君の涙色の恋を、いつまでもこの胸に抱いている

月乃夢想

11

 目が覚めると、自分が泣いていることに気付いた。夢の余韻がサーッと引いていく。どんな内容の夢かは忘れてしまったけれど、沙弥が出てきたような気がする。
 きっと、昨日、雪が降ったせいだ。そして、広瀬君が沙弥の名前を口にしたから。
 沙弥の死から一年。
 私は以前に比べると、かなり無気力になった。あんなに頑張っていた委員会活動をサボるようになり、年明けには辞めてしまった。本当は途中で辞めることは出来ないんだけど、周りの人たちは、私が沙弥の死にショックを受けているのを知っているから、サボりの件も含めて特別に許してもらえた。
 勉強にも身が入らず、成績は落ちる一方だ。親も先生も、初めは何も言わなかったけれど、最近はよく説教されるようになってきた。
 一年経ったんだから、もう沙弥の死から立ち直らなきゃダメだって。
 前を向いて生きていかないと、沙弥が悲しむって。
 悲しむわけないじゃない。私は沙弥を傷付けたのだから。


 登校して自分の席に着くと、クラスの女子が数人、おずおずと近付いてきた。一年の時も同じクラスだった美奈ちゃんが、緊張を隠せないままに微笑む。
「萌花ちゃん、おはよう」
「おはよう……何か用?」
「あ、あのさ、沙弥ちゃんのことなんだけど」
 突然の沙弥の話題に、私は驚いて目を瞬かせた。
「沙弥ちゃんの事故から、もう一年経つでしょ? だから、沙弥ちゃんの家族にアルバムをプレゼントしようと思って……。それで今、沙弥ちゃんの写真を集めているんだけど、良かったら協力してくれないかな?」
「……ごめん、難しい」
 苦みが混じった声で断ると、美奈ちゃんは一瞬、悲しそうな顔をした。でも、すぐに取り繕うような笑顔に戻ると、
「ううん。こっちこそ、無理言ってごめんね。それじゃ」
 他の女子たちと連れ立って、そそくさと立ち去っていく。
「……」
 きっと、嫌な気持ちにさせたよね。
 二年になって、クラス替えがあったけれど、友達を作ろうとしなかった私は孤立している。普段は私に話し掛けてくる人なんていない。

 一年前、私は沙弥のお葬式に出られなかった。
 最後のお別れなんだから、行かないと後悔する。何度もそう自分に言い聞かせた。
 だけど、棺に横たわる沙弥を見て、彼女の死を実感してしまったら、きっと私の心が壊れてしまう。
 そのことを周りに伝えると、皆は理解してくれた。最も、私と沙弥がケンカしたままなのは誰も知らないから、ただ私が悲しみに暮れているだけだと思っていることだろう。
 実際は、私の心の中には、もっと複雑な感情が混ざり合っているというのに。

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