転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
20.洞窟へ
「「何を言っているのだ?」」
テオとルイスが同時に言った。
「……えっ? ですから、私が全て守ると……」
「主人を守るのは、私の役目だが」と、テオ。
「リーゼロッテ、なぜ一人で背負おうとするのかな? これは、この辺境伯領の問題でもあるんだ」
ルイスは、ポンッと大きな手をリーゼロッテの頭に乗せ、そのまま優しく撫でる。
「いいかい、私は君の父親なんだよ。娘を、守るのは私の役目。当然だろう?」
「……うぅ……」
(そんなこと言われたら、泣いてしまいそうだわ……。だけど、私は人前で泣くのは嫌だ)
グッと、こらえてニッコリと笑顔を作る。
「お父様、テオ、ありがとう存じます!」
「ほう、リーゼロッテはこういう場では泣かないのか?」
テオが意味深な言い方をして笑う。
「私、人前で泣くのは嫌いなの」
「では、今までの涙は何だったのかな?」
ルイスの言葉にハッとする。度々泣き落としで誤魔化した事を思い出す。
「そんな事ありましたっけ?」
コテッと首を傾げ、しらばっくれる。
「何だか、今のリーゼロッテは……これまで見てきたリーゼロッテとも、侍女のリリーとも違うね。これが、本来の君なのだね」
そう言うルイスもまた、今までとは違う柔らかな表情だった。
「リーゼロッテ、魔玻璃のある洞窟へ行ってみるかい? 辛い記憶があるのだから、無理にではないが」
少し躊躇しながらルイスは訊いた。
行けば、何か他にも思い出せるかもしれないと、リーゼロッテも考えていた。
(あっ!……そうだわ!)
「はい、行きたいです! その際、二人にお願いがあります」
◇◇◇
洞窟への入り口は――。
まさかの辺境伯邸の敷地内にあった。
この邸宅は、領地の中で一番王都に遠い場所……つまり、国の最果ての地に建てられている。
屋敷というより要塞の様な建物で、広さも相当なもの。だから、邸の下にあんな大きな地下牢まで作ることが出来たのだ。
リーゼロッテたちが日常使っている住居部分は、この敷地内で最も安全性が高い場所にある。
物々しい雰囲気にならない様に、貴族に相応しい豪奢なデザインにしてあり、美しい庭園も造られているのだ。
荒れた土地ではあるが、広大な敷地。代々の当主がどんどん増築していったに違いない。
そんなこの敷地内、住居部分から少し離れた場所に、しっかりと根を張った太く立派な大木が立っていた。
ルイスは、その大木に触れ魔力を流すと、地面が光り出す。
光がおさまると、地下へ繋がる入り口が現れた。
(こんな場所にあったのね。一周目でもここを通った筈なのに。記憶に無いわ……)
リーゼロッテは緊張しつつ、ルイスについて中へと入って行く。
長いスロープの様に徐々に深くなり、空気も冷たくなってきた。薄暗かったが、所々に小さな魔道具が置かれていて、近付くと自然に淡い光を点す。
薄っすらと見える壁面は、ゴツゴツとしていた。
(これって、鍾乳洞みたいね)
「もうすぐだ」
洞窟の中、ルイスの声が響いた。
目の前に広い空間が現れ、その真ん中に大きな魔玻璃があった。六角柱状の魔玻璃は、透明感があり優しい光を放っていて、とても美しく目を引いた。
ゴクリと唾を呑み近付いていく。
「リーゼロッテ、何が起こるか分からないから、それに触れてはいけないよ」
ルイスの言葉に頷き、もう一歩近付いた。
魔玻璃は、リーゼロッテの持つ魔力に反応したのか、ピカッと光が強くなった。
「ほう。やはり、その御方はリーゼロッテが分かる様だな」
テオの言葉は、まるで魔玻璃は生きているのだと感じさせた。
(……ここ、覚えている)
リーゼロッテは、ルイスとテオを振り返った。
「お父様、テオ。私、この場所を覚えいるわ。例の事を、試してもらってもいいかしら?」
頷いた二人の前に、魔玻璃を背にしてリーゼロッテは横たわる。
リーゼロッテの傍にルイスが跪き、そのルイスの背後にテオが立ち、剣を振り上げた。
――過去の再現。
テオが手にした剣は、魔玻璃の光を見事に反射させて光ったのだ。あの時の情景が、一気に頭の中に浮かび上がる。
(やはり、ここだった!)
仮説が証明された。
リーゼロッテは上半身を起こすと、フウッと息を吐いた。自分の手を見て、震えていることに気がついた。
「「リーゼロッテ!!」」
心配そうに駆け寄る二人に、強張った顔で微笑んだ。
「大丈夫です。今、ハッキリと分かりました。私は、ここで殺されたのです」
震えが止まらず、ぐらりと視界が歪む。
「無理をするなっ!」
そう言ったルイスに抱き上げられて、洞窟を後にした。
「お父様、ありがとう」
小さな声で、呟く。抱えられた腕の中は……ルイスの温もりと鼓動が聞こえ、とても安心できた。
あの剣が光った瞬間、ルイスの背後には二人の人間がいたことをリーゼロッテは思い出したのだ。
(……あれは、誰だったのだろう?)
今はまだその人物が思い出せないが、当人に会った時には思い出せる――そんな予感がした。
テオとルイスが同時に言った。
「……えっ? ですから、私が全て守ると……」
「主人を守るのは、私の役目だが」と、テオ。
「リーゼロッテ、なぜ一人で背負おうとするのかな? これは、この辺境伯領の問題でもあるんだ」
ルイスは、ポンッと大きな手をリーゼロッテの頭に乗せ、そのまま優しく撫でる。
「いいかい、私は君の父親なんだよ。娘を、守るのは私の役目。当然だろう?」
「……うぅ……」
(そんなこと言われたら、泣いてしまいそうだわ……。だけど、私は人前で泣くのは嫌だ)
グッと、こらえてニッコリと笑顔を作る。
「お父様、テオ、ありがとう存じます!」
「ほう、リーゼロッテはこういう場では泣かないのか?」
テオが意味深な言い方をして笑う。
「私、人前で泣くのは嫌いなの」
「では、今までの涙は何だったのかな?」
ルイスの言葉にハッとする。度々泣き落としで誤魔化した事を思い出す。
「そんな事ありましたっけ?」
コテッと首を傾げ、しらばっくれる。
「何だか、今のリーゼロッテは……これまで見てきたリーゼロッテとも、侍女のリリーとも違うね。これが、本来の君なのだね」
そう言うルイスもまた、今までとは違う柔らかな表情だった。
「リーゼロッテ、魔玻璃のある洞窟へ行ってみるかい? 辛い記憶があるのだから、無理にではないが」
少し躊躇しながらルイスは訊いた。
行けば、何か他にも思い出せるかもしれないと、リーゼロッテも考えていた。
(あっ!……そうだわ!)
「はい、行きたいです! その際、二人にお願いがあります」
◇◇◇
洞窟への入り口は――。
まさかの辺境伯邸の敷地内にあった。
この邸宅は、領地の中で一番王都に遠い場所……つまり、国の最果ての地に建てられている。
屋敷というより要塞の様な建物で、広さも相当なもの。だから、邸の下にあんな大きな地下牢まで作ることが出来たのだ。
リーゼロッテたちが日常使っている住居部分は、この敷地内で最も安全性が高い場所にある。
物々しい雰囲気にならない様に、貴族に相応しい豪奢なデザインにしてあり、美しい庭園も造られているのだ。
荒れた土地ではあるが、広大な敷地。代々の当主がどんどん増築していったに違いない。
そんなこの敷地内、住居部分から少し離れた場所に、しっかりと根を張った太く立派な大木が立っていた。
ルイスは、その大木に触れ魔力を流すと、地面が光り出す。
光がおさまると、地下へ繋がる入り口が現れた。
(こんな場所にあったのね。一周目でもここを通った筈なのに。記憶に無いわ……)
リーゼロッテは緊張しつつ、ルイスについて中へと入って行く。
長いスロープの様に徐々に深くなり、空気も冷たくなってきた。薄暗かったが、所々に小さな魔道具が置かれていて、近付くと自然に淡い光を点す。
薄っすらと見える壁面は、ゴツゴツとしていた。
(これって、鍾乳洞みたいね)
「もうすぐだ」
洞窟の中、ルイスの声が響いた。
目の前に広い空間が現れ、その真ん中に大きな魔玻璃があった。六角柱状の魔玻璃は、透明感があり優しい光を放っていて、とても美しく目を引いた。
ゴクリと唾を呑み近付いていく。
「リーゼロッテ、何が起こるか分からないから、それに触れてはいけないよ」
ルイスの言葉に頷き、もう一歩近付いた。
魔玻璃は、リーゼロッテの持つ魔力に反応したのか、ピカッと光が強くなった。
「ほう。やはり、その御方はリーゼロッテが分かる様だな」
テオの言葉は、まるで魔玻璃は生きているのだと感じさせた。
(……ここ、覚えている)
リーゼロッテは、ルイスとテオを振り返った。
「お父様、テオ。私、この場所を覚えいるわ。例の事を、試してもらってもいいかしら?」
頷いた二人の前に、魔玻璃を背にしてリーゼロッテは横たわる。
リーゼロッテの傍にルイスが跪き、そのルイスの背後にテオが立ち、剣を振り上げた。
――過去の再現。
テオが手にした剣は、魔玻璃の光を見事に反射させて光ったのだ。あの時の情景が、一気に頭の中に浮かび上がる。
(やはり、ここだった!)
仮説が証明された。
リーゼロッテは上半身を起こすと、フウッと息を吐いた。自分の手を見て、震えていることに気がついた。
「「リーゼロッテ!!」」
心配そうに駆け寄る二人に、強張った顔で微笑んだ。
「大丈夫です。今、ハッキリと分かりました。私は、ここで殺されたのです」
震えが止まらず、ぐらりと視界が歪む。
「無理をするなっ!」
そう言ったルイスに抱き上げられて、洞窟を後にした。
「お父様、ありがとう」
小さな声で、呟く。抱えられた腕の中は……ルイスの温もりと鼓動が聞こえ、とても安心できた。
あの剣が光った瞬間、ルイスの背後には二人の人間がいたことをリーゼロッテは思い出したのだ。
(……あれは、誰だったのだろう?)
今はまだその人物が思い出せないが、当人に会った時には思い出せる――そんな予感がした。
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