昼が夜の王となるまで
ファンタジー

完結:1話

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昼が夜の王となるまで

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  • あらすじ

     「あー、夏休みだってのに、プロジェクトの締め切りに追われて最悪だよ。」
     
      私、鈴木 昼(すずき ひる)は、明るい太陽の下でイライラしながら歩いている。
     
      大学2年生の夏、突如として発表会に向けたプロジェクトで手をこまねいていた。特にデザインの部分が難しく、指導教授から追加のサポートをするよう言われてしまった。
     
      他にも3人の仲間が同じく追加の作業を抱えているようで、それぞれの分野で頭を悩ませている。
     
     「これから2週間、夜遅くまでみっちり作業だなんてどうかしてるよなー。」
     
      優秀な大学である星新大学に通う私は、デザイン以外はまずまずの実力(と思っている)を持っているが、デザインが苦手だ。
     
      だって生きてく上で使わなくね?
     
     「言い訳だけどねー。はぁー……。」
     
      20分ほど歩くと、大学に到着する。デザイナーズブランドの下に着た、友達が買ってくれたおしゃれな服に汗がにじんできていた。
     
      10分前に部屋に入った私は、不本意ではあるがデザインソフトとノートパソコンを机に広げ、指導教授を待つ。スマートフォンを使ってはいけないということで、家から持ってきた仕事用の文献を読みながら時間をつぶしていると、
     
      ガラガラガラッ……
     
      部屋のドアが開いた。
     
      入ってきたのは指導教授と……誰だ?
     
      指導教授の後ろには、艶やかな赤いドレスに身を包み、このプロジェクトに相応しくないほど美しい容姿をした見知らぬ女性がいた。
     
      その女性は指導教授の右肩に右手を乗せ、こちらを薄ら微笑みを浮かべ、見つめていた……。
     
      何故か指導教授の目は焦点が合っておらず、こちらを見ているようでどこか別の場所を見ているようだった。
     
      なんかやばくないかこれ……。
     
      心の中で逃げる準備をする。
     
      幸い夏の日射を避け、窓から遠く出口に近い席に座っていた。
     
      ふいに指導教授が口を開く。
     
     「鈴木ぐん……ぎょうヴぁデザインし、じます。センスのない子はいでぃまぜん!」
     
      汗をかきながら厳しい声だった。
     
      明らかに様子がおかしい。
     
      私は恐怖を感じ、逃げ出そうと席を立った。
     
     「あら、プロジェクトはまだ終わっていませんよ?」
     
      赤いドレスの美しい女性が、ハープを奏でたような、優雅な声で喋りかけてきた。
     
      まるで心に直接呼びかけてくるような、脳に刻み込まれるような。
     
      そんな美しさのある声だった……。
     
      直前まで走り去ろうとしていた私は、何故か席に座ってしまっていた。
     
      指導教授の右肩を掴んでいた手を離すと、指導教授は崩れるようにその場に倒れてしまった。
     
      私は駆け寄ろうとしたが体は動かない。
     
      ゆっくりとした足取りで絶世の美女が歩み寄ってくる。
     
      こ、こわい……。
     
      体が言うことをきかず、逃げたくても逃げれない。
     
      膝がガクガクと震えている。
     
      美女は私の机の前に立つと、
     
     「大丈夫ですよ? 何も怖くはありませんから。」
     
      と、世の女性なら誰でも憧れそうな微笑を浮かべた。
     
      右手をこちらにゆっくりと近づけ、私の頭に触れた。
     
     「あ……。あぁぁ……。」
     
      恐怖で自分の口から勝手に声が出る。
     
      脳が限界を迎えたのか、そこで私の意識は途切れてしまった。

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