転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
35.うーん
鏡のような画面に、次々と文字が現れてくる。
(まるでタブレットみたいね)
ジェラールから渡された魔道具に、あの男の取り調べ結果が送られて来た。
この魔道具が、どんな仕組みなのかはサッパリ理解できないが、ジェラールが書いた文字がそのまま写し出されているみたいだ。
ジェラールが、お抱えの魔術師が転移魔法の応用で作った物だと自慢していた。
一度、その宮廷魔術師に会ってみたいとリーゼロッテは思う。
(どれどれ……)
男は、王都の教会堂に属する助祭の一人だった。
元々は、他の領地の教会で副助祭をしていたのを、引き抜かれた人物なのだそうだ。
(何か秀でた才能でもあったのかしら?)
王都の教会堂は、大司教から助祭までが住むことが許され、この国で最も大きな大聖堂がある。
すぐ側には、修道院があり修道士や修道女が生活をしていて、自給自足ができる土地もあり、病院も併設されているらしい。
教皇、枢機卿は、別の場所に王宮のような立派な建物があり、そっちに住んでいるそうだ。
読み進めると、男を引き抜いたのは……アニエスを聖女として見出した、あの温厚そうな司教だと書いてあった。
魔石については、捕まった時点で記憶を消去する魔術を発動させたらしく、収獲は得られなかったと。
(うーん、手強い)
それから、ジェラールはもう教会内部に諜報員を送り込んだらしい。出来ればリーゼロッテにも、さっさと聖女と認められ、教会堂に潜り込むようにと書いてあった。
(く……!! ジェラールったら、勝手なことをっ)
仕方ないので、リーゼロッテからもその魔道具に、今日までに起こった領地の教会での出来事を書いた。
きっと、数日中に何か変化があるだろうと。
ジェラールから直ぐに返信があり、ユベールについて根掘り葉掘り訊かれた。
どうも、美男子の助祭と書いたのが失敗だったようだ。
(面倒くさい……)
今日の件でユベールは、魔石については全く知らないのだろうと確信した。
消去法でいくと、ラシャドが関わっていると考えた方が良いかもしれない。
魔道具を消そうとすると【たまには、会いに来い】という文字が最後に現れた。
(…………)
既読スルーで、リーゼロッテはパタリと魔道具を仕舞った。
◇◇◇
ユベールとコリンヌの一件から一夜明けた。
早朝。何となく目が覚めると、ジェラールから渡された魔道具がまた光っているのが見えた。
朝からジェラールと情報交換を終え、んー……っと伸びをする。
朝焼けだった空が、徐々に明るくなってきた。
それでも、いつも起きる時間よりもだいぶ早い。
(ジェラール殿下って、何時に起きてるのかしら?)
無節操な馬鹿王子が、仮の姿だと良く分かった。
いくらループしていても、人には本質があり、努力で変わる人もいれば変わらない人もいる。
ジェラールは、元々勤勉な人間なのだろう。
(あれ……ジェラール殿下は第二王子よね? 王太子って、どんな人だったっけ?)
前に、ルイスがジェラールは兄である王太子を慕っていると言っていた。
確か年は少し離れていると。今、ジェラールが16歳だから王太子は……多分、22歳。そろそろ結婚してもおかしくない年齢だ。
一周目の記憶を探るが、ジェラール同様思い出せない。
「うーん。よし、お父様に訊こう!」
と思ったが……まだちょっと早過ぎると気付く。
こんな時間にルイスの私室を訪ねる訳にはいかない。
(あっ。そうだわ……)
気持ち良さそうに眠っているテオを置いて、リーゼロッテは辺境伯邸の敷地内に作られてる訓練場へ向かった。
この領地は、辺鄙な場所だけあって、空気が澄んでいる。
少し肌寒く、薄っすらと霧も出ているが、リーゼロッテはこの朝の空気感が好きだった。
庭を抜け更に進むと、同じ敷地内とは思えない程、ガラリと雰囲気が変わる。
騎士達の寮である居住部もあるが、そこへ女の子のリーゼロッテが入ることは禁止されている。
訓練場に関しては、外から覗く分には問題ない。
――カンッ! ――カンカンッ!!
木剣の打ち合う音が響いてきた。
(うん、当たりだ)
ルイスと数名の騎士団員が早朝訓練をしていた。
元近衛騎士団の副師団長だったルイスだが、今は領主としての執務が多く、訓練するなら早朝しか出来ない。
まだ、他の騎士達に指導しているので、暫く見学していることにした。
汗で濡れたネイビーブラックの髪が、剣を打ち出す度に揺れてキラキラしている。真剣な顔がいつもにも増して精悍だ。
(恐ろしい程、美しいわ……)
確かルイスは31歳になっている。
いつの間にかルイスが、転生前の自分の年齢を超えていることに気付く。
一周目でも結婚していなかったが、本当にこのまま結婚せずに、この領地を守り続けるのだろうか。
(たとえ辺境の地でも、お父様になら嫁に来たい令嬢は沢山いるわよね)
――チクリと胸が痛かった。
(過去の私……リーゼロッテは、本当の娘になることを望んでいた筈なのに。何だろう……ちょっと苦しいな)
(まるでタブレットみたいね)
ジェラールから渡された魔道具に、あの男の取り調べ結果が送られて来た。
この魔道具が、どんな仕組みなのかはサッパリ理解できないが、ジェラールが書いた文字がそのまま写し出されているみたいだ。
ジェラールが、お抱えの魔術師が転移魔法の応用で作った物だと自慢していた。
一度、その宮廷魔術師に会ってみたいとリーゼロッテは思う。
(どれどれ……)
男は、王都の教会堂に属する助祭の一人だった。
元々は、他の領地の教会で副助祭をしていたのを、引き抜かれた人物なのだそうだ。
(何か秀でた才能でもあったのかしら?)
王都の教会堂は、大司教から助祭までが住むことが許され、この国で最も大きな大聖堂がある。
すぐ側には、修道院があり修道士や修道女が生活をしていて、自給自足ができる土地もあり、病院も併設されているらしい。
教皇、枢機卿は、別の場所に王宮のような立派な建物があり、そっちに住んでいるそうだ。
読み進めると、男を引き抜いたのは……アニエスを聖女として見出した、あの温厚そうな司教だと書いてあった。
魔石については、捕まった時点で記憶を消去する魔術を発動させたらしく、収獲は得られなかったと。
(うーん、手強い)
それから、ジェラールはもう教会内部に諜報員を送り込んだらしい。出来ればリーゼロッテにも、さっさと聖女と認められ、教会堂に潜り込むようにと書いてあった。
(く……!! ジェラールったら、勝手なことをっ)
仕方ないので、リーゼロッテからもその魔道具に、今日までに起こった領地の教会での出来事を書いた。
きっと、数日中に何か変化があるだろうと。
ジェラールから直ぐに返信があり、ユベールについて根掘り葉掘り訊かれた。
どうも、美男子の助祭と書いたのが失敗だったようだ。
(面倒くさい……)
今日の件でユベールは、魔石については全く知らないのだろうと確信した。
消去法でいくと、ラシャドが関わっていると考えた方が良いかもしれない。
魔道具を消そうとすると【たまには、会いに来い】という文字が最後に現れた。
(…………)
既読スルーで、リーゼロッテはパタリと魔道具を仕舞った。
◇◇◇
ユベールとコリンヌの一件から一夜明けた。
早朝。何となく目が覚めると、ジェラールから渡された魔道具がまた光っているのが見えた。
朝からジェラールと情報交換を終え、んー……っと伸びをする。
朝焼けだった空が、徐々に明るくなってきた。
それでも、いつも起きる時間よりもだいぶ早い。
(ジェラール殿下って、何時に起きてるのかしら?)
無節操な馬鹿王子が、仮の姿だと良く分かった。
いくらループしていても、人には本質があり、努力で変わる人もいれば変わらない人もいる。
ジェラールは、元々勤勉な人間なのだろう。
(あれ……ジェラール殿下は第二王子よね? 王太子って、どんな人だったっけ?)
前に、ルイスがジェラールは兄である王太子を慕っていると言っていた。
確か年は少し離れていると。今、ジェラールが16歳だから王太子は……多分、22歳。そろそろ結婚してもおかしくない年齢だ。
一周目の記憶を探るが、ジェラール同様思い出せない。
「うーん。よし、お父様に訊こう!」
と思ったが……まだちょっと早過ぎると気付く。
こんな時間にルイスの私室を訪ねる訳にはいかない。
(あっ。そうだわ……)
気持ち良さそうに眠っているテオを置いて、リーゼロッテは辺境伯邸の敷地内に作られてる訓練場へ向かった。
この領地は、辺鄙な場所だけあって、空気が澄んでいる。
少し肌寒く、薄っすらと霧も出ているが、リーゼロッテはこの朝の空気感が好きだった。
庭を抜け更に進むと、同じ敷地内とは思えない程、ガラリと雰囲気が変わる。
騎士達の寮である居住部もあるが、そこへ女の子のリーゼロッテが入ることは禁止されている。
訓練場に関しては、外から覗く分には問題ない。
――カンッ! ――カンカンッ!!
木剣の打ち合う音が響いてきた。
(うん、当たりだ)
ルイスと数名の騎士団員が早朝訓練をしていた。
元近衛騎士団の副師団長だったルイスだが、今は領主としての執務が多く、訓練するなら早朝しか出来ない。
まだ、他の騎士達に指導しているので、暫く見学していることにした。
汗で濡れたネイビーブラックの髪が、剣を打ち出す度に揺れてキラキラしている。真剣な顔がいつもにも増して精悍だ。
(恐ろしい程、美しいわ……)
確かルイスは31歳になっている。
いつの間にかルイスが、転生前の自分の年齢を超えていることに気付く。
一周目でも結婚していなかったが、本当にこのまま結婚せずに、この領地を守り続けるのだろうか。
(たとえ辺境の地でも、お父様になら嫁に来たい令嬢は沢山いるわよね)
――チクリと胸が痛かった。
(過去の私……リーゼロッテは、本当の娘になることを望んでいた筈なのに。何だろう……ちょっと苦しいな)
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