ほっとけないよ?

清水レモン

瞳孔

 「まあ、あらためまして。
  おれは小早川秀人こばやかわしゅうと
  香桜学園かざくらがくえん三年」
 おれがしゃべりだすと、彼女エリカはさっきより細かくウンウンウンウンうなづきながら聞いている。聞いていた、が、
 「趣味は…」と言いかけたところで、

 「私は浮嶋絵梨果うきしまえりか御所女学院ごせじょがくいん三年。生徒会にいたけど引退してヒマしてます。シュートは部活とか委員会とかは、やってるの」

 もう呼び捨てファーストネームかよ。
 「新聞部、体育祭実行委員、どっちも引退してご隠居の身です」

 「三年生だとそういうものよね」

 そういうものです。
 「生徒会ではどんなことしてたんだい」

 「だいたいいつも怠けてたんだい、ってトコかしら」

 「つまり…会長さんか」

 「なんでそうなるの」と彼女が笑った「どういうイメージでそうなったのか興味あるなあ。私がやってたのは会計よ。部費とか学校内の予算のこととか決めてくおしごと」

 「ふうん。将来は税理士か会計士? 目指してるとか」

 「だったらあなたは新聞記者ですか」

 「あ、ゴメン。そういうことか、そうなるよな。
  いや、新聞部で新聞作ってるのは好きだったけど記者になりたいわけじゃない。むしろ別の仕事につきたいよ」

 「でも言われません? 新聞部ふうんそうかあ将来はマスコミ志望だな!? なんて」

 思わず笑った、
 「すごいね。まるでその場にいて見て聞いてたみたい。そう言われたことあるよ」

 おれは思った、
 『意外とテキパキしゃべるんだな。
  滑舌かつぜつもいい。聞き取りやすい。
  頭脳明晰あたまのいいお嬢様ってとこかな。
  だったらなおのこと今朝の失礼はびておかなくちゃだな』

 「すると将来の夢とかあるの? …ですか」
 まだ注文したの来ませんねえ、みたいな視線を奥のほうに飛ばしながら彼女が質問してくる。さっきよりも店内が明るくなったような気がした。

 「ある」言い切ってみた「おれは作家になる」
 高校の進路希望で提出したのと同じ言葉だ。

 「サッカー?」
 彼女の目ひときわ黒い瞳孔どうこうが変化するのがわかった。

コメント

コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品