転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
41.何ですってぇ!?
王太子と会ってからも暫くの間、魔石からの指示は特に無かった。
多分だが、クリストフの魔力を得られない為、他から魔力を確保していたのかもしれない。
そして、魔石の改良を重ねていた可能性も考え、警戒を怠らないようにした。
日が経つにつれ――。
時々だが、魔石から頭に指示が届くようになって来る。
主な内容は、礼拝にやって来た貴族に《祝福をする魔力量を増やせ》といったものだった。
だが当然、リーゼロッテは指示に従うつもりはない。
魔力量は増やさない様にして、降り注ぐ光を派手めに輝かせることにする。はたから見れば、大量の魔力が注いだみたいに感じる筈だ。
そして、その指示を受けた時の貴族はリストアップしておき、ジェラールに報告している。
――そんな中、リーゼロッテは14歳の誕生日を迎えた。
誕生日は、辺境伯邸で祝うのが恒例なのだと司教に伝え、定期的に帰省している時よりも、滞在日数を増やしてもらうよう願い出た。
リーゼロッテは、時折勝手に転移して帰省している為、態々そんな申し出をする必要なんて無いのだが。
ここ最近、リストアップしている貴族が増えてきた事が気になり、少々動いてみようと思ったのだ。
セリーヌに荷造りを手伝ってもらい、さも久しぶりの帰省が楽しみで仕方ないとアピールをしておく。
翌朝。
(……何ですってぇぇぇ!?)
リーゼロッテは魔石からの指示で目が覚めた。
『……どうした、主人?』
ガバッと飛び起きたリーゼロッテに、ミニ狼姿で一緒に眠っていたテオが声をかける。
昨夜、ジェラールとのやり取りをし、内容をテオに相談していたら……そのまま眠ってしまったのだ。
「ま、魔石から……とんでもない指示が……」
「とんでもない指示?」
人間の姿になったテオが聞き返す。
「ル、ルイスお父様を誘惑して……殺せ、って」
「ほう……。誘惑とは、面白い」
「全然面白くないわよっ!! 誘惑よ、誘惑! こんな正気の私が、どんな顔してお父様に迫るのよ!? 羞恥心で、死ぬのは私の方だわ……」
リーゼロッテは泣きそうだ。
「確かに。ルイスは喜びそうだ……」
リーゼロッテとテオの気になる所は、完全に《殺せ》という指示では無く《誘惑》の方だった。
キッ!と、リーゼロッテは顔を上げると、速攻でルイスの元へ転移して――戻って来た。
セリーヌが呼びに来ると、平静を装って教会から用意された馬車へ、テオと一緒に乗り込む。
リーゼロッテが座る場所には、魔石を加工した大振りだがシンプルなイヤリングと、鞘に収まった短剣が置かれていた。
(……一体、誰がこれを?)
そう思った途端に、また頭に指示が響く。
《その、毒の塗ってある短剣で辺境伯を刺せ。会話する時、イヤリングは必ずしていろ》と。
何処で誰が見ているか分からない。
黙ってイヤリングを耳につけると、短剣を布で隠し膝の上へ置く。
リーゼロッテの表情で、テオは敢えて当たり障りの無い会話をし、大事な話は念話する。
「久しぶりのお帰り、旦那様もさぞお喜びでしょう」
「ええ、そうね。私も楽しみで仕方ないわ」
柔かに視線を交わす。
『何かあったのか?』
『毒の塗られた短剣があったわ。お父様をこれで刺せって。それと、この盗聴用のイヤリングがね』
リーゼロッテは、膝の上の布と耳につけたイヤリングを指差した。
会話する時に装着と指定したのだ、盗聴器と考えて間違えないだろう。つまり、首の魔石からは一方的な指示しか出せないということだ。
テオに、領地へ着いたらルイスの元へ行き、その事を伝えるように念話する。それと、各部屋に筆談出来る物を用意して置くことも。
王都から大分離れた頃、膝の布から短剣を取り出すと、無毒化し……剣を玩具に変えた。
『見て! これ、元の世界で昔あった玩具みたいにしちゃった』
剣を手に持つと『エイッ』と自分の腹部に刺す。
勿論、血は出ない。ニヤニヤしたリーゼロッテに、テオは呆れ顔で何をしたのか尋ねた。
テオの目の前で剣を見せる。
剣先を指で押すと刃が柄の中に引っ込む仕組みだ。子供騙しの玩具だが、テオは初めて見たのか自分の体で何度か試す。
(昔、駄菓子屋やお祭りで売っていたのよね。本物の剣を加工したから相当リアルだけど)
辺境伯領までの長い道のり、声に出す他愛もない会話も続けた。どの位の距離まで魔石で操れ、このイヤリングは盗聴できるのか。
(……きっと、奴等は近くにやって来る)
ルイスが死ねば、魔玻璃に影響が出ると考えるだろう。それは、敵のチャンスとなる筈だ。
リーゼロッテが、ルイスを刺した時に何かが起こる――それだけは、確実だと思った。
やっと、懐かしい領地が見えて来た。
いつもは、屋敷に直に転移なので外からの景色は久しぶりだ。
テオは馬車の中から屋敷内へ転移し、リーゼロッテの置かれた状況をルイスに伝えると、盗聴される事を使用人に周知させた。
絶対に、テオがフェンリルであることも知られてはいけない。
テオにエスコートされ、馬車から降りると使用人達がズラリと並んでいた。
「「「リーゼロッテお嬢様、お帰りなさいませ」」」
エアハルト辺境伯邸による、敵を欺く舞台の幕が開いた。
(誘惑……憂鬱だわ)
多分だが、クリストフの魔力を得られない為、他から魔力を確保していたのかもしれない。
そして、魔石の改良を重ねていた可能性も考え、警戒を怠らないようにした。
日が経つにつれ――。
時々だが、魔石から頭に指示が届くようになって来る。
主な内容は、礼拝にやって来た貴族に《祝福をする魔力量を増やせ》といったものだった。
だが当然、リーゼロッテは指示に従うつもりはない。
魔力量は増やさない様にして、降り注ぐ光を派手めに輝かせることにする。はたから見れば、大量の魔力が注いだみたいに感じる筈だ。
そして、その指示を受けた時の貴族はリストアップしておき、ジェラールに報告している。
――そんな中、リーゼロッテは14歳の誕生日を迎えた。
誕生日は、辺境伯邸で祝うのが恒例なのだと司教に伝え、定期的に帰省している時よりも、滞在日数を増やしてもらうよう願い出た。
リーゼロッテは、時折勝手に転移して帰省している為、態々そんな申し出をする必要なんて無いのだが。
ここ最近、リストアップしている貴族が増えてきた事が気になり、少々動いてみようと思ったのだ。
セリーヌに荷造りを手伝ってもらい、さも久しぶりの帰省が楽しみで仕方ないとアピールをしておく。
翌朝。
(……何ですってぇぇぇ!?)
リーゼロッテは魔石からの指示で目が覚めた。
『……どうした、主人?』
ガバッと飛び起きたリーゼロッテに、ミニ狼姿で一緒に眠っていたテオが声をかける。
昨夜、ジェラールとのやり取りをし、内容をテオに相談していたら……そのまま眠ってしまったのだ。
「ま、魔石から……とんでもない指示が……」
「とんでもない指示?」
人間の姿になったテオが聞き返す。
「ル、ルイスお父様を誘惑して……殺せ、って」
「ほう……。誘惑とは、面白い」
「全然面白くないわよっ!! 誘惑よ、誘惑! こんな正気の私が、どんな顔してお父様に迫るのよ!? 羞恥心で、死ぬのは私の方だわ……」
リーゼロッテは泣きそうだ。
「確かに。ルイスは喜びそうだ……」
リーゼロッテとテオの気になる所は、完全に《殺せ》という指示では無く《誘惑》の方だった。
キッ!と、リーゼロッテは顔を上げると、速攻でルイスの元へ転移して――戻って来た。
セリーヌが呼びに来ると、平静を装って教会から用意された馬車へ、テオと一緒に乗り込む。
リーゼロッテが座る場所には、魔石を加工した大振りだがシンプルなイヤリングと、鞘に収まった短剣が置かれていた。
(……一体、誰がこれを?)
そう思った途端に、また頭に指示が響く。
《その、毒の塗ってある短剣で辺境伯を刺せ。会話する時、イヤリングは必ずしていろ》と。
何処で誰が見ているか分からない。
黙ってイヤリングを耳につけると、短剣を布で隠し膝の上へ置く。
リーゼロッテの表情で、テオは敢えて当たり障りの無い会話をし、大事な話は念話する。
「久しぶりのお帰り、旦那様もさぞお喜びでしょう」
「ええ、そうね。私も楽しみで仕方ないわ」
柔かに視線を交わす。
『何かあったのか?』
『毒の塗られた短剣があったわ。お父様をこれで刺せって。それと、この盗聴用のイヤリングがね』
リーゼロッテは、膝の上の布と耳につけたイヤリングを指差した。
会話する時に装着と指定したのだ、盗聴器と考えて間違えないだろう。つまり、首の魔石からは一方的な指示しか出せないということだ。
テオに、領地へ着いたらルイスの元へ行き、その事を伝えるように念話する。それと、各部屋に筆談出来る物を用意して置くことも。
王都から大分離れた頃、膝の布から短剣を取り出すと、無毒化し……剣を玩具に変えた。
『見て! これ、元の世界で昔あった玩具みたいにしちゃった』
剣を手に持つと『エイッ』と自分の腹部に刺す。
勿論、血は出ない。ニヤニヤしたリーゼロッテに、テオは呆れ顔で何をしたのか尋ねた。
テオの目の前で剣を見せる。
剣先を指で押すと刃が柄の中に引っ込む仕組みだ。子供騙しの玩具だが、テオは初めて見たのか自分の体で何度か試す。
(昔、駄菓子屋やお祭りで売っていたのよね。本物の剣を加工したから相当リアルだけど)
辺境伯領までの長い道のり、声に出す他愛もない会話も続けた。どの位の距離まで魔石で操れ、このイヤリングは盗聴できるのか。
(……きっと、奴等は近くにやって来る)
ルイスが死ねば、魔玻璃に影響が出ると考えるだろう。それは、敵のチャンスとなる筈だ。
リーゼロッテが、ルイスを刺した時に何かが起こる――それだけは、確実だと思った。
やっと、懐かしい領地が見えて来た。
いつもは、屋敷に直に転移なので外からの景色は久しぶりだ。
テオは馬車の中から屋敷内へ転移し、リーゼロッテの置かれた状況をルイスに伝えると、盗聴される事を使用人に周知させた。
絶対に、テオがフェンリルであることも知られてはいけない。
テオにエスコートされ、馬車から降りると使用人達がズラリと並んでいた。
「「「リーゼロッテお嬢様、お帰りなさいませ」」」
エアハルト辺境伯邸による、敵を欺く舞台の幕が開いた。
(誘惑……憂鬱だわ)
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