転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜

Y.ひまわり

51.お茶会

 無事に社交界デビューを果たし、暫く滞在してしていた王都から領地へと帰る日がやって来た。
 


 ――その前日。


 お花をプレゼントしたジョアンヌ公爵令嬢から、お礼を兼ねたプライベートなお茶会に誘われ、従者兼執事姿のテオと共に公爵家へと向かった。


「ジョアンヌ様、お招きいただきありがとう存じます」と、丁寧に挨拶をする。


「リーゼロッテ様、本日は他の方は招いておりませんので、堅苦しいことは抜きにしましょう! どうぞ、私のことはジョアンヌとお呼び下さい――聖女様」


 嫣然えんぜんと微笑みながら言ったジョアンヌに、苦笑してしまう。


 ジョアンヌとのやり取りの中で、リーゼロッテが聖女であったのが完全にバレていたと判明。リーゼロッテだけではなく、助祭をしていたテオにも気がついていたのだ。
 
 バレてしまったのなら仕様がない。
 リーゼロッテは僅かだが、光属性の持ち主ということにしておいた。辺境伯領の教会を通して頼まれ、一時的に手伝っていたのだと。信じてもらえたかは分からないが。


(どこが内気なのよ……まったく。公爵家恐るべし!)


 このお茶会も、半ば強引だった。


「では、私のこともリーゼロッテとお呼び下さいませ。もう、聖女ではありませんから」


 リーゼロッテも令嬢らしい笑みを返す。


 会話が弾んでくると、話題はデビュー初日のことになる。


 家柄の順で、先に拝謁の儀を済ませたジョアンヌは、謁見の間から出てきたリーゼロッテが手にしていた花に目を奪われ、リーゼロッテ自身の存在にも気付いたのだ。
 並んでいた令嬢達の奥から、視力強化をして見ていたらしい。


(あの強い視線、魔力の高いジョアンヌだったのね)


 そして舞踏会で、ジョアンヌはリーゼロッテに話しかける気満々だったそうだ。
 だが、次から次へと来るダンスの誘いもあり、タイミングを見計らっていた所、兄パトリスが抜け駆けしたのだと。


「パトリスお兄様ったら、リーゼロッテに一目惚れだったのです。ですが、あんな素敵な魔石を着けていらっしゃったから……確かめずにはいられなかったのですわ。勝手に、私を内気な妹にして」


 ジョアンヌが文句を言うと――


「そうかな? 私にとっては内気な可愛らしい妹だよ、ジョアンヌは。こんな素晴らしいお茶会に、誘ってくれないなんて寂しいじゃないか」


 突然、扉の方からパトリスの声が聞こえた。
 パトリスは優美な笑みを浮かべ、リーゼロッテ達たちのそばに来ると椅子に座る。


「まあ! お兄様、勝手に入って来て失礼ですわ。ねぇ、リーゼロッテ?」


「仲がよろしいのですね」


 リーゼロッテがニッコリ微笑むと、パトリスは嬉しそうだ。


「やはり、リーゼロッテ嬢はお美しい。どれ程の者が、ダンスにお誘いしたかったことか」


「まあ! ありがとう存じます。そんなおだてないで下さいませ」


「いえ、本心ですよ」


 と熱い眼差しをリーゼロッテに向ける。


「お兄様。リーゼロッテにはエアハルト様がいらっしゃるのですから、その位になさいませ!」


 ピシャリと言ったジョアンヌに、パトリスは肩を竦める。


「分かっているよ、リーゼロッテ嬢のあんな表情を見たらね」


 どうやら、あのバルコニーで赤面したのをしっかり見られていたようだ。


(うっ、恥ずかしい……)


「それに、あの時……背中に感じたエアハルト辺境伯の視線。殺されるかと思う程だったよ。あはは……」


(お父様、公爵令息になんてことを……)


 こうして冗談を言いあったりしているが、公爵家の二人と話していると、本当に優れた人材なのだと理解できた。クリストフが、守ろうとしたのがよく分かる。


「ところで、お二人は……。クリストフ殿下とジェラール殿下、どちらとも仲がよろしいのですか?」
 
 世間話的に、質問してみた。公爵家なら顔を合わせる機会も多いだろうと。
 パトリスとジョアンヌは顔を見合わせ頷いた。


「リーゼロッテ、これはここだけの三人の秘密にして下さいませ」


 そう前置きすると、ジョアンヌは話し出す。
 
 ジョアンヌは、クリストフの婚約者だったのだ。


 公爵令嬢として王太子妃になるべく、相応しい教育も受けて来た。ジョアンヌの社交界デビューを終えたら、婚約発表を予定していたそうだ。
 内々での打診は済んでいたが、クリストフの意向で、早期の正式な婚約発表はしていなかった。


 クリストフが死を望んでいたことや、万が一にもジョアンヌを巻き込みたくなかったのだろう。
 勝手な言い分だとは思ったが、今となっては良かったのかもしれない。


「私、クリストフ殿下をお慕いしておりますの。ですから、婚約は白紙に戻すつもりはありません。周りの反対には負けませんわ。少しでも、クリストフ殿下のお役に立ちたいのです……」


 それで、リーゼロッテの持っていた花が、とても珍しい素材だと気付き、宮廷魔術師になったクリストフに見せたかったそうだ。
 ふふっと笑うジョアンヌは、恋する乙女そのものだった。


 リーゼロッテは、ジョアンヌを応援したくなった。


「でもね、リーゼロッテ嬢。ジョアンヌは殿下を前にすると、急に大人しくなってしまうんだ。ね、内気だろう?」


「お兄様っ! それは、今まで受けて来た教育のせいですわ。これから私は変わるのです!」


「ジョアンヌ、私も応援します! また、お花が必要になったら言って下さいませ」


(うん。クリストフにも、ジョアンヌにも幸せになってほしい)




 そして、来年の貴族院の入学の話題に移る。


 同学年になるジョアンヌとリーゼロッテは、再会を約束してお茶会はお開きになった。






 

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品