ほっとけないよ?

清水レモン

どういう意味

 「自己紹介って、めんどくさいよな?
  名前と住んでる街を言うだけならともかく。
  なにが趣味? 好きなことは。
  あからさまではないにしろ好きな人は?
  とかさ。
  スポーツ、芸能人、食べ物、なんならクラスメイト。
  いったいどこまでどう言えばいいのかわからなくなるよ」

 おれは少し早口に言う。
 すると、

 「自己紹介でいちばん重要なのは、自分で自分のことを言うところ。
  名前も住所も名簿を見ればわかる。
  わかるんだけど、それを自分で言うのが大切なわけ。
  お見合いなんてそうでしょ。
  もともと写真を見せられてるし趣味だの経歴だの情報は調べあげられ報告されてるわけだし。でもそれを本人の口から言って欲しいわけよ。
  ちゃんと本人の口から言って欲しい」

 なるほど。まあたしかに、そうか、
 「そうだよな。
  本人が言うってところが信憑性につながるっていうか」

 「経歴なんていくらでも嘘を書けるもの」

 「書くのと言うのは別ってことか。
  言ってる本人の顔色とか表情とかで、同じ内容でもイメージ変わることあるしね」

 「なんなら声も。どういうトーンでしゃべって、どういうスピード。
  データが同じでも、意味合いがガラリと変わるわ」

 「けっこうするどいこと言うんだね? ええと」
 わざと言葉おれは濁らせた。

 「エリカよ」

 「エリカさん」

 「はい」

 「ちゃんづけのほうがいいですか」

 「できれば」

 そうなんだ。

 「ええと」と彼女が言いよどんだので、

 「エリカちゃん、おれはシュート。くんとかいらないから」

 「つまりファーストネーム呼びご希望。英語圏な感じね」

 「そうなのかな。まあ、いいや」

 「だったら私も同じでお願いします」

 おれは脳内で繰り返す。ひとりごとのように彼女の言葉を。だったら私も同じでお願いします?
 ん。どういう意味。
 
 まあ、そういう意味そのまんまだろう。だよな。

 

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