イモ好き令嬢は嫁いで、畑仕事に精を出したい! 〜ヤンデレ夏の妖精王とツンデレ冬の妖精王の溺愛よりもイモですイモ!イモが食べたい!〜

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第24話 冬の妖精王、アルバートの視点4

 サティが目覚めてからは、一日が目まぐるしく過ぎていった。まるで常春のような世界。彼女がいるだけで屋敷が明るく、華やぐ。
 きっとそれは彼女が、春の妖精女王エーティンの生まれ変わりだからとかではなく、サティ自身の明るさからくるものだ。

 遙か昔、春の妖精女王エーティンを見たことがあるが、サティとは全く違う。儚くて、誰かが守らなければという庇護欲にかられそうな雰囲気の女性だった。
 おっとりとして、元気溌剌なサティと違う。

 彼女という人となりをみて、どうして同じ人物だと思えるだろう。
 サティの人格を全否定してエーティンだけを取り戻そうと考えたミデルは、あまりにも愚かだった。もしサティごとエーティンの一部だと認めて愛していたら──結果は違っていただろう。

 彼女に寄り添い、支えて、ささやかな望みを叶える。それだけでサティは心を開いてくれる優しくて、明るくて、自分の欲望に忠実な子だから。
 俺はそんな彼女が愛おしくて、大切だ。

 俺のことをどう思っているのか、ノワールの姿だと色々と聞くことができて楽しい。不平不満ばかりだったらどうしようと思ったが、思いのほかサティは快適に過ごしているようだった。

 やはりサティの撫でる手は最高に心地よい。
 こちらの姿のほうが沢山抱きしめてくれるし、撫でてくれるのだ。この特権を奪われるのだけは避けない──が、今度は自分の正体を明かすことができなくなりつつあった。

(ノワールは俺だと言ったら嫌われる、あるいは引かれる可能性大だな。一緒にベッドで寝てしまったし。寝間着で抱きしめられる時の感触は至福……いや、夫婦なのだから人の姿でもいずれ……じゃなくて)

 冬の妖精王である俺を怖がられていないのは、嬉しかった。それだけで充分だ、幸福だと口にしながら、数秒後には「もっと」を望む。
 サティと一緒の時間を増やしたい、一緒に暮らして、畑仕事を体験してみたい。

 サティの菓子作りを見るのは楽しい。
 新しい菓子に燃えるサティが可愛くて、愛おしくて、誰にも渡したくない。

 自分が提案した「契約結婚」でもいいと言った言葉を早々に後悔する。それだけじゃ足りないと感情が渦巻く。
 サティを妻に迎えたことで、森に宿っていたヨクナイモノは浄化できた。しかし高位だった者が呪いになった場合、この領土全てを雪で浄化する方法でしか俺は知らない。

 雪は大地の表面にこびりついた毒や呪いの泥を浄化する。それすら効果がないとなれば、相当強い恨みあるいは執着が、あの森にあるのだろう。

 なら森を閉じてしまえばいい。
 森の眷族なら森を凍結しても生き残れる──だが、サティは違う。
 それにようやく領土に戻ってきた妖精、精霊、幻獣。なにより傷ついた者たちの場所を奪うわけにも行かない。

(何もかも全てを叶えようとするのは無理だ。なら俺が代替わりをする形で呪いを引き取り俺ごと燃やせば……)

 ノワールの姿で力の一部を切り離せば、サティの傍に居続けられるかもしれない。そんな感じでシルエに話したら、もの凄く怒られて即却下された。
 それどころかサティまで夜中に起き出してきて、緊急作戦会議とか言い出す。
 思わず笑ってしまった。

『アルバート様! 私の権能が覚醒せず、そしてアルバート様が死なない方法を今すぐ、速やかに考えましょう!』

 現状は何も好転してない。でもサティがそういった瞬間に、問題が問題に感じなくなった。
 死ぬつもりも消え失せて、この先もサティと一緒に居たい。そう、「もっと」と願う気持ちが増した。


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