転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
39.クリストフ王太子
「先天性疾患て、一体どんな病気なの?」
リーゼロッテの素朴な疑問だった。
「……それは、表向きの話だ。まあ、ある意味疾患か。兄上は、魔力が徐々に減っていっている。このまま行けば、いずれは枯渇する」
「……枯渇?」
確か、父リカードの死因も魔力の枯渇だ。魔玻璃の修復に全てを使い切ったが為に。
この世界の人々は、多かれ少なかれ魔力がある。その魔力が無くなったら、それは死を意味するのだ。
「原因は解らないのだが、日に日に魔力が減って衰弱している。宮廷魔術師による治療や、ポーションも試したが魔力は回復しない。その上、聖女の癒しも全く意味をなさなかった」
(あ! だから、以前お父様を無理に呼んで、高濃度の回復薬を献上させたのね!)
最初の軽い会話からは想像できない程、ジェラールの瞳は悲しみを宿していた。
「リーゼロッテ、無理は承知している。だが、其方の力を貸してほしい」
「……私に出来るか分かりませんが。やれるだけの事はやってみます」
真剣なジェラールに、リーゼロッテも気合いを入れた。
『……魔力が減る病? そんなもの、聞いたことも無いが』
馬車の外から二人の会話を聞いていたテオは、声を出さずに呟いた。
王宮に到着し、通された部屋は王太子の私室だった。
中に入れたのは、ジェラールとリーゼロッテのみ。他は応接室で待機だ。
テオは、馬車に残ると言って枢機卿から離れると、リーゼロッテの影の中へと消える。
ベッドに横たわるクリストフ王太子は、青白く目は虚ろだった。
「兄上……」
「……ジェラール、か」
ジェラールは、具合の悪そうなクリストフに簡単にリーゼロッテを紹介し、早速癒しをと促した。
取り敢えず、リーゼロッテはクリストフにどの位の魔力が残っているのか確認する為、クリストフに触れて目を閉じ集中する。
最近、教会堂に魔力感知の魔法を使いまくっていたので、その能力はかなり鍛えられていた。
「……ん?」と、リーゼロッテは首を傾げる。
「何だ! どうした?」
不安そうにジェラールが尋ねる。
「あの……、クリストフ殿下の魔力の属性は?」
「…………」
「兄上は、火属性だ。だが、王族は大抵の他の魔法も使える。それが、何だと言うのだ?」
クリストフが答えない代わりに、ジェラールが言った。
「……クリストフ殿下の魔力、テオと似ています」
「なっ!? 魔獣とだと? そんな馬鹿な。魔獣は闇属性だろ」
『そんな事だろうと思った』
と、テオがリーゼロッテの影の中から声をかけ、三人の前に現れた。
「テオ、どういう事だ?」
ジェラールは、眉根を寄せてテオに詰め寄る。
「魔力回復薬や聖女の癒しが効かないのは、簡単な話だ。それらは、光属性なのだろう? 其奴は、完全な闇の属性しか持たぬ。つまり、光は毒になっても薬にはならないのだ」
「う、嘘だ! 光属性だって珍しいのに、闇属性なんて有り得ない!」
テオの話に、信じられないとジェラールは目を剥いた。
「ふんっ! それは、所詮お前たち人間の屁理屈だ。昔は、その様な者達が沢山居たぞ」
二人のやり取りを見かねたクリストフは、重い口を開いた。
「その者の、言う通りだ。……私は、闇属性だ。王族として、誰にも知られては……ならなかった。この国で、それは忌み嫌われるもの、だからな……」
息を切らしながらやっと話すクリストフの言葉に、ジェラールは何も言えなかった。
部屋は静まりかえる。
「じゃ、クリストフ殿下。癒しをかけますね」
当たり前の様にリーゼロッテは沈黙を破り、声をかけて再度クリストフに触れようとする。
「なっ! 馬鹿っ! リーゼロッテ、光属性は毒だとテオが今言っただろうがっ!」
焦ったジェラールは、リーゼロッテとクリストフの間に立ちはだかる。
「はあ? だって私は光属性の聖女じゃないですよ? ねえ、テオ?」
「ジェラールよ。其方ら人間が女神と呼んだ者が、我等や魔物達に何と呼ばれていたのか忘れたか?」
「あっ! 魔王……」
ふんっ!とテオは鼻で笑い、リーゼロッテを促した。
リーゼロッテが癒しをかけると、いつもの金色とは真逆の色……黒紫色の光がクリストフを包んだ。
見る見る内にクリストフの血色が戻り、金髪だった髪は艶やかな漆黒に、明るかった青い瞳は闇の様に黒くなった。
「ほう。それが、本当の姿か。魔力が無いのによく隠していたものだ」と、呆れるテオ。
「ああ、それは魔道具のお陰だ。流石に、魔力を無駄に使えなかった。私は、元々魔術に長けていたからな」
回復したクリストフは詰まることなく話す。
「あー!! もしかして、ジェラール殿下が言った優秀な魔術師って!?」
リーゼロッテの反応に、ジェラールとクリストフは、顔を見合わせて笑った。
そして、表情を引き締めて王太子と王子として、リーゼロッテに今日の出来事を内密にしてほしいと頼んだ。
「勿論、誰にも言いません。私のことも秘密ですよ。……それと、クリストフ殿下に見て欲しいのですが」
リーゼロッテは、自分の首に付けっ放しだった例の魔石を取ると、クリストフに渡した。
リーゼロッテの素朴な疑問だった。
「……それは、表向きの話だ。まあ、ある意味疾患か。兄上は、魔力が徐々に減っていっている。このまま行けば、いずれは枯渇する」
「……枯渇?」
確か、父リカードの死因も魔力の枯渇だ。魔玻璃の修復に全てを使い切ったが為に。
この世界の人々は、多かれ少なかれ魔力がある。その魔力が無くなったら、それは死を意味するのだ。
「原因は解らないのだが、日に日に魔力が減って衰弱している。宮廷魔術師による治療や、ポーションも試したが魔力は回復しない。その上、聖女の癒しも全く意味をなさなかった」
(あ! だから、以前お父様を無理に呼んで、高濃度の回復薬を献上させたのね!)
最初の軽い会話からは想像できない程、ジェラールの瞳は悲しみを宿していた。
「リーゼロッテ、無理は承知している。だが、其方の力を貸してほしい」
「……私に出来るか分かりませんが。やれるだけの事はやってみます」
真剣なジェラールに、リーゼロッテも気合いを入れた。
『……魔力が減る病? そんなもの、聞いたことも無いが』
馬車の外から二人の会話を聞いていたテオは、声を出さずに呟いた。
王宮に到着し、通された部屋は王太子の私室だった。
中に入れたのは、ジェラールとリーゼロッテのみ。他は応接室で待機だ。
テオは、馬車に残ると言って枢機卿から離れると、リーゼロッテの影の中へと消える。
ベッドに横たわるクリストフ王太子は、青白く目は虚ろだった。
「兄上……」
「……ジェラール、か」
ジェラールは、具合の悪そうなクリストフに簡単にリーゼロッテを紹介し、早速癒しをと促した。
取り敢えず、リーゼロッテはクリストフにどの位の魔力が残っているのか確認する為、クリストフに触れて目を閉じ集中する。
最近、教会堂に魔力感知の魔法を使いまくっていたので、その能力はかなり鍛えられていた。
「……ん?」と、リーゼロッテは首を傾げる。
「何だ! どうした?」
不安そうにジェラールが尋ねる。
「あの……、クリストフ殿下の魔力の属性は?」
「…………」
「兄上は、火属性だ。だが、王族は大抵の他の魔法も使える。それが、何だと言うのだ?」
クリストフが答えない代わりに、ジェラールが言った。
「……クリストフ殿下の魔力、テオと似ています」
「なっ!? 魔獣とだと? そんな馬鹿な。魔獣は闇属性だろ」
『そんな事だろうと思った』
と、テオがリーゼロッテの影の中から声をかけ、三人の前に現れた。
「テオ、どういう事だ?」
ジェラールは、眉根を寄せてテオに詰め寄る。
「魔力回復薬や聖女の癒しが効かないのは、簡単な話だ。それらは、光属性なのだろう? 其奴は、完全な闇の属性しか持たぬ。つまり、光は毒になっても薬にはならないのだ」
「う、嘘だ! 光属性だって珍しいのに、闇属性なんて有り得ない!」
テオの話に、信じられないとジェラールは目を剥いた。
「ふんっ! それは、所詮お前たち人間の屁理屈だ。昔は、その様な者達が沢山居たぞ」
二人のやり取りを見かねたクリストフは、重い口を開いた。
「その者の、言う通りだ。……私は、闇属性だ。王族として、誰にも知られては……ならなかった。この国で、それは忌み嫌われるもの、だからな……」
息を切らしながらやっと話すクリストフの言葉に、ジェラールは何も言えなかった。
部屋は静まりかえる。
「じゃ、クリストフ殿下。癒しをかけますね」
当たり前の様にリーゼロッテは沈黙を破り、声をかけて再度クリストフに触れようとする。
「なっ! 馬鹿っ! リーゼロッテ、光属性は毒だとテオが今言っただろうがっ!」
焦ったジェラールは、リーゼロッテとクリストフの間に立ちはだかる。
「はあ? だって私は光属性の聖女じゃないですよ? ねえ、テオ?」
「ジェラールよ。其方ら人間が女神と呼んだ者が、我等や魔物達に何と呼ばれていたのか忘れたか?」
「あっ! 魔王……」
ふんっ!とテオは鼻で笑い、リーゼロッテを促した。
リーゼロッテが癒しをかけると、いつもの金色とは真逆の色……黒紫色の光がクリストフを包んだ。
見る見る内にクリストフの血色が戻り、金髪だった髪は艶やかな漆黒に、明るかった青い瞳は闇の様に黒くなった。
「ほう。それが、本当の姿か。魔力が無いのによく隠していたものだ」と、呆れるテオ。
「ああ、それは魔道具のお陰だ。流石に、魔力を無駄に使えなかった。私は、元々魔術に長けていたからな」
回復したクリストフは詰まることなく話す。
「あー!! もしかして、ジェラール殿下が言った優秀な魔術師って!?」
リーゼロッテの反応に、ジェラールとクリストフは、顔を見合わせて笑った。
そして、表情を引き締めて王太子と王子として、リーゼロッテに今日の出来事を内密にしてほしいと頼んだ。
「勿論、誰にも言いません。私のことも秘密ですよ。……それと、クリストフ殿下に見て欲しいのですが」
リーゼロッテは、自分の首に付けっ放しだった例の魔石を取ると、クリストフに渡した。
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