転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
19.ルイス視点②
(もしかしたら、リーゼロッテの友人に同じ名前を持つ者がいたのか? ……いや、それは無いだろう)
リーゼロッテは、まだお茶会等に出席したことはないはず。
この領地は、他の貴族領からだいぶ離れていることもあり、辺鄙な土地を好んでやって来る者など居ない。同年代の友人を作ることさえ難しいのだ。
(それに……)
知り合いの貴族は限られている。ルイスが把握している中に、その名を持つ者はいない。
ブランディーヌの所でも、誰かと会ったとは聞かなかった。屋敷で久しぶりの二人での時間を楽しく過ごしていたと、ブランディーヌ本人から直接言われたのだから。
(やはり、考えられるのは……)
リーゼロッテの動向を観察していても、以前と何ら変わりは無かった。
以前と言っても「お父様」と呼んだあの日からだが――。むしろ、それより前のリーゼロッテとは別人だった。
(成長したと言った方が良いのだろうか?)
フランツや家庭教師がいる時は、子供らしく無邪気な姿を見せた。
逆に、テオと二人で居る時は、やたらと落ち着いている様に見える。
(気のせいか? いや……テオと二人の時を、注意して観察してみよう)
◇◇◇
ルイスが観察し始めて暫く経った。
その日、リーゼロッテとテオは屋敷の中には見当たらず、庭でお茶をしていると侍女から聞いた。
声をかけるつもりは無かった。
だが、気配を消して近付くと、テオの声が耳に入ってきてしまったのだ。
「そもそも、何故ルイスに隠す必要がある? ブランディーヌにも、ある程度は知らせていたではないか」
途切れ途切れに聞こえてくる、会話の内容の意味が理解できない。
「全て話したら……きっと、以前のリーゼロッテとは別人だと認識される気がするの」
(以前のリーゼロッテとは別人? ……どういうことだ?)
ふと眼を凝らすと、テオがリーゼロッテの頬に愛おしそうに触れていた。
(……なっ?!)
気が付いた時には――足は勝手に二人の元へ行き、リーゼロッテの背後から声をかけてしまっていた。
二人の視線がルイスに向く。
(後戻りは出来ない……か)
リーゼロッテがリリーだったらと仮定し、魔石と同じ色の瞳を見詰め――鎌をかけた。
半信半疑だったそれは、リーゼロッテによって確信へと変わった。
つい、キツめに問い質してしまい後悔する。出してしまった言葉は、戻すことなど出来なかった。
(私は……父親としての余裕がまだ無い。未熟だな)
そして。
「お父様! 騙してごめんなさいっ!」
謝罪の言葉と共に、目の前で変身したリーゼロッテ。
リリー姿になったリーゼロッテに、何を言ったら良いか分からなかった。あれ程までに会いたかった人が、まだ幼い自分の娘だったのだから。
こんな魔法が使えるのはフェンリルであるテオだと思い、騙されたという怒りの矛先はテオに向いた。
だが――そうでは無かった。
誰にも聞かれたくないとのリーゼロッテの希望で、場所を変え結界を張る。
話し始めたリーゼロッテの口調は落ち着いていて、見た目は子供なのにリリーそのものだった。
しかも、想像だにしない内容。
異世界からの転生、桁外れの魔力、リーゼロッテの二度目の人生……次々に信じ難い言葉がやってくる。
ルイスは頭が混乱した。
(けれど……それら全てが本当ならば、今迄の出来事の辻褄が合う)
そして、何よりも驚かされたのは、これらの大本のきっかけが15歳のリーゼロッテの死であるということ。
(リーゼロッテは、私を助けようと……)
15歳の女の子が、どんな思いで死を迎えたのかを知った。リーゼロッテはその辛い記憶を残したまま、必死で回避しようと奔走していたのだ。
(7年後の私は、一体何をしていたのかっ! 子供達を守れないなんて……)
不甲斐ない自分自身に腹が立った。
そんなルイスの心を見透かしたかの様に、テオは言う。
「さて、ルイスよ。我が主人は全てを話した。次は、我々の番ではないか?」
テオの言葉に、この辺境の地について、リーゼロッテには知る権利があると思った。
代々伝わる資料を見せ、子供達には隠していた兄夫婦の死の真相を伝えた。
また、テオも自身が捕らえられた経緯を話した。プライドの高いフェンリルにとっては、余り言いたくなかっただろうが。
暫く考え込んでいたリーゼロッテは、大きく息を吐き、真っ直ぐ前を見据えて、こう言った。
「私が、全てを守ってみせます」と。
(この娘は、どこまで自分を犠牲にするつもりなのか? 全く……)
呆れて、思わず笑ってしまう。
「「何を言っているのだ?」」
テオと同時に言葉が出てしまった。
(リーゼロッテを守るのは、私の役目だ)
二度も同じ苦しみを、絶対に味合わせたくない。
必ずやリーゼロッテを守ると、心に誓った。
リーゼロッテは、まだお茶会等に出席したことはないはず。
この領地は、他の貴族領からだいぶ離れていることもあり、辺鄙な土地を好んでやって来る者など居ない。同年代の友人を作ることさえ難しいのだ。
(それに……)
知り合いの貴族は限られている。ルイスが把握している中に、その名を持つ者はいない。
ブランディーヌの所でも、誰かと会ったとは聞かなかった。屋敷で久しぶりの二人での時間を楽しく過ごしていたと、ブランディーヌ本人から直接言われたのだから。
(やはり、考えられるのは……)
リーゼロッテの動向を観察していても、以前と何ら変わりは無かった。
以前と言っても「お父様」と呼んだあの日からだが――。むしろ、それより前のリーゼロッテとは別人だった。
(成長したと言った方が良いのだろうか?)
フランツや家庭教師がいる時は、子供らしく無邪気な姿を見せた。
逆に、テオと二人で居る時は、やたらと落ち着いている様に見える。
(気のせいか? いや……テオと二人の時を、注意して観察してみよう)
◇◇◇
ルイスが観察し始めて暫く経った。
その日、リーゼロッテとテオは屋敷の中には見当たらず、庭でお茶をしていると侍女から聞いた。
声をかけるつもりは無かった。
だが、気配を消して近付くと、テオの声が耳に入ってきてしまったのだ。
「そもそも、何故ルイスに隠す必要がある? ブランディーヌにも、ある程度は知らせていたではないか」
途切れ途切れに聞こえてくる、会話の内容の意味が理解できない。
「全て話したら……きっと、以前のリーゼロッテとは別人だと認識される気がするの」
(以前のリーゼロッテとは別人? ……どういうことだ?)
ふと眼を凝らすと、テオがリーゼロッテの頬に愛おしそうに触れていた。
(……なっ?!)
気が付いた時には――足は勝手に二人の元へ行き、リーゼロッテの背後から声をかけてしまっていた。
二人の視線がルイスに向く。
(後戻りは出来ない……か)
リーゼロッテがリリーだったらと仮定し、魔石と同じ色の瞳を見詰め――鎌をかけた。
半信半疑だったそれは、リーゼロッテによって確信へと変わった。
つい、キツめに問い質してしまい後悔する。出してしまった言葉は、戻すことなど出来なかった。
(私は……父親としての余裕がまだ無い。未熟だな)
そして。
「お父様! 騙してごめんなさいっ!」
謝罪の言葉と共に、目の前で変身したリーゼロッテ。
リリー姿になったリーゼロッテに、何を言ったら良いか分からなかった。あれ程までに会いたかった人が、まだ幼い自分の娘だったのだから。
こんな魔法が使えるのはフェンリルであるテオだと思い、騙されたという怒りの矛先はテオに向いた。
だが――そうでは無かった。
誰にも聞かれたくないとのリーゼロッテの希望で、場所を変え結界を張る。
話し始めたリーゼロッテの口調は落ち着いていて、見た目は子供なのにリリーそのものだった。
しかも、想像だにしない内容。
異世界からの転生、桁外れの魔力、リーゼロッテの二度目の人生……次々に信じ難い言葉がやってくる。
ルイスは頭が混乱した。
(けれど……それら全てが本当ならば、今迄の出来事の辻褄が合う)
そして、何よりも驚かされたのは、これらの大本のきっかけが15歳のリーゼロッテの死であるということ。
(リーゼロッテは、私を助けようと……)
15歳の女の子が、どんな思いで死を迎えたのかを知った。リーゼロッテはその辛い記憶を残したまま、必死で回避しようと奔走していたのだ。
(7年後の私は、一体何をしていたのかっ! 子供達を守れないなんて……)
不甲斐ない自分自身に腹が立った。
そんなルイスの心を見透かしたかの様に、テオは言う。
「さて、ルイスよ。我が主人は全てを話した。次は、我々の番ではないか?」
テオの言葉に、この辺境の地について、リーゼロッテには知る権利があると思った。
代々伝わる資料を見せ、子供達には隠していた兄夫婦の死の真相を伝えた。
また、テオも自身が捕らえられた経緯を話した。プライドの高いフェンリルにとっては、余り言いたくなかっただろうが。
暫く考え込んでいたリーゼロッテは、大きく息を吐き、真っ直ぐ前を見据えて、こう言った。
「私が、全てを守ってみせます」と。
(この娘は、どこまで自分を犠牲にするつもりなのか? 全く……)
呆れて、思わず笑ってしまう。
「「何を言っているのだ?」」
テオと同時に言葉が出てしまった。
(リーゼロッテを守るのは、私の役目だ)
二度も同じ苦しみを、絶対に味合わせたくない。
必ずやリーゼロッテを守ると、心に誓った。
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