ほっとけないよ?

清水レモン

やらかしまくれ

 いつものことでは、あるけれど。
 おれは、やらかす。
 とにかく、どうしようもない。やらかしてしまう。
 冷静に考えてみれば今朝だってそうさ。
 
 『なんで見ず知らずの女の子に、しかも体を触ってしまうとか。
  いやまあ、直接じゃなくて服のうえからだけど。だけど、なんの断りもなく。
  そうだよそうだよ、そうなんだよ。おれ、相手の気持ちも確かめないで』

 いきなりなんなんだろうね、おれ。
 で、こうしてそのときの彼女と偶然バッタリこんな思いがけないところで再会して。いまこれから参拝するところ。参道を歩きながら反省モード。しまった、おれまた、やらかしたよな。

 いまは、いい。彼女に怒鳴りつけられたわけじゃないし。
 少なくともおれには彼女が怒ってるとか不機嫌そうには見えない。

 『こうして神社で会えたのも縁だろう。
  
  おまいりして、厄払い。

  今朝のことは許してもらおう!』

 おれは自分の都合のいいほうに願いながら隣の彼女を見る。

 すると、

 「うん」

 とハッキリ声が聞こえた。聞こえたし、唇もひらいていて『ウフフ』って。
 いや、ウフフとは言っていないのか。スマイルだけ?
 それならそれでいい!
 とりあえず、いまのところは仲イイ感じじゃないだろうか。

 『いや待て。待て待て待て。

  そもそも仲イイってどういうこと。その定義は?

  言い争っていないからって、うまくいってると思うなよ!』

 脳内で激しく叱責されてしまう。
 だよなあ、だよなあ、だよな?
 
 どうしてすぐおれはこうも自分にとって都合よく考えてしまう傾向があるのだろうか。

 パンパン!

 っと、すでにもうお賽銭箱が近い。さっきまで気づかなかったけれど先客というか他にも参拝者がいる。参拝の拍手かしわでが響き渡った。

 ふと、自然というか成りゆきというか並んで歩いているけれど、

 「もうちょっと、こっち寄って」
 と、おれは彼女の腰に手を回した。
 このまま歩き続けてしまうと、彼女ほとんど参道の中央だと思ったから。
 

 「…うん」

 「端を歩こう」

 「…」

 無言で彼女がチョットおれに近寄る、チョット肩がぶつかる。あ、という反応があるかないかのタイミングで、

 「ありがとう」
 と、おれの言葉が重なった。

 「ん?」と彼女が不思議顔。
 
 だよな、なにが『ありがとう』だよな。
 この場合もっと軽く『サンキュー』て言わなくちゃな、だよ。
 と思ったので、

 「ピース」と言いながら実際に右手でピースしてみる。

 「!」

 驚いたように見えたが気のせいかもしれない。
 彼女と並んで参道を歩き、前方にいる参拝者までまだ数歩あるぞっていう距離感で立ち止まる。
 ちら、と。彼女の様子。前を見ているな。うん。前を。
 そのとき。

 チラ。

 と、こっちを見た。

 「!」

 「…」

 しまった、なにも考えていなかった。考えもなしに観察するように見てしまった、それに気づかれたぞ気づかれたよ、いや待てこういうときどうするよ?

 おれはしらばっくれることにした。

 おれたちの番。いつもより広く感じる境内、妙に大きく見えるお賽銭箱。
 っと、いけね。用意まだだった小銭小銭っと。
 おれが財布から小銭を取り出し始めると彼女も財布を取り出しそうな雰囲気だったから、

 「どうぞ。よかったら」

 と渡した。

 「いいの?」

 「大丈夫、効果がなくなるとか、そういうのないから」

 「うん」
 

 今度はさっきよりも大きな声で聞こえる返事だった。
 いや、実際どうなんだろう。
 参拝のときの浄財って、それぞれ自分で出したほうがいいのかどうなんだ。
 そんなこと考えながら、一段あがる。
 さらに一段、すると少し幅広い空間。

 では!

 ガランガランガラン!!!

 けっこう大きめに響き渡る鈴の音。大きすぎたか。いつもと同じ感覚で縄をつかんで揺らしてしまったから。
 ちらり。彼女を見る。こっちを見ずに前を見ていた。
 シャリーン、カラコロカラーン!
 と彼女が投げた小銭がお賽銭箱の板に当たり滑って転がっていく音が響く。音を確認したのとほぼ同時に、礼、続けてもう一回、礼。
 
 パンパン!
 
 おれは二拍手。
 
 チラリとは見ないが彼女の気配を気にすると、パンパンと彼女も。

 おれは視線を動かさず、でも視界ふと貼り紙が目に留まった。

 二礼二拍手一礼。

 そう書かれている。

 『いままでこんな貼り紙あったっけ』と思いつつ、まあいいか。
 
 自分の知っているのと変わらない。間違ってないよな、と脳内で納得しつつ目を閉じた。


 
 ええと。


 予期せぬ参拝に、願うことが思い浮かばない。

 まあ、いいや。

 『いま一緒にいる子と、うまくいきます』

 と、脳内スラスラしゃべり始める、

 「ように、見守っていてください」

 うん。まあ、いいだろう。

 なあ?


 と、誰に問いかけるでもなく、相づちされるでもなく参拝を終えると、


 「ね?」

 と彼女がおれを見て。

 「ね?」
 思わずおれも声にする。

 「うん」
 なぜだろう彼女、満面の笑みだった。

 

 

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