ほっとけないよ?

清水レモン

中の人

 自分オレにも彼女にも、誰かに操られているみたいな雰囲気を強烈に感じた。
 なんだろうこの違和感。得体の知れない感覚。

 「ねえ、知ってる?」
 彼女がテーブルに視線を落としたまま話す、
 「わたしたちって、じつは単なる端末アバターで、遠い惑星ほしで中の人が操作しているんだって」
 
 おれは納得したから「なるほど。そういうことか」と答えた。

 すると彼女は目を大きくさせて言う「中の人って…わかる? わかるの?」

 「わかるってなにが」

 「だから中の人、中の人よ、中の人がいて私たちを操作していて」

 「うん」おれは答える「そうじゃないかなって思うときがある」

 「うわあ」
 本気で驚いているような表情だ。

 「そっちが言ってきたのにその驚きようときたら…なんか不思議すぎて笑えるぞ?」

 「だって、こういう話するとみんないつも」

 「そういうことか」

 うん、と黙って彼女うなずく、おれを見たまま紅茶を静かにすするように飲む。遠くでチリーンと呼び鈴。急に静まり、急に雑踏感あふれ、また静まる。

 「言われる…か」

 ヘンだとか変わってるとか、なんなら「おかしい」くらいのことを。
 おれは声に出さずに言う、するとまるできこえたみたいに彼女が言う、

 「ええ。そう。そのとおりよ」

 「だね」

 「シュートはどこまでなにを知ってるの?」

 彼女がふざけているんじゃないことは、よくわかる。
 もし仮に、おれをからかってるんだとしたら、それはそれでいい。のろうじゃないか。むしろ、彼女の空想に乗って楽しみたいくらいだよ。

 「知ってるっていうよりね」おれは正直に言う、

 「思い出したんだよ」

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