君の涙色の恋を、いつまでもこの胸に抱いている
5
沙弥が広瀬君を好きだと打ち明けてから、一ヶ月。私は彼の言動を目で追うようになっていた。親友の好きな人だし、やっぱり気になるよね。
その日は中央委員会の後、何人かで手分けして、プリントの束をホチキスで留め冊子にする作業をしていた。思ったよりも量があって、なかなか終わらない。
習い事や用事などで人が少しずつ減っていき……結局、後少しで終わるという時には私一人に。頑張らなきゃ!
「出来たー!」
ようやく全て終わった時には、窓の外は薄暗くなっていた。完成した冊子の束を段ボール箱に入れる。後はこれを職員室まで持っていくだけだ。
「うっ、重っ!」
ところが、段ボール箱が重すぎて、持ち上げることすら出来ない。先生に言って、代わりに運んでもらおうか……。悩む私に、委員会室の入り口から声が掛かった。
「大丈夫?」
視線を向けると、広瀬君が心配そうな表情でこっちにやってきた。
「あ、広瀬君。遅いんだね、部活帰り?」
「ああ、俺はいつもこのくらいの時間。三崎こそ、遅いよな。委員会って、こんなに時間掛かるのか?」
「ううん。今日は、これを作っていたから遅くなっただけ」
段ボール箱を指差すと、広瀬君は怪訝そうに私を見た。
「三崎一人で? 他の奴らは?」
「皆、用事があるんだって」
すると、彼はふーっとため息を吐いた。
「お人好し」
「え、何で?」
「一人で出来ることには限りがあるんだから、もっと周りを頼れよって話。こういうことは、力のある奴に任せればいい。これ、どこまで持っていくんだ?」
広瀬君は段ボール箱を軽々と持ち上げた。
「あっ、ありがとう……職員室まで頼んでもいい?」
「了解」
――優しいんだな、広瀬君。
嫌な顔一つせず運んでくれる彼の横に並んで歩きながら、心の底に好意的な感情が芽生えるのを感じた。
確かに、こんなことしてくれたら、好きになっちゃうかも……って、ダメダメ! 広瀬君は、沙弥の好きな人なんだから! それに、きっと彼は、誰にでもそうやって優しいんだよね……勘違いしないでおこう。
頭ではそう考えているのに、胸に広がる温かな想いは収まらなかった。
夏休みが終わり、始業式の日。
教室に入って、久しぶりのクラスメイトとの再会を喜ぶ。沙弥が「萌花、おはよう」と駆け寄ってきて、耳元でそっと囁いた。
「今日からまた、広瀬君を見られるから嬉しいな」
沙弥の言葉に釣られて、私は黒板前にいる広瀬君たちに目を遣った。部活で一層日に焼けた広瀬君を見た瞬間、段ボール箱を運んでくれた彼の姿が脳裏に甦って、胸が熱くなった。
「……萌花?」
広瀬君を見つめてぼんやりしている私を、沙弥が不思議そうに呼んだ。
「あっ、ごめん。何でもないよ」
あの日、広瀬君に手伝ってもらったことは、沙弥には言っていない。沙弥の気を悪くさせるかもしれないからっていうのもあるけど、あの思い出は私だけのものにしておきたかった。
まだその時は、私は自分の気持ちに気付けていなかったんだ。
その日は中央委員会の後、何人かで手分けして、プリントの束をホチキスで留め冊子にする作業をしていた。思ったよりも量があって、なかなか終わらない。
習い事や用事などで人が少しずつ減っていき……結局、後少しで終わるという時には私一人に。頑張らなきゃ!
「出来たー!」
ようやく全て終わった時には、窓の外は薄暗くなっていた。完成した冊子の束を段ボール箱に入れる。後はこれを職員室まで持っていくだけだ。
「うっ、重っ!」
ところが、段ボール箱が重すぎて、持ち上げることすら出来ない。先生に言って、代わりに運んでもらおうか……。悩む私に、委員会室の入り口から声が掛かった。
「大丈夫?」
視線を向けると、広瀬君が心配そうな表情でこっちにやってきた。
「あ、広瀬君。遅いんだね、部活帰り?」
「ああ、俺はいつもこのくらいの時間。三崎こそ、遅いよな。委員会って、こんなに時間掛かるのか?」
「ううん。今日は、これを作っていたから遅くなっただけ」
段ボール箱を指差すと、広瀬君は怪訝そうに私を見た。
「三崎一人で? 他の奴らは?」
「皆、用事があるんだって」
すると、彼はふーっとため息を吐いた。
「お人好し」
「え、何で?」
「一人で出来ることには限りがあるんだから、もっと周りを頼れよって話。こういうことは、力のある奴に任せればいい。これ、どこまで持っていくんだ?」
広瀬君は段ボール箱を軽々と持ち上げた。
「あっ、ありがとう……職員室まで頼んでもいい?」
「了解」
――優しいんだな、広瀬君。
嫌な顔一つせず運んでくれる彼の横に並んで歩きながら、心の底に好意的な感情が芽生えるのを感じた。
確かに、こんなことしてくれたら、好きになっちゃうかも……って、ダメダメ! 広瀬君は、沙弥の好きな人なんだから! それに、きっと彼は、誰にでもそうやって優しいんだよね……勘違いしないでおこう。
頭ではそう考えているのに、胸に広がる温かな想いは収まらなかった。
夏休みが終わり、始業式の日。
教室に入って、久しぶりのクラスメイトとの再会を喜ぶ。沙弥が「萌花、おはよう」と駆け寄ってきて、耳元でそっと囁いた。
「今日からまた、広瀬君を見られるから嬉しいな」
沙弥の言葉に釣られて、私は黒板前にいる広瀬君たちに目を遣った。部活で一層日に焼けた広瀬君を見た瞬間、段ボール箱を運んでくれた彼の姿が脳裏に甦って、胸が熱くなった。
「……萌花?」
広瀬君を見つめてぼんやりしている私を、沙弥が不思議そうに呼んだ。
「あっ、ごめん。何でもないよ」
あの日、広瀬君に手伝ってもらったことは、沙弥には言っていない。沙弥の気を悪くさせるかもしれないからっていうのもあるけど、あの思い出は私だけのものにしておきたかった。
まだその時は、私は自分の気持ちに気付けていなかったんだ。

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