリーゼロッテを凝視した。
「……それだな」
「はい?」
コテリと首を傾げる。テオの言わんとすることが理解できなかった。
徐ろに立ち上がったテオは、訓練中のファーガスを大声で呼んだ。
いや……大声というより、込めた魔力を放ったと言った方が正しいかもしれてない。一瞬で、かなり遠くに居たファーガスに届いていたのだから。
何事かと、速攻でファーガスがやって来た。
ルイスも気になったようで、次の指示を他の上官に伝えてその場を離れ、こちらに向かう。
「何事ですか!?」
と、ファーガスは自分を呼んだテオに尋ねる。
人の目を避けるように移動したテオは、ファーガスを軽く無視しリーゼロッテに向かって言った。
「リーゼロッテ、ファーガスに癒しをかけてみろ。その無い左腕をイメージしながら」
「腕をイメージして癒し? 傷口は一度治ってしまっているのに?」
「そうだ」
テオはくだらない冗談は言わない。
つまり、それは出来るということだ。
「ファーガス、ごめんなさい。左肩を見せて」
真剣なテオとリーゼロッテに、ファーガスは黙って服を脱いで肩を出した。完全に傷は塞がって綺麗になっていた。
リーゼロッテは、ファーガスの見えない左腕をイメージしていく。骨、筋肉、血管、脂肪や皮膚。右腕のようなしっかりとした腕を脳裏に浮かべると、ファーガスに癒しをかけた。
ファーガスは金色の光に包まれ、無かった筈の腕が再生されていく。
「……これはっ!?」
信じられないとばかりに、ファーガスは言葉を失う。
光が消えると、無かったはずの左腕がそこにはあった。
「やはり、そうか。リーゼロッテ、あの方から祝福を受けたのだ。魔力が今まで以上に増えている」
「魔玻璃からの……祝福?」
「そうだ」
聖女を一時的にやっていた時、祝福で自分の魔力を相手に与えていたことを思い出した。
(うーん、ご先祖様の魔力を貰ったってことかしら?)
「あ、あのっ!! これは一体どういう事態でしょうか? 私の腕が……生えました?」
首を傾げたファーガスは、驚き過ぎたのか混乱していた。左腕をぶんぶん振り回し、動くのを確かめている。
「これは――。テオ、ちゃんと説明してほしい」
いつの間にかやって来ていたルイスは、硬く強張った表情で三人を見ていた。
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