転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
32.イケメン耐性
――コホンッ! とテオの咳払い。
「そろそろ、うちのお嬢様の手を離して頂けますか?」
テオの一言にハッとしたユベールは、直ぐにリーゼロッテの手を離した。
「た、大変失礼いたしました!」
「いえ、大丈夫ですよ」
教会に居ると、つい令嬢である事を忘れてしまう。手を握られたのにドキドキもせず、握手的な感覚だった。
(最近、イケメンの耐性が出来てきたのかしら?)
「リーゼロッテ様。その御力の事を、領主様はご存知なのでしょうか?」
静かに三人のやり取りを見ていたラシャド司祭が、口を開いた。
(……来た!)
「いいえ、お父様は義理の父ですから。あまり、お話しすることが無いのです。これから先も、この力について話すつもりは……ありません」
瑠璃色の目を伏せながら、リーゼロッテは少し悲しげに答える。
「……そうですか。それは、お寂しい……。いつでも、此方にいらっしゃって下さい。皆、お嬢様が来てくださると喜びます」
「ラシャド司祭、ありがとう存じます」
親身になって話すラシャドに、少々の罪悪感を覚えたが……これは、ルイスと決めた作戦だ。
領主だけが知らされ守っている、魔玻璃や結界についてを、リーゼロッテが知っていると教会側に悟られないようにする為に。
それから直ぐに孤児院を出ると、ユベールに案内され病人の居る家を訪問してまわった。
「本当にリーゼロッテお嬢様は、素晴らしい御力をお持ちなのですね」
キラキラした瞳で、ユベールは言う。
次々に、病に侵された者達が元気になっていく姿を目の当たりにして、リーゼロッテの神々しい力にユベールは心酔した。
「そうでしょうか? 宮廷にいらっしゃる、国を守る聖女様には到底及びませんわ」
「……ああ、宮廷の聖女様ですね」
ユベールの声のトーンが低くなる。返事は簡素というか、興味が無さそうだった。
(あれ? 反応薄っ!)
リーゼロッテは首を傾げる。すると
「ユベール助祭、本日はこのくらいで。リーゼロッテお嬢様はだいぶお疲れのご様子です」
取り分け急ぎの重病人の癒やしは終わったので、これ以上の訪問にテオがストップをかけた。
全くと言っていい程、リーゼロッテの魔力は消費していなかったが、それを知られては不味い。
あくまでも、聖女と呼ばれる人よりも、ちょっと凄い位で良いのだ。
教会へと戻ると、目を覚したミラとラルフがリーゼロッテを待っていた。
ミラは、帰ってきたリーゼロッテを見つけ、パアァッと顔を綻ばせると、テトテトと歩いてやって来る。
ポフンッと、リーゼロッテのスカートに抱きつくと、嬉しそうな笑顔で見上げた。
(ふあぁぁぁ……て、天使ぃ!!)
「ミラのやつ、ずっと待ってたんだ。目が覚めてから、お嬢様が帰ってくるのをさっ。多分、お礼言いたかったんだ」
ラルフの言葉に思わずウルウルしてしまう。
ミラを抱き上げ、ぎゅーっとする。
「ありがとう、ミラ。元気になって良かったね!」
そんな姿を、皆微笑ましそうに見ていた。
ただ、テオだけは冷静な瞳で、ラシャドとユベールを観察していた。
◇◇◇
「これで、近いうちに教会の御偉いさんがやって来ると思います」
「そうか……。呉々も用心するんだよ」
邸宅に帰ったリーゼロッテとテオは、いつもの様にルイスに教会での出来事を報告していた。
今日はミラの事があり、いかに天使の様に可愛かったかを延々と話した後の報告になったのだが。
「テオは、どうだったかな?」
「そうだな。リーゼロッテが今は話した内容が殆どだが……。あの、ユベールと言う助祭が気になった」
「どういう事だ?」
ルイスは怪訝そうにし、リーゼロッテは驚いた表情をする。
「ラシャド司祭ではなくてユベール? ああ、私の手を握ったから?」
「……手を、握った?」
チラッと、ルイスはリーゼロッテを見る。
「そ、それは、癒しを見て感動したから……ついって感じでした」
慌てて付け加える。
「そうではない。ユベールのリーゼロッテを見る目が気になったのだ。崇拝……少々危ない感じがした」とテオ。
「崇拝なら、害は無いのでは?」
「狂信的なものでなければな。主人、奴には気をつけよ」
「……そうね、テオがそう言うなら。油断しないようにするわ」
リーゼロッテは、テオの魔獣としての勘を信じている。
「それから、リーゼロッテ。フランツの例もある。そのミラが利用されないよう、何か手を打った方が良いかもしれない」
ルイスの言葉に、リーゼロッテは暫く考え……ニッコリと笑みを浮かべた。
「はい、早速手を打っておきます」
報告を終えて執務室を出ようとすると、ルイスに呼び止められた。
ツカツカとやって来たルイスは、リーゼロッテの手を取り、形の良い薄い唇を付けた。
(――えっ!?)
手から唇を離したルイスは……
「消毒だよ」と、美しく微笑んだ。
ボッと、リーゼロッテは顔が熱くなるのが分かった。
(……うぐぐ。全くイケメン耐性できて無かったみたい)
テオは、またか……と呆れ気味に肩を竦めた。
「そろそろ、うちのお嬢様の手を離して頂けますか?」
テオの一言にハッとしたユベールは、直ぐにリーゼロッテの手を離した。
「た、大変失礼いたしました!」
「いえ、大丈夫ですよ」
教会に居ると、つい令嬢である事を忘れてしまう。手を握られたのにドキドキもせず、握手的な感覚だった。
(最近、イケメンの耐性が出来てきたのかしら?)
「リーゼロッテ様。その御力の事を、領主様はご存知なのでしょうか?」
静かに三人のやり取りを見ていたラシャド司祭が、口を開いた。
(……来た!)
「いいえ、お父様は義理の父ですから。あまり、お話しすることが無いのです。これから先も、この力について話すつもりは……ありません」
瑠璃色の目を伏せながら、リーゼロッテは少し悲しげに答える。
「……そうですか。それは、お寂しい……。いつでも、此方にいらっしゃって下さい。皆、お嬢様が来てくださると喜びます」
「ラシャド司祭、ありがとう存じます」
親身になって話すラシャドに、少々の罪悪感を覚えたが……これは、ルイスと決めた作戦だ。
領主だけが知らされ守っている、魔玻璃や結界についてを、リーゼロッテが知っていると教会側に悟られないようにする為に。
それから直ぐに孤児院を出ると、ユベールに案内され病人の居る家を訪問してまわった。
「本当にリーゼロッテお嬢様は、素晴らしい御力をお持ちなのですね」
キラキラした瞳で、ユベールは言う。
次々に、病に侵された者達が元気になっていく姿を目の当たりにして、リーゼロッテの神々しい力にユベールは心酔した。
「そうでしょうか? 宮廷にいらっしゃる、国を守る聖女様には到底及びませんわ」
「……ああ、宮廷の聖女様ですね」
ユベールの声のトーンが低くなる。返事は簡素というか、興味が無さそうだった。
(あれ? 反応薄っ!)
リーゼロッテは首を傾げる。すると
「ユベール助祭、本日はこのくらいで。リーゼロッテお嬢様はだいぶお疲れのご様子です」
取り分け急ぎの重病人の癒やしは終わったので、これ以上の訪問にテオがストップをかけた。
全くと言っていい程、リーゼロッテの魔力は消費していなかったが、それを知られては不味い。
あくまでも、聖女と呼ばれる人よりも、ちょっと凄い位で良いのだ。
教会へと戻ると、目を覚したミラとラルフがリーゼロッテを待っていた。
ミラは、帰ってきたリーゼロッテを見つけ、パアァッと顔を綻ばせると、テトテトと歩いてやって来る。
ポフンッと、リーゼロッテのスカートに抱きつくと、嬉しそうな笑顔で見上げた。
(ふあぁぁぁ……て、天使ぃ!!)
「ミラのやつ、ずっと待ってたんだ。目が覚めてから、お嬢様が帰ってくるのをさっ。多分、お礼言いたかったんだ」
ラルフの言葉に思わずウルウルしてしまう。
ミラを抱き上げ、ぎゅーっとする。
「ありがとう、ミラ。元気になって良かったね!」
そんな姿を、皆微笑ましそうに見ていた。
ただ、テオだけは冷静な瞳で、ラシャドとユベールを観察していた。
◇◇◇
「これで、近いうちに教会の御偉いさんがやって来ると思います」
「そうか……。呉々も用心するんだよ」
邸宅に帰ったリーゼロッテとテオは、いつもの様にルイスに教会での出来事を報告していた。
今日はミラの事があり、いかに天使の様に可愛かったかを延々と話した後の報告になったのだが。
「テオは、どうだったかな?」
「そうだな。リーゼロッテが今は話した内容が殆どだが……。あの、ユベールと言う助祭が気になった」
「どういう事だ?」
ルイスは怪訝そうにし、リーゼロッテは驚いた表情をする。
「ラシャド司祭ではなくてユベール? ああ、私の手を握ったから?」
「……手を、握った?」
チラッと、ルイスはリーゼロッテを見る。
「そ、それは、癒しを見て感動したから……ついって感じでした」
慌てて付け加える。
「そうではない。ユベールのリーゼロッテを見る目が気になったのだ。崇拝……少々危ない感じがした」とテオ。
「崇拝なら、害は無いのでは?」
「狂信的なものでなければな。主人、奴には気をつけよ」
「……そうね、テオがそう言うなら。油断しないようにするわ」
リーゼロッテは、テオの魔獣としての勘を信じている。
「それから、リーゼロッテ。フランツの例もある。そのミラが利用されないよう、何か手を打った方が良いかもしれない」
ルイスの言葉に、リーゼロッテは暫く考え……ニッコリと笑みを浮かべた。
「はい、早速手を打っておきます」
報告を終えて執務室を出ようとすると、ルイスに呼び止められた。
ツカツカとやって来たルイスは、リーゼロッテの手を取り、形の良い薄い唇を付けた。
(――えっ!?)
手から唇を離したルイスは……
「消毒だよ」と、美しく微笑んだ。
ボッと、リーゼロッテは顔が熱くなるのが分かった。
(……うぐぐ。全くイケメン耐性できて無かったみたい)
テオは、またか……と呆れ気味に肩を竦めた。
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