よりによって人生で最悪な時に再会した初恋の人がじれじれの皇太子だったなんておまけに私死んだことになってましたから
29
さっきのアルベルト様の話し声は筒抜けでアルベルトが私を夜会に連れて行きたくないのだと腹を立てていたのも束の間だった。
私はアルベルトが倒れているのを見て走り寄った。
「シャルロット様、血が…旦那様の手から血が…」
アルベルト様の指先から血がしたたり落ちている。
急いで腕を見るとアルベルト様は怪我をしているらしかった。
トルーズ様も走って来てすぐに彼のサーコートを脱がせた。
その下に来ていたブレストは腕の所が裂けて血が流れ出ていた。
「旦那様、しっかりなさってください。誰がこんなことを?」
トルーズ様が怒りに震えた声で聞く。
「さっき後ろからいきなり襲われた、俺としたことが不覚だった。きっと闇隊の仕業だろう。明日の記念式典に顔を出さなければ、また何を言われるか…」
「ひどい。そんな事を誰が…」聞かなくてもわかる気がした。
私は話を聞いて腹が立った。彼は何もしていないのに…こんなことをするなんて。
思えばアルベルトは毒入りの薬湯を飲まされていたくらいだ。あの後家に押し行った賊も彼の命を狙っていたのかもしれない。
背筋に氷水が流れたみたいにぶるっと震えた。
でも今はそんな事よりアルベルト様の傷を…
「トルーズ様、急いで彼を運んでください」
アルベルト様はひとりで立てると言って、汚れないようにとダイニングルームに行った。
その間に私はヨーゼフ先生の所から育てているヨモギを取って、エキナセアを乾燥させたものを持って来た。
「アルベルト様、上着やシャツを脱いでください」
彼は傷が痛いのだろう難しそうに服を脱ぐ。私も手伝って袖をゆっくり引き抜いた。
「いやだ。下に何も着てないんですか?」
彼の胸筋や上腕二頭筋などが嫌でも目に入って思わず見惚れてしまう。
「いや、今は街中にいるし戦うときのような服装でなくてもいいから…」
彼はしどろもどろに言う。
「いえ、すみません。座って下さい」
もう余計な事でしょ。今はそんな事言ってる場合じゃ…
恥かしくて耳まで赤くなってしまう。
私は急いで傷を見る。
腕の傷は剣で切りつけられていたが、幸い傷は深くなく縫わなくても良さそうだった。
「少し沁みますが…」
「大丈夫だ。これくらいの傷なんでもない」
トルーズ様が持って来たアルコールで傷を消毒する。裂傷の傷にアルコールはかなり沁みるはずだが、アルベルト様は顔色一つ変えない。
「今度は止血のためにヨモギを傷につけます」
「ああ、説明なんかいらない。君のやることに問題がないことくらいわかっている。好きなようにやってくれて構わないから」
「はい、でも沁みると思いますので…」
「大丈夫だ。これくらい」
私は大きく裂けた傷口にヨモギを揉んで出た汁を塗る。そしてその上から今度はエキナセアの粉を傷にすりこんだ。
エキナセアは感染予防のためだ。
アルベルト様もこれにはさすがに顔をしかめた。
すごく痛いはずだから…
それが終わると私は彼の腕の傷に向かって手のひらを広げた。
何も考えていなかった。自然と体が動いて彼を少しでも楽にしてあげたいと思う。
何度もアルベルト様の傷が化膿せず治るようにと念じて魔力を送る。
あまりに必死でパワーを送ったからか、目の前で開いた裂傷が見る見るうちに塞がって行ったらしい。
「ああ…これは一体…シャルロット…傷が…」
「えっ?」
私は自分でも驚く。アルベルト様の傷はなかったみたいに完全にふさがっていた。
周りに血が付いたままだが、傷は完全に治っていた。
「うそ…私がこれを?」
自分でも信じれない。
「そうみたいだ。すごいな」
「本当にすごい力ですね。きっとシャルロット様はすごい力をお持ちなんですよ」アビーが感心しながら言った。
「私も驚きました。まるでアドリエーヌ様のようです」
トルーズ様がつぶやいた。
私は驚く。
「トルーズ様はアドリエーヌ様をご存知なんですか?」
「知っていると言ってもチラッと見ただけですが、幼いときに記念式典の時に、でも松明の火を燃え上がらせたり、小さな幼木がにょきにょき大きくなったりして、すごい魔力の持ち主だと思いました」
「じゃ、大丈夫です。わたしにそんな力はありませんから…」
お母様の事を知る人がいたとは、どきりとしたがそれは誇らしくもうれしくもあったし、私も頑張ろうって思えた。
「これで大丈夫ですね。こんなに良くなるとは思ってもいませんでしたが、良かったです。では、私はこれで…」
「ああ、助かったシャルロット。君がいてくれなかったら明日はどうなっていた事か…ありがとう」
アルベルト様がさっと私の手をつかまれた。
「もう痛くはないですか?」
「ああ、大丈夫だ」
それを知らしめるかのように私の手をぎゅっと握りしめる。
バコン!一気に心臓の鼓動が跳ね上がる。
「良かったですわ。では失礼します」
私は彼の手から逃れると慌ててダイニングルームを後にした。後ろをアビーが追って来る。
アビーがドアの前でわたしを引き留めた。
「シャルロット様、聞いてください。旦那様は本当はあなたを夜会に誘いたくてうずうずしてらっしゃるんです」
「アルベルト様が?そんなはずないです。私には無理だとおっしゃったじゃありませんか。それにあんなじれじれの男の人は嫌いです」
と言いながらも私は真っ赤になっていた。
「ですが、それは旦那様の生い立ちにも関係あって、小さなころからほんとにいわれのない中傷を受けて来られたそうですから…先祖の呪いが掛かっているとか、王になれば国を亡ぼすとか…そのせいでお父様の時にお付き合いのあった貴族の方々も離れて行ってしまわれて、宰相だったラッセル様もあの通りですし、ですがトルーズ様だけはお父上の執事をしていたオズベルト様のご子息でして、変わらず旦那様に仕えているんです」
「そうなの…でもねぇ…」
だからと言ってそんな人はたくさんいるわ。
結局彼は意気地なしって言うことよ。
「そうだ。シャルロット様から誘ってみてはいかがです?」
「いえ、悪いけどお断りするわ。彼は私を夜会に連れて行きたくないのよ。アビー私が夜会に行くことは内緒にしてね」
「ええ、わかりました。夜会には旦那様は必ず行かれますので、お楽しみということにしておきましょう。旦那様があのドレスを着たシャルロット様を見られたら腰を抜かされますよ」
アビーは楽しそうに笑った。
「そ、そうかもね。だってこのドレスはほんとに素敵だもの。アビー。ドレスがよ」
アルベルト様が夜会に来るのはわかっている事なのに、いきなりそう言われるとドキドキしてしまう。
「ええ、そう言うことにしておきましょう。明日は私が髪を結ってもいいですか?」
「いいんですか?助かるわ。ドレスを着るのも手伝ってもらっても?」
「もちろんです」
「でも…アルベルト様に見つからないかしら」
「旦那様は毎年早くに出かけられますから、お城で色々行事の支度があるのでしょうし」
「そうなの。良かったわ。もし見つかったら閉じ込められそうだもの」
「そうかもしれませんね。うふっ…」
アビーは楽しそうに笑った。
私はこの時真剣に見つかったら困ると思った。
もう、いやな男。どこまで私を困らせる気なのかしら…
それに私がほんとに好きなら…協力くらいしてくれても…
ああ…もうじれったい!
私、あんな人大っ嫌いなんだから!
私はアルベルトが倒れているのを見て走り寄った。
「シャルロット様、血が…旦那様の手から血が…」
アルベルト様の指先から血がしたたり落ちている。
急いで腕を見るとアルベルト様は怪我をしているらしかった。
トルーズ様も走って来てすぐに彼のサーコートを脱がせた。
その下に来ていたブレストは腕の所が裂けて血が流れ出ていた。
「旦那様、しっかりなさってください。誰がこんなことを?」
トルーズ様が怒りに震えた声で聞く。
「さっき後ろからいきなり襲われた、俺としたことが不覚だった。きっと闇隊の仕業だろう。明日の記念式典に顔を出さなければ、また何を言われるか…」
「ひどい。そんな事を誰が…」聞かなくてもわかる気がした。
私は話を聞いて腹が立った。彼は何もしていないのに…こんなことをするなんて。
思えばアルベルトは毒入りの薬湯を飲まされていたくらいだ。あの後家に押し行った賊も彼の命を狙っていたのかもしれない。
背筋に氷水が流れたみたいにぶるっと震えた。
でも今はそんな事よりアルベルト様の傷を…
「トルーズ様、急いで彼を運んでください」
アルベルト様はひとりで立てると言って、汚れないようにとダイニングルームに行った。
その間に私はヨーゼフ先生の所から育てているヨモギを取って、エキナセアを乾燥させたものを持って来た。
「アルベルト様、上着やシャツを脱いでください」
彼は傷が痛いのだろう難しそうに服を脱ぐ。私も手伝って袖をゆっくり引き抜いた。
「いやだ。下に何も着てないんですか?」
彼の胸筋や上腕二頭筋などが嫌でも目に入って思わず見惚れてしまう。
「いや、今は街中にいるし戦うときのような服装でなくてもいいから…」
彼はしどろもどろに言う。
「いえ、すみません。座って下さい」
もう余計な事でしょ。今はそんな事言ってる場合じゃ…
恥かしくて耳まで赤くなってしまう。
私は急いで傷を見る。
腕の傷は剣で切りつけられていたが、幸い傷は深くなく縫わなくても良さそうだった。
「少し沁みますが…」
「大丈夫だ。これくらいの傷なんでもない」
トルーズ様が持って来たアルコールで傷を消毒する。裂傷の傷にアルコールはかなり沁みるはずだが、アルベルト様は顔色一つ変えない。
「今度は止血のためにヨモギを傷につけます」
「ああ、説明なんかいらない。君のやることに問題がないことくらいわかっている。好きなようにやってくれて構わないから」
「はい、でも沁みると思いますので…」
「大丈夫だ。これくらい」
私は大きく裂けた傷口にヨモギを揉んで出た汁を塗る。そしてその上から今度はエキナセアの粉を傷にすりこんだ。
エキナセアは感染予防のためだ。
アルベルト様もこれにはさすがに顔をしかめた。
すごく痛いはずだから…
それが終わると私は彼の腕の傷に向かって手のひらを広げた。
何も考えていなかった。自然と体が動いて彼を少しでも楽にしてあげたいと思う。
何度もアルベルト様の傷が化膿せず治るようにと念じて魔力を送る。
あまりに必死でパワーを送ったからか、目の前で開いた裂傷が見る見るうちに塞がって行ったらしい。
「ああ…これは一体…シャルロット…傷が…」
「えっ?」
私は自分でも驚く。アルベルト様の傷はなかったみたいに完全にふさがっていた。
周りに血が付いたままだが、傷は完全に治っていた。
「うそ…私がこれを?」
自分でも信じれない。
「そうみたいだ。すごいな」
「本当にすごい力ですね。きっとシャルロット様はすごい力をお持ちなんですよ」アビーが感心しながら言った。
「私も驚きました。まるでアドリエーヌ様のようです」
トルーズ様がつぶやいた。
私は驚く。
「トルーズ様はアドリエーヌ様をご存知なんですか?」
「知っていると言ってもチラッと見ただけですが、幼いときに記念式典の時に、でも松明の火を燃え上がらせたり、小さな幼木がにょきにょき大きくなったりして、すごい魔力の持ち主だと思いました」
「じゃ、大丈夫です。わたしにそんな力はありませんから…」
お母様の事を知る人がいたとは、どきりとしたがそれは誇らしくもうれしくもあったし、私も頑張ろうって思えた。
「これで大丈夫ですね。こんなに良くなるとは思ってもいませんでしたが、良かったです。では、私はこれで…」
「ああ、助かったシャルロット。君がいてくれなかったら明日はどうなっていた事か…ありがとう」
アルベルト様がさっと私の手をつかまれた。
「もう痛くはないですか?」
「ああ、大丈夫だ」
それを知らしめるかのように私の手をぎゅっと握りしめる。
バコン!一気に心臓の鼓動が跳ね上がる。
「良かったですわ。では失礼します」
私は彼の手から逃れると慌ててダイニングルームを後にした。後ろをアビーが追って来る。
アビーがドアの前でわたしを引き留めた。
「シャルロット様、聞いてください。旦那様は本当はあなたを夜会に誘いたくてうずうずしてらっしゃるんです」
「アルベルト様が?そんなはずないです。私には無理だとおっしゃったじゃありませんか。それにあんなじれじれの男の人は嫌いです」
と言いながらも私は真っ赤になっていた。
「ですが、それは旦那様の生い立ちにも関係あって、小さなころからほんとにいわれのない中傷を受けて来られたそうですから…先祖の呪いが掛かっているとか、王になれば国を亡ぼすとか…そのせいでお父様の時にお付き合いのあった貴族の方々も離れて行ってしまわれて、宰相だったラッセル様もあの通りですし、ですがトルーズ様だけはお父上の執事をしていたオズベルト様のご子息でして、変わらず旦那様に仕えているんです」
「そうなの…でもねぇ…」
だからと言ってそんな人はたくさんいるわ。
結局彼は意気地なしって言うことよ。
「そうだ。シャルロット様から誘ってみてはいかがです?」
「いえ、悪いけどお断りするわ。彼は私を夜会に連れて行きたくないのよ。アビー私が夜会に行くことは内緒にしてね」
「ええ、わかりました。夜会には旦那様は必ず行かれますので、お楽しみということにしておきましょう。旦那様があのドレスを着たシャルロット様を見られたら腰を抜かされますよ」
アビーは楽しそうに笑った。
「そ、そうかもね。だってこのドレスはほんとに素敵だもの。アビー。ドレスがよ」
アルベルト様が夜会に来るのはわかっている事なのに、いきなりそう言われるとドキドキしてしまう。
「ええ、そう言うことにしておきましょう。明日は私が髪を結ってもいいですか?」
「いいんですか?助かるわ。ドレスを着るのも手伝ってもらっても?」
「もちろんです」
「でも…アルベルト様に見つからないかしら」
「旦那様は毎年早くに出かけられますから、お城で色々行事の支度があるのでしょうし」
「そうなの。良かったわ。もし見つかったら閉じ込められそうだもの」
「そうかもしれませんね。うふっ…」
アビーは楽しそうに笑った。
私はこの時真剣に見つかったら困ると思った。
もう、いやな男。どこまで私を困らせる気なのかしら…
それに私がほんとに好きなら…協力くらいしてくれても…
ああ…もうじれったい!
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