転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
14.進展
「……やはり、そういう事だったのね」
ブランディーヌはため息混じりに言った。
どうやら一部の貴族の間では、王族と教会の関係性や聖女については、様々な噂があったらしい。
ただ、『醜聞厳禁』の上流貴族社会。
余計なことを言えば即、上の方から圧力がかかるので、自分達を守るには何も言わないことが暗黙のルールなのだ。
「それで……リーゼロッテは、そのロビンをどうしたいのかしら?」
「さすが、お祖母様! ロビンを、聖女アニエス様の従僕に押し上げたいのです」
「平民で孤児だった子を……?」
「はい、そうです」
「リーゼロッテ……。あなたは私を過信しているのではないかしら?」
「お祖母様でも――それは難しいことでしょうか?」
リーゼロッテは真っ直ぐにブランディーヌを見る。
ブランディーヌなら出来ると信じて疑わないリーゼロッテに、思わず笑ってしまう。
「明日、ロビンを屋敷に連れてきなさい」
「お祖母様、ありがとう存じます。実は……もう一つお願いが」
リーゼロッテは、自分が辺境伯領に帰ってしまった後、アニエスに侍女を付けてあげたかった。
あの軟禁状態の離宮で、ろくに話し相手も居ないのは精神衛生上良くないと思ったからだ。
「そうね……。確か、離宮での使用人の募集はあった筈よ」
つまり、上級使用人に応募する貴族がいないのだ。
給金が安いのか、待遇が悪いのか……平民上がりの聖女に仕えたくないのかは分からない。
「伯爵邸に、ちょうど良い子が居たわね」
「あっ!」
リーゼロッテは思い出した。
潜入用のエプロンを調達して来てくれた、ブランディーヌをリスペクトしている押しかけ侍女を。
田舎の男爵家の四女のブリジット。
独特の価値観の持ち主で、貴族的な政略結婚をさせられるくらいならと、さっさと実家を捨ててしまう豪胆さの持ち主。
ブランディーヌを尊敬していて、侍女としては完璧だった。
今回の件を知れば、離宮に潜入……元い、転職を喜んでするだろう。
「では、そちらも何とかしておきましょう」
勝手に侍女をやっているリリーと違い、正式なルートでの侍女なら安心して任せられる。
(お祖母様って、本当に凄い方だわ……)
◇◇◇
問題は――。
翌日から、やたらとルイスが離宮へやって来るようになった。
(お父様……お仕事は?)
最初は、アニエスの話し相手になる為にやって来ているのだと思っていたのだが。
徐々にリリーに話しかけることが増えてきた。
そして、何故か聖女アニエスは、ルイスがリリーに恋をしていると喜んで応援している。
アニエスは、ルイスの良い所や仕事ぶりをリリーに話して、色々と盛り上げようとしてくれるのだが……侍女が二人の会話に入る訳にはいかない。
(そりゃ、お父様に好きな人が出来て幸せを望むなら、私だって応援したいわよっ。……相手が、もうすぐ9歳の娘じゃなかったらね!)
ルイスとアニエスが楽しそうに会話している横で、リーゼロッテとテオは念話する。
『中身は大人なのだから、問題無いだろう? 義理の娘なのだしな』
『……問題大有りでしょうが! お父様は、この姿のリリーに惹かれているのよ。本当の私……リーゼロッテにではないのよ』
自分で言って、ちょっと悲しくなる。
『人間とは、本当に面倒な生き物だ……』
ふと視線を感じた方を見ると、ルイスがリリーを見詰めていた。目が合うと、美しい顔立ちにキラキラした笑みを浮かべる。
一応、侍女らしく微笑み返しておくが……。
(……くっ! これは、非常にマズイ。このままいったら、確実に私は……落ちる)
――そんな心理的葛藤の中。
ルイスと入れ替わりに、新たな来客がやって来た。
「司教様! いらして下さったのですね!」
アニエスは、嬉しそうに言った。
温厚そうな如何にも聖職者らしい人物は、二人のお供を連れてやって来た。
アニエスは、司教を随分と信頼しているみたいだった。
もしかしたら、この人が聖女としてアニエスを見出したのかもしれないと、直感的に思った。
どうやら司教がやって来たのは、近々行われる式典で、聖女としてアニエスがやらなければいけない祈りの指導の為だった。
侍女として、目立たないようにお茶の準備をして下がろうとした時だった。
お供の一人が、リリーを見て真っ青になったのだ。
気のせいかとも思ったが、少しだけ近づくと……後退り完全にリリーに怯えていた。
あまりにも様子がおかしいので、軽くお辞儀をしてその場から離れ、こっそり観察することにした。
(……あの反応)
この、リリーの姿を見て反応をしたのは――そう、リーゼロッテの母親であるエディットを知っている人間だ。
母エディットは、結婚して辺境伯領へ嫁ぐまで、王都のブランディーヌの所に居たのだから、王都に知り合いもいるだろう。
だが、エディットとリリーは年齢も違うし、見た目以外の共通点が無い。まず、他人の空似だと思う筈だ。
(だというのに……)
あのお供は、キョロキョロと不安そうに見ている。明らかに挙動不審だった。
(まだ、怯えている。まるで、お化けか幽霊でも見たかの様だわ。……幽霊、ね)
確信は無いが、あのお供の男が母親の死に何か関係があるような気がしてならない。
――王都に居られるのは、あと三日。
取り敢えず、この教会関係者達を調べてみることにした。
ブランディーヌはため息混じりに言った。
どうやら一部の貴族の間では、王族と教会の関係性や聖女については、様々な噂があったらしい。
ただ、『醜聞厳禁』の上流貴族社会。
余計なことを言えば即、上の方から圧力がかかるので、自分達を守るには何も言わないことが暗黙のルールなのだ。
「それで……リーゼロッテは、そのロビンをどうしたいのかしら?」
「さすが、お祖母様! ロビンを、聖女アニエス様の従僕に押し上げたいのです」
「平民で孤児だった子を……?」
「はい、そうです」
「リーゼロッテ……。あなたは私を過信しているのではないかしら?」
「お祖母様でも――それは難しいことでしょうか?」
リーゼロッテは真っ直ぐにブランディーヌを見る。
ブランディーヌなら出来ると信じて疑わないリーゼロッテに、思わず笑ってしまう。
「明日、ロビンを屋敷に連れてきなさい」
「お祖母様、ありがとう存じます。実は……もう一つお願いが」
リーゼロッテは、自分が辺境伯領に帰ってしまった後、アニエスに侍女を付けてあげたかった。
あの軟禁状態の離宮で、ろくに話し相手も居ないのは精神衛生上良くないと思ったからだ。
「そうね……。確か、離宮での使用人の募集はあった筈よ」
つまり、上級使用人に応募する貴族がいないのだ。
給金が安いのか、待遇が悪いのか……平民上がりの聖女に仕えたくないのかは分からない。
「伯爵邸に、ちょうど良い子が居たわね」
「あっ!」
リーゼロッテは思い出した。
潜入用のエプロンを調達して来てくれた、ブランディーヌをリスペクトしている押しかけ侍女を。
田舎の男爵家の四女のブリジット。
独特の価値観の持ち主で、貴族的な政略結婚をさせられるくらいならと、さっさと実家を捨ててしまう豪胆さの持ち主。
ブランディーヌを尊敬していて、侍女としては完璧だった。
今回の件を知れば、離宮に潜入……元い、転職を喜んでするだろう。
「では、そちらも何とかしておきましょう」
勝手に侍女をやっているリリーと違い、正式なルートでの侍女なら安心して任せられる。
(お祖母様って、本当に凄い方だわ……)
◇◇◇
問題は――。
翌日から、やたらとルイスが離宮へやって来るようになった。
(お父様……お仕事は?)
最初は、アニエスの話し相手になる為にやって来ているのだと思っていたのだが。
徐々にリリーに話しかけることが増えてきた。
そして、何故か聖女アニエスは、ルイスがリリーに恋をしていると喜んで応援している。
アニエスは、ルイスの良い所や仕事ぶりをリリーに話して、色々と盛り上げようとしてくれるのだが……侍女が二人の会話に入る訳にはいかない。
(そりゃ、お父様に好きな人が出来て幸せを望むなら、私だって応援したいわよっ。……相手が、もうすぐ9歳の娘じゃなかったらね!)
ルイスとアニエスが楽しそうに会話している横で、リーゼロッテとテオは念話する。
『中身は大人なのだから、問題無いだろう? 義理の娘なのだしな』
『……問題大有りでしょうが! お父様は、この姿のリリーに惹かれているのよ。本当の私……リーゼロッテにではないのよ』
自分で言って、ちょっと悲しくなる。
『人間とは、本当に面倒な生き物だ……』
ふと視線を感じた方を見ると、ルイスがリリーを見詰めていた。目が合うと、美しい顔立ちにキラキラした笑みを浮かべる。
一応、侍女らしく微笑み返しておくが……。
(……くっ! これは、非常にマズイ。このままいったら、確実に私は……落ちる)
――そんな心理的葛藤の中。
ルイスと入れ替わりに、新たな来客がやって来た。
「司教様! いらして下さったのですね!」
アニエスは、嬉しそうに言った。
温厚そうな如何にも聖職者らしい人物は、二人のお供を連れてやって来た。
アニエスは、司教を随分と信頼しているみたいだった。
もしかしたら、この人が聖女としてアニエスを見出したのかもしれないと、直感的に思った。
どうやら司教がやって来たのは、近々行われる式典で、聖女としてアニエスがやらなければいけない祈りの指導の為だった。
侍女として、目立たないようにお茶の準備をして下がろうとした時だった。
お供の一人が、リリーを見て真っ青になったのだ。
気のせいかとも思ったが、少しだけ近づくと……後退り完全にリリーに怯えていた。
あまりにも様子がおかしいので、軽くお辞儀をしてその場から離れ、こっそり観察することにした。
(……あの反応)
この、リリーの姿を見て反応をしたのは――そう、リーゼロッテの母親であるエディットを知っている人間だ。
母エディットは、結婚して辺境伯領へ嫁ぐまで、王都のブランディーヌの所に居たのだから、王都に知り合いもいるだろう。
だが、エディットとリリーは年齢も違うし、見た目以外の共通点が無い。まず、他人の空似だと思う筈だ。
(だというのに……)
あのお供は、キョロキョロと不安そうに見ている。明らかに挙動不審だった。
(まだ、怯えている。まるで、お化けか幽霊でも見たかの様だわ。……幽霊、ね)
確信は無いが、あのお供の男が母親の死に何か関係があるような気がしてならない。
――王都に居られるのは、あと三日。
取り敢えず、この教会関係者達を調べてみることにした。
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