転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜
12.潜入中
(一体、この子に何が起こったら、あんな大人に成長するのかしら?)
テオと無邪気に遊ぶアニエスを見ると、不思議でしょうがない。
リーゼロッテが見つかった直後、アニエスはテオにも気が付いてしまったのだ。
まるで小さな子供が、仔犬を発見した時のように……テオはすっかり離してもらえなくなった。
勿論、離宮内に動物を入れるのはいけないことだと理解してもらった上で、リリーが居る時だけ内緒で遊んで良いと伝えた。
他の人に見つかれば、テオは連れて行かれると話して聞かせたので、絶対に誰にも言わないと約束してくれた。
何故――。
リーゼロッテがこうもすんなりと、リリーとして侍女になっているのか。
それは、聖女とは名ばかりで、アニエスは王族から大切にされていない存在だったからだ。
アニエスの住まう離宮には、大まかな仕事をしてくれる平民上がりの下級使用人は居ても、ちゃんとした侍女は付いていなかった。
そのせいか、離宮で働く使用人達は、上級使用人である侍女や従者についてあまり把握していない。
来客などがあり、聖女として迎えなければならない時は、宮廷に仕えている侍女等が臨時にやって来るのだ。
その時だけ、リリーは隠れておけば問題ない。
ある意味自由だが、軽い軟禁……。子供には、離宮は寂しくつまらない場所だろう。
今まで話し相手が居なかったせいか、アニエスは何でもリリーに話してくれた。
話を聞けば聞くほど、切なくなってしまう。
どうやらアニエスは孤児で、たまたま珍しい光属性の魔力があったらしい。
テオやリーゼロッテが近付いて、ようやく感知できる程度の力。
それを、教会側が利用し聖女に仕立て上げた。
つまりアニエスは、ただの教会の駒……そんなところだ。
癒しなどは行えても、国全体を守る結界なんて到底張れるわけがなかった。
(もしかしたら……)
近年この国で聖女と呼ばれた人達は、国民に安心感を与える為だけに、王族と教会が結託して作り上げた、お飾りだったのかもしれない。
そう考えれば、この聖女アニエスへの扱いが合点がいく。これが、貴族の娘だった場合は、もう少し良い待遇だっただろう。
(私とテオが居られるのは、ほんの数日だけ……。この状況、何とか出来ないかしら?)
こんな状態が続けば、アニエスは将来……一周目で出会った残念な聖女になってしまう。
(あれ? そう言えば、お父様は国王と聖女様に呼ばれたって……)
――と、その時。
トントンッと、扉がノックされ宮廷からの侍女が、来客を連れてやって来た。
リーゼロッテはお茶の準備に下がり、隣の部屋から様子を窺った。
「……ルイス! 来てくれたのですね!」
宮廷からの侍女が下がると、アニエスは嬉しそうに声をかけた。
(やばっ! このタイミングで、お父様が来るなんてっ)
テオもさっさと隠れている。
「アニエス様、お招き頂きありがとうございます。お変わりありませんか?」と、ルイスは優しく声をかけた。
多分だが、ルイスは聖女の状況を知っていたのだろう。
だから、王都を離れてもアニエスを心配していたのかもしれない。
アニエスは、ルイスの問いかけに嬉しそうに頷いた。
「国王陛下に、ルイスが王都に来た時は離宮にも寄ってもらえるように、お願いしたの! 来てくれて嬉しいわ!」
リーゼロッテは侍女として、二人にお茶を準備する。
「そうだわ、ルイス。侍女のリリーよ!」
まるで、親友でも紹介するかの様に、アニエスはルイスにリリーを紹介した。
丁寧にお辞儀をしたリリーを見たルイスは、硬直したかのように――リリーを凝視したまま表情を強張らせた。
(な、何っ!? まさか、気付かれた?)
冷や汗が流れる。
「……リリーは、新しい侍女なのですか?」
「そうよ、ルイス! リリーはとっても綺麗でしょ!」
「はい。……知り合いに、とてもよく似てるので少々驚いてしまいました」
「まあ! それって、ルイスの恋人かしら?」
アニエスは瞳をキラキラさせながら尋ねた。女の子は恋話が好きなのだ。
ルイスは苦笑して首を横に振り、違う話題に上手く切り替えてアニエスを楽しませた。
リーゼロッテは、アニエスに「恋人」かと聞かれたルイスの表情が、一瞬とても苦しそうになったのを見逃さなかった。
この姿を見た、ブランディーヌは母エディットに似ていると言っていた。
(ルイスお父様って……お母様のことが、好きだった? だから、ずっと独身? いや、まさかねぇ……)
その後も、ルイスとアニエスは談笑していたが。時折、リリーに向けられるルイスの視線を感じた。
侍女として、ボロが出ないように必死なリーゼロッテにとっては迷惑でしかない。
(お願い、あんまりこっち見ないで……)
これが他人で、本当の侍女ならば、美貌の辺境伯にメロメロになっていただろう。
暫くしてルイスが帰ると、とにかくホッとした。
そんなリリーに、アニエスは少し興奮しながら話しかけた。
「ねえ、リリー。ルイスったら、絶対リリーのことを好きになっちゃったのよ! 私も好きな人が居るから、わかるのよっ!」
アニエスは、唐突にとんでもないことを暴露した。
テオと無邪気に遊ぶアニエスを見ると、不思議でしょうがない。
リーゼロッテが見つかった直後、アニエスはテオにも気が付いてしまったのだ。
まるで小さな子供が、仔犬を発見した時のように……テオはすっかり離してもらえなくなった。
勿論、離宮内に動物を入れるのはいけないことだと理解してもらった上で、リリーが居る時だけ内緒で遊んで良いと伝えた。
他の人に見つかれば、テオは連れて行かれると話して聞かせたので、絶対に誰にも言わないと約束してくれた。
何故――。
リーゼロッテがこうもすんなりと、リリーとして侍女になっているのか。
それは、聖女とは名ばかりで、アニエスは王族から大切にされていない存在だったからだ。
アニエスの住まう離宮には、大まかな仕事をしてくれる平民上がりの下級使用人は居ても、ちゃんとした侍女は付いていなかった。
そのせいか、離宮で働く使用人達は、上級使用人である侍女や従者についてあまり把握していない。
来客などがあり、聖女として迎えなければならない時は、宮廷に仕えている侍女等が臨時にやって来るのだ。
その時だけ、リリーは隠れておけば問題ない。
ある意味自由だが、軽い軟禁……。子供には、離宮は寂しくつまらない場所だろう。
今まで話し相手が居なかったせいか、アニエスは何でもリリーに話してくれた。
話を聞けば聞くほど、切なくなってしまう。
どうやらアニエスは孤児で、たまたま珍しい光属性の魔力があったらしい。
テオやリーゼロッテが近付いて、ようやく感知できる程度の力。
それを、教会側が利用し聖女に仕立て上げた。
つまりアニエスは、ただの教会の駒……そんなところだ。
癒しなどは行えても、国全体を守る結界なんて到底張れるわけがなかった。
(もしかしたら……)
近年この国で聖女と呼ばれた人達は、国民に安心感を与える為だけに、王族と教会が結託して作り上げた、お飾りだったのかもしれない。
そう考えれば、この聖女アニエスへの扱いが合点がいく。これが、貴族の娘だった場合は、もう少し良い待遇だっただろう。
(私とテオが居られるのは、ほんの数日だけ……。この状況、何とか出来ないかしら?)
こんな状態が続けば、アニエスは将来……一周目で出会った残念な聖女になってしまう。
(あれ? そう言えば、お父様は国王と聖女様に呼ばれたって……)
――と、その時。
トントンッと、扉がノックされ宮廷からの侍女が、来客を連れてやって来た。
リーゼロッテはお茶の準備に下がり、隣の部屋から様子を窺った。
「……ルイス! 来てくれたのですね!」
宮廷からの侍女が下がると、アニエスは嬉しそうに声をかけた。
(やばっ! このタイミングで、お父様が来るなんてっ)
テオもさっさと隠れている。
「アニエス様、お招き頂きありがとうございます。お変わりありませんか?」と、ルイスは優しく声をかけた。
多分だが、ルイスは聖女の状況を知っていたのだろう。
だから、王都を離れてもアニエスを心配していたのかもしれない。
アニエスは、ルイスの問いかけに嬉しそうに頷いた。
「国王陛下に、ルイスが王都に来た時は離宮にも寄ってもらえるように、お願いしたの! 来てくれて嬉しいわ!」
リーゼロッテは侍女として、二人にお茶を準備する。
「そうだわ、ルイス。侍女のリリーよ!」
まるで、親友でも紹介するかの様に、アニエスはルイスにリリーを紹介した。
丁寧にお辞儀をしたリリーを見たルイスは、硬直したかのように――リリーを凝視したまま表情を強張らせた。
(な、何っ!? まさか、気付かれた?)
冷や汗が流れる。
「……リリーは、新しい侍女なのですか?」
「そうよ、ルイス! リリーはとっても綺麗でしょ!」
「はい。……知り合いに、とてもよく似てるので少々驚いてしまいました」
「まあ! それって、ルイスの恋人かしら?」
アニエスは瞳をキラキラさせながら尋ねた。女の子は恋話が好きなのだ。
ルイスは苦笑して首を横に振り、違う話題に上手く切り替えてアニエスを楽しませた。
リーゼロッテは、アニエスに「恋人」かと聞かれたルイスの表情が、一瞬とても苦しそうになったのを見逃さなかった。
この姿を見た、ブランディーヌは母エディットに似ていると言っていた。
(ルイスお父様って……お母様のことが、好きだった? だから、ずっと独身? いや、まさかねぇ……)
その後も、ルイスとアニエスは談笑していたが。時折、リリーに向けられるルイスの視線を感じた。
侍女として、ボロが出ないように必死なリーゼロッテにとっては迷惑でしかない。
(お願い、あんまりこっち見ないで……)
これが他人で、本当の侍女ならば、美貌の辺境伯にメロメロになっていただろう。
暫くしてルイスが帰ると、とにかくホッとした。
そんなリリーに、アニエスは少し興奮しながら話しかけた。
「ねえ、リリー。ルイスったら、絶対リリーのことを好きになっちゃったのよ! 私も好きな人が居るから、わかるのよっ!」
アニエスは、唐突にとんでもないことを暴露した。
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