君の涙色の恋を、いつまでもこの胸に抱いている

月乃夢想

4

 五月も終わりに近付いた頃から、学校で周りの人たちを見て気付くことがあった。
「カップルが増えたなぁ……」
 昼休みや放課後に、仲睦まじく一緒にいる男女の姿が多くなった。皆、いつの間に付き合い出したんだろう。
 クラスでも、付き合って間もないカップルが何組かいる。お揃いの指輪を着けて楽しそうに喋る姿は、本当に羨ましい。
「あ~あ、私も彼氏欲しいなぁ!」
 昼休み。窓辺で語らうカップルを眺めながら、私はため息を吐いた。残念ながら、私も沙弥も彼氏はいない。
「萌花は、好きな人いないの?」
 沙弥に聞かれて、私は力なく頷いた。
「うん……。クラスや委員会で男子と話す機会はあるけど、そんなに親しくないし、好きって思える程の人は、まだいないかな。沙弥は?」
 何の気なしに聞いてみると、沙弥は頬をサッと赤く染めて俯いた。
「えっ! そのリアクションは、いるってこと? 誰だれ?」
「しっ! 萌花、声大きいよ!」
 興奮する私を、沙弥が慌てて嗜める。てっきり、沙弥も好きな人がいないんだと思ってたのに……。
 沙弥は周囲を注意深く確認してから、そっと私に耳打ちした。
「広瀬悠馬君」
「……へぇ~!」
 それは、私も知っているクラスメイトの名前だった。
 広瀬君は女子にモテる。整った顔立ちと長身は人目を引くし、他の男子みたいに騒いだりしなくて、落ち着きがあるからカッコいい。所属しているサッカー部でも、期待の新人と評価されているそうだ。
 だけど、私にはそのクールな雰囲気が、どこか近寄りがたく感じた。私は中央委員ということもあって、クラスの人たち全員となるべく話すようにしている。だけど、彼はそんなに喋る方じゃないから、何を考えているのかよく分からなかった。
 今は周りに人がいるから、後でじっくり話を聞かせてもらうことにして、テンション高く昼休みが終わった。

 放課後のドーナツショップで、私は沙弥から広瀬君を好きになったきっかけを聞いた。
 春先、沙弥が登校中に体調を崩したことがあった。フラフラとよろける沙弥に、偶然後ろを歩いていた広瀬君が声を掛けて、身体を支えて保健室まで連れていってくれたらしい。
「迷惑掛けてごめんねって謝ったら、『俺は部活で、具合悪い人を助けるのは慣れてるから、安心して。ちゃんと休めよ』って言ってくれたの。その瞬間に、広瀬君のことを好きになっちゃった」
「きゃ~! そんなことがあったんだ~! それは惚れるね!」
 広瀬君の意外な一面に、私は驚くとともにときめいた。なるほどね、イケメンなだけじゃなくて、照れずに女子にそんなことが言えるんだから、モテるわけだ。
 沙弥は困ったように目を伏せた。
「だけど、自分から広瀬君に話し掛けるなんて、出来なくて……」
「確かに、広瀬君はあまり女子と話す方じゃないもんね……でも、私、沙弥の恋を応援するよ!」
 沙弥は微笑んで、「ありがとう。萌花に打ち明けて良かった」と言ってくれた。
 この時点では、私は心から沙弥を応援するつもりだったんだ。
 それなのに、私は……。

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