転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
26.戸惑い
(ど、どうしよう。なんなの……この状況はっ!?)
ルイスの顔が近すぎて戸惑ってしまう。息をするのも躊躇する程の距離だった。
とはいえ、ほんの数秒でルイスはスッと離れた。
(か、顔が熱い……)
真っ赤になってるリリー姿のリーゼロッテ。ルイスはそんなリーゼロッテの頬に触れ、耳元で囁いた。
「そんな表情、他の男には見せてはいけないよ」
(――!!)
返事もできずに、口をパクパクするリーゼロッテ。
クスッと笑ったルイスは「おやすみ」と言って部屋を後にした。
(な、何だったんだぁぁぁっ!?)
リーゼロッテは頭を抱えてしゃがみ込んだ。
『……ルイスは、意外と独占欲が強そうだ』
ポソッとベッドの上から、一部始終様子を見ていたテオは言った。
やっと落ち着き――。
元の姿に戻ると、湯浴みを済ませてベッドに入ったが……。とても疲れているのに、目が冴えてしまって寝付けない。
先程のルイスとのやり取りを思い出すと、また鼓動が早くなるのだ。
ルイスには、深い意味なんて無いだろうけど……と思いながら自分のおでこを触る。
(まだ熱い……)
どうせ眠れないのならと、月明かりの下、窓を開け風に当たりながら頭の中を整理してみる。
ジェラールが言うには、あのマイクロチップみたいな魔石は、魔術によって体内に入れることが出来るらしい。一周目の時にその現場を目撃し、色々と調べ始めたそうだ。
ジェラールが最初に見た被害者は、聖女アニエスだった。
だから、ループした現在……離宮を監視していたのだ。多分、過去で奴らがアニエスに接触する時期が、ちょうど今頃だったのだろう。
そもそもだが、アニエスとルイスは仲が良かった。
それを知っていれば、あの社交界デビューの日にわざわざ色目を使わせる必要なんて無かったのだ。
つまり、二人の関係を知らない人間が、アニエスに辺境伯であるルイスを利用させようとしたと考えられる。
(もしかしたら……私も?)
ジェラールが言ったある者を追ってとは、リーゼロッテ自身のことではないかと漠然と思った。
(操られていたとしたら、当時の記憶が欠落していてもおかしくない)
ふいに首の後ろがゾクッとし、思わず自分の腕を摩った。
「リーゼロッテ、大丈夫か?」
テオがそっとショールをかけてくれた。
「ありがとう、テオ」
「……何を考えていたのだ?」と、心配そうにリーゼロッテの顔を覗き込んだ。
「殿下が見せてくれた魔石……テオも見たでしょ? あれ、私も埋め込まれていたのかもしれないわ」
「ああ、あれか。……あんなチンケな魔石、何を恐れることがある? リーゼロッテの体内に入った所で、其方の魔力を巡らせたら直ぐに消滅する程度の物だぞ」
「え……うそ? それって、私凄くない?」
「はっ、今更何を言っている。リーゼロッテは、私が認めた主人なのだぞ」
銀髪をかき上げながら言った、テオの笑顔が温かった。
(そうか、今の私は味方が沢山いるんだ。そして、この力……もしかしたら、最強なのかもしれないわ)
リーゼロッテは、魔力が通う自分の手を眺め、拳を握った。
安心したら、急に眠気が襲って来る。
ヒューッと風が入って来たので、窓を閉めて寝ようかと手を伸ばすと、庭で何かが動いたように見えた。
即座に念話でテオを呼ぶ。
『テオ、あれを見て』
人影のようなものがコソコソと移動していた。
『人が居るな。あの方向は……洞窟へ向かっているぞ』
『こんな時間に誰が? 先回りして、待ち伏せしましょう』
リーゼロッテはさっと着替えると、テオと一緒に洞窟へ転移した。
もう、何度も足を運んでいるそこは、地形もしっかり把握している。
魔玻璃と、入って来る者が確実に見える場所。丁度良い岩陰に隠れると、息を潜めやって来る人物を待つ。
この洞窟へ向かうなら、目的は魔玻璃しか考えられない。
――コツン……コツンと、洞窟内に響く足音は何処となく不自然なリズムだった。
徐々に大きくなる音と共に、人影が見えくる。
(……うそっ!?)
思わず声を出しそうになり、慌てて自分の口を押さえた。
その人物は、なんとリーゼロッテの弟フランツだった。
まるで夢遊病のように、視線は定まらずフラフラと歩いて魔玻璃に近付いて行く。
『フランツは、どうやら操られているな。どうする、止めるか?』
『そうね。ん? ……ちょっと待って』
フランツは、唐突にしゃがみ込むと地面に何かを描こうとした。
『テオ、気配を消して。フランツをあのまま転移させるわ!』
リーゼロッテは、フランツの真後ろに転移し、そのままフランツにそっと触れて、もう一度転移した。
転移先は……フェンリルのテオが100年も閉じ込められていた、あの地下牢へ。
テオが壊した鉄格子は、もう完全に修復されている。
転移した意識の無いフランツは、そのまま牢屋の床に魔法陣を描いている。
描き終わり、ふらっと立ち上がった瞬間、リーゼロッテはフランツに触れて魔力を流した。
フランツの首の後ろから魔石が浮き上がり、パァーンッと消滅した。ガクッと力が抜けたフランツをテオが支えた。
やはり、あの魔石で操られていたのだ。
(一体、いつ魔石が埋め込まれたのかしら?)
リーゼロッテが目覚めてから、教会の人間とフランツが接触したことは無いはず。
可能性として考えられるのは、一つだった。
ルイスの顔が近すぎて戸惑ってしまう。息をするのも躊躇する程の距離だった。
とはいえ、ほんの数秒でルイスはスッと離れた。
(か、顔が熱い……)
真っ赤になってるリリー姿のリーゼロッテ。ルイスはそんなリーゼロッテの頬に触れ、耳元で囁いた。
「そんな表情、他の男には見せてはいけないよ」
(――!!)
返事もできずに、口をパクパクするリーゼロッテ。
クスッと笑ったルイスは「おやすみ」と言って部屋を後にした。
(な、何だったんだぁぁぁっ!?)
リーゼロッテは頭を抱えてしゃがみ込んだ。
『……ルイスは、意外と独占欲が強そうだ』
ポソッとベッドの上から、一部始終様子を見ていたテオは言った。
やっと落ち着き――。
元の姿に戻ると、湯浴みを済ませてベッドに入ったが……。とても疲れているのに、目が冴えてしまって寝付けない。
先程のルイスとのやり取りを思い出すと、また鼓動が早くなるのだ。
ルイスには、深い意味なんて無いだろうけど……と思いながら自分のおでこを触る。
(まだ熱い……)
どうせ眠れないのならと、月明かりの下、窓を開け風に当たりながら頭の中を整理してみる。
ジェラールが言うには、あのマイクロチップみたいな魔石は、魔術によって体内に入れることが出来るらしい。一周目の時にその現場を目撃し、色々と調べ始めたそうだ。
ジェラールが最初に見た被害者は、聖女アニエスだった。
だから、ループした現在……離宮を監視していたのだ。多分、過去で奴らがアニエスに接触する時期が、ちょうど今頃だったのだろう。
そもそもだが、アニエスとルイスは仲が良かった。
それを知っていれば、あの社交界デビューの日にわざわざ色目を使わせる必要なんて無かったのだ。
つまり、二人の関係を知らない人間が、アニエスに辺境伯であるルイスを利用させようとしたと考えられる。
(もしかしたら……私も?)
ジェラールが言ったある者を追ってとは、リーゼロッテ自身のことではないかと漠然と思った。
(操られていたとしたら、当時の記憶が欠落していてもおかしくない)
ふいに首の後ろがゾクッとし、思わず自分の腕を摩った。
「リーゼロッテ、大丈夫か?」
テオがそっとショールをかけてくれた。
「ありがとう、テオ」
「……何を考えていたのだ?」と、心配そうにリーゼロッテの顔を覗き込んだ。
「殿下が見せてくれた魔石……テオも見たでしょ? あれ、私も埋め込まれていたのかもしれないわ」
「ああ、あれか。……あんなチンケな魔石、何を恐れることがある? リーゼロッテの体内に入った所で、其方の魔力を巡らせたら直ぐに消滅する程度の物だぞ」
「え……うそ? それって、私凄くない?」
「はっ、今更何を言っている。リーゼロッテは、私が認めた主人なのだぞ」
銀髪をかき上げながら言った、テオの笑顔が温かった。
(そうか、今の私は味方が沢山いるんだ。そして、この力……もしかしたら、最強なのかもしれないわ)
リーゼロッテは、魔力が通う自分の手を眺め、拳を握った。
安心したら、急に眠気が襲って来る。
ヒューッと風が入って来たので、窓を閉めて寝ようかと手を伸ばすと、庭で何かが動いたように見えた。
即座に念話でテオを呼ぶ。
『テオ、あれを見て』
人影のようなものがコソコソと移動していた。
『人が居るな。あの方向は……洞窟へ向かっているぞ』
『こんな時間に誰が? 先回りして、待ち伏せしましょう』
リーゼロッテはさっと着替えると、テオと一緒に洞窟へ転移した。
もう、何度も足を運んでいるそこは、地形もしっかり把握している。
魔玻璃と、入って来る者が確実に見える場所。丁度良い岩陰に隠れると、息を潜めやって来る人物を待つ。
この洞窟へ向かうなら、目的は魔玻璃しか考えられない。
――コツン……コツンと、洞窟内に響く足音は何処となく不自然なリズムだった。
徐々に大きくなる音と共に、人影が見えくる。
(……うそっ!?)
思わず声を出しそうになり、慌てて自分の口を押さえた。
その人物は、なんとリーゼロッテの弟フランツだった。
まるで夢遊病のように、視線は定まらずフラフラと歩いて魔玻璃に近付いて行く。
『フランツは、どうやら操られているな。どうする、止めるか?』
『そうね。ん? ……ちょっと待って』
フランツは、唐突にしゃがみ込むと地面に何かを描こうとした。
『テオ、気配を消して。フランツをあのまま転移させるわ!』
リーゼロッテは、フランツの真後ろに転移し、そのままフランツにそっと触れて、もう一度転移した。
転移先は……フェンリルのテオが100年も閉じ込められていた、あの地下牢へ。
テオが壊した鉄格子は、もう完全に修復されている。
転移した意識の無いフランツは、そのまま牢屋の床に魔法陣を描いている。
描き終わり、ふらっと立ち上がった瞬間、リーゼロッテはフランツに触れて魔力を流した。
フランツの首の後ろから魔石が浮き上がり、パァーンッと消滅した。ガクッと力が抜けたフランツをテオが支えた。
やはり、あの魔石で操られていたのだ。
(一体、いつ魔石が埋め込まれたのかしら?)
リーゼロッテが目覚めてから、教会の人間とフランツが接触したことは無いはず。
可能性として考えられるのは、一つだった。
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