よりによって人生で最悪な時に再会した初恋の人がじれじれの皇太子だったなんておまけに私死んだことになってましたから
6
ハッとして見上げる。
うぐっ!彼は座ってもいない。
違いました。座れなかったのです。
私が数日そこに寝転んでいたから、ソファーの上には毛布がとぐろを巻いたようになっている。
またしてもわたわたと慌てる。
「もう、私ったら…昨日は遅くなってここで休んだもので」
急いでトレイをきれいに片付いたテーブルに置くと、毛布を引っ張って格闘する。
何とか押し入れに毛布を押し込んだ。
「さあ、どうぞ。座って下さい」
私は何事もなかったような顔をしてポットのお茶をカップに注ぐ。
早くお茶が飲みたいとごくりと喉が鳴る。まるで薬物依存の中毒者みたいにお茶が欲しい。
金色のお湯がトクトクとカップに注がれると、自分のカップにその上からとろーりとハチミツを垂らす。
「ハチミツはいかがですか?良かったら入れますけど」
「ええ、お願いします」
「良かったわ。このお茶には少し苦みがあるのでハチミツは欠かせないんですよ」
もぉぉぉ、何を言ってるんだろう。
私はもう一つのカップにもとろりとハチミツを垂らす。
「さあ、どうぞ」
カップの一つを彼の前に置いた。
「いただきます」
アルベルトは少し口角を持ち上げると同時にカップを持ちあげた。
その所作は優雅で見ているだけでため息が漏れた。
「うん、これいいですね。すごくおいしい。ハチミツを入れるとこんなにおいしくなるんですね。俺が作ってもらっている薬湯は苦いばかりで…」
「ええ、知ってます。でもあんなに苦いのは、何が入ってるんでしょう?」
私の体質には会わなかったのかしら?あの後気分が悪くなったのだけど。
ごく普通の会話が成立していることに違和感もなく。
これでいいのだろうか?
「さあ‥‥わかりませんが。特別にって聖女であるエリザベート様が作ってくれるので」
「まあ、聖女様が」
カロリーナが言っていたことを思い出す。
お母様は聖女だった事を。そして聖女であったがために愛する人を失ったことを。
ぐっと悲しい気持ちを押し殺す。
いえ、そんな事より、アルベルト様とその聖女様って…突然浮かんだもやもやした感情。
こんな時に…
「それはアルベルト様にはもう決まった女性がいるという事なんですよね」
もっ!私ったら何言ってるかしら。
嫉妬?まさか…
「いえ違います。エリザベート様は皇王の専属の聖女ですよ。それに皇王の娘でもあるんです。わたしが王族の端くれというだけで、エリザベート様はみんなに薬湯などを作っているんです。俺にはそんな人いるはずもありませんから」
即刻の否定にほっとする。
「すみません。余計なことを言ってしまって」
私は目を伏せてハーブティーをずずぅっと啜る。
何だろう?この気まずい雰囲気は…
いつもならお茶を飲めば心も安らぐというのに、ますます気持ちはぐしゃぐしゃになって。
アルベルトはそんな空気を察したかのように、素っ気なく一緒に出したカップケーキに手を伸ばす。
黙々とかぶりついて美味しそうに食べる。
「ほんと!このカップケーキすごくおいしいですね。あっ、すみません。あの…それでお話なんですが、カロリーナ殿にいずれ折を見てぜひわがエストラード皇国に来ていただきたいんです。あっ、でも今すぐというわけではないんです」
「あのそれはどうして?」
そもそもカロリーナは殺された。なのに彼はどう見てもその事を知っているようには見えない。
でもカロリーナを頼るって事は殺された事ち何か関係あるのかもしれない。
「はい、先にお約束願えますか?ここで聞いたことは口外しないと」
「もちろんです。魔女は人から聞いた秘密を絶対に漏らしたりはしません。ここに来る人は多かれ少なかれ人には言えない秘密を抱えている人ばかりですから」
「それを聞いて安心しました。実は私の叔父。現在の皇王ランベラートとエリザベートの事で‥‥ご協力して頂きたいと思いまして‥‥それにはかなりの魔力を持った人でないと務まらないものと思われます。それであなたが適任ではないかと聞き及びまして」
わたしはビクリとなる。
どうやら彼はとてもいい人らしいが。
これは大変なことで。
おまけに皇王が叔父さん…ということはアルベルトはかなり高貴なお方ではないですか。
皇王の事となると王宮に行くことに?カロリーナと偽るのはまずいかも…
このまま嘘をついているわけにもいかないのでは‥‥?
いいえ、その前に何とかこの話は断らなければ。
いや、カロリーナと偽って様子を見るのはどうか?
とにかく様子を見てからと…
「でも、どうして私の事を?どなたかの紹介でしょうか?」
今までのカロリーナの事をよく知っている人間って誰なの?
考えてみると私はカロリーナの事をほとんど知らなかったのだ。それに彼女は自分の事はあまり詳しい事は話してくれなかったから。
「いえ、実は前に国の成り立ちを書いた国記を見たことがあったので…エストラード皇国は曾祖父の代に大きな戦さがありその時に皇国としてジョセフコールが初代の皇王になったことはご存知ですよね?その時代にあなたが聖女をされていたと書かれていました。その後は…20年くらい前にわが国の魔術学校の先生もしていた事も記録にありました。カロリーナ殿の素晴らしい功績も拝見しましたので是非ともお力をお借りしたいとお願いに上がった次第です」
アルベルトは真っ直ぐに私を見つめた。
確かにカロリーナは素晴らしい魔女だけど…
焦る。額にはじんわりと汗がにじんだ。
とてもカロリーナの変わりが出来るとは思えなくなる。
例え魔力を使えるようになったとはいえ、まだほとんど試したこともないのだから。
「そ、そうでしたか…でも、今はその…少し体調が悪くてあいにくですがお役に立てるかどうか‥‥」
何て言えばいいの?やっぱり断るしかない。
私は彼の視線を遮るように顔をそむけた。
確かにカロリーナは素晴らしい魔女だと思ってたけど19年間そんなに凄い人だとは露と知らずに生きて来たもの。
「そうなんですか。体調が…そう言えばあの時もお辛そうでしたね。もしよければ私の国で養生なさいませんか?ご迷惑でなければですが…あっ、いえ、頼むのはカロリーナ殿の具合がよくなってからで構いません。これはあなたにしか頼めない事だと思いますから」
彼は申し訳なさそうにうつむく。
えっ?いえ、そんな事言われても困ります。
「そんな…困りますわ」
「どうか、そんな事を言わずにお願いします…‥うっ!く、苦しい…胸が焼けるように痛い…」
いきなりアルベルトは苦しみ始める。
ソファーから転がり落ち床をゴロゴロ這いまわってやがて意識を失った。
「もし?アルベルト様?どうせれましたか?どこが苦しいのです?しっかりしてください…」
私は彼の身体を揺すりながら途方に暮れる。
うぐっ!彼は座ってもいない。
違いました。座れなかったのです。
私が数日そこに寝転んでいたから、ソファーの上には毛布がとぐろを巻いたようになっている。
またしてもわたわたと慌てる。
「もう、私ったら…昨日は遅くなってここで休んだもので」
急いでトレイをきれいに片付いたテーブルに置くと、毛布を引っ張って格闘する。
何とか押し入れに毛布を押し込んだ。
「さあ、どうぞ。座って下さい」
私は何事もなかったような顔をしてポットのお茶をカップに注ぐ。
早くお茶が飲みたいとごくりと喉が鳴る。まるで薬物依存の中毒者みたいにお茶が欲しい。
金色のお湯がトクトクとカップに注がれると、自分のカップにその上からとろーりとハチミツを垂らす。
「ハチミツはいかがですか?良かったら入れますけど」
「ええ、お願いします」
「良かったわ。このお茶には少し苦みがあるのでハチミツは欠かせないんですよ」
もぉぉぉ、何を言ってるんだろう。
私はもう一つのカップにもとろりとハチミツを垂らす。
「さあ、どうぞ」
カップの一つを彼の前に置いた。
「いただきます」
アルベルトは少し口角を持ち上げると同時にカップを持ちあげた。
その所作は優雅で見ているだけでため息が漏れた。
「うん、これいいですね。すごくおいしい。ハチミツを入れるとこんなにおいしくなるんですね。俺が作ってもらっている薬湯は苦いばかりで…」
「ええ、知ってます。でもあんなに苦いのは、何が入ってるんでしょう?」
私の体質には会わなかったのかしら?あの後気分が悪くなったのだけど。
ごく普通の会話が成立していることに違和感もなく。
これでいいのだろうか?
「さあ‥‥わかりませんが。特別にって聖女であるエリザベート様が作ってくれるので」
「まあ、聖女様が」
カロリーナが言っていたことを思い出す。
お母様は聖女だった事を。そして聖女であったがために愛する人を失ったことを。
ぐっと悲しい気持ちを押し殺す。
いえ、そんな事より、アルベルト様とその聖女様って…突然浮かんだもやもやした感情。
こんな時に…
「それはアルベルト様にはもう決まった女性がいるという事なんですよね」
もっ!私ったら何言ってるかしら。
嫉妬?まさか…
「いえ違います。エリザベート様は皇王の専属の聖女ですよ。それに皇王の娘でもあるんです。わたしが王族の端くれというだけで、エリザベート様はみんなに薬湯などを作っているんです。俺にはそんな人いるはずもありませんから」
即刻の否定にほっとする。
「すみません。余計なことを言ってしまって」
私は目を伏せてハーブティーをずずぅっと啜る。
何だろう?この気まずい雰囲気は…
いつもならお茶を飲めば心も安らぐというのに、ますます気持ちはぐしゃぐしゃになって。
アルベルトはそんな空気を察したかのように、素っ気なく一緒に出したカップケーキに手を伸ばす。
黙々とかぶりついて美味しそうに食べる。
「ほんと!このカップケーキすごくおいしいですね。あっ、すみません。あの…それでお話なんですが、カロリーナ殿にいずれ折を見てぜひわがエストラード皇国に来ていただきたいんです。あっ、でも今すぐというわけではないんです」
「あのそれはどうして?」
そもそもカロリーナは殺された。なのに彼はどう見てもその事を知っているようには見えない。
でもカロリーナを頼るって事は殺された事ち何か関係あるのかもしれない。
「はい、先にお約束願えますか?ここで聞いたことは口外しないと」
「もちろんです。魔女は人から聞いた秘密を絶対に漏らしたりはしません。ここに来る人は多かれ少なかれ人には言えない秘密を抱えている人ばかりですから」
「それを聞いて安心しました。実は私の叔父。現在の皇王ランベラートとエリザベートの事で‥‥ご協力して頂きたいと思いまして‥‥それにはかなりの魔力を持った人でないと務まらないものと思われます。それであなたが適任ではないかと聞き及びまして」
わたしはビクリとなる。
どうやら彼はとてもいい人らしいが。
これは大変なことで。
おまけに皇王が叔父さん…ということはアルベルトはかなり高貴なお方ではないですか。
皇王の事となると王宮に行くことに?カロリーナと偽るのはまずいかも…
このまま嘘をついているわけにもいかないのでは‥‥?
いいえ、その前に何とかこの話は断らなければ。
いや、カロリーナと偽って様子を見るのはどうか?
とにかく様子を見てからと…
「でも、どうして私の事を?どなたかの紹介でしょうか?」
今までのカロリーナの事をよく知っている人間って誰なの?
考えてみると私はカロリーナの事をほとんど知らなかったのだ。それに彼女は自分の事はあまり詳しい事は話してくれなかったから。
「いえ、実は前に国の成り立ちを書いた国記を見たことがあったので…エストラード皇国は曾祖父の代に大きな戦さがありその時に皇国としてジョセフコールが初代の皇王になったことはご存知ですよね?その時代にあなたが聖女をされていたと書かれていました。その後は…20年くらい前にわが国の魔術学校の先生もしていた事も記録にありました。カロリーナ殿の素晴らしい功績も拝見しましたので是非ともお力をお借りしたいとお願いに上がった次第です」
アルベルトは真っ直ぐに私を見つめた。
確かにカロリーナは素晴らしい魔女だけど…
焦る。額にはじんわりと汗がにじんだ。
とてもカロリーナの変わりが出来るとは思えなくなる。
例え魔力を使えるようになったとはいえ、まだほとんど試したこともないのだから。
「そ、そうでしたか…でも、今はその…少し体調が悪くてあいにくですがお役に立てるかどうか‥‥」
何て言えばいいの?やっぱり断るしかない。
私は彼の視線を遮るように顔をそむけた。
確かにカロリーナは素晴らしい魔女だと思ってたけど19年間そんなに凄い人だとは露と知らずに生きて来たもの。
「そうなんですか。体調が…そう言えばあの時もお辛そうでしたね。もしよければ私の国で養生なさいませんか?ご迷惑でなければですが…あっ、いえ、頼むのはカロリーナ殿の具合がよくなってからで構いません。これはあなたにしか頼めない事だと思いますから」
彼は申し訳なさそうにうつむく。
えっ?いえ、そんな事言われても困ります。
「そんな…困りますわ」
「どうか、そんな事を言わずにお願いします…‥うっ!く、苦しい…胸が焼けるように痛い…」
いきなりアルベルトは苦しみ始める。
ソファーから転がり落ち床をゴロゴロ這いまわってやがて意識を失った。
「もし?アルベルト様?どうせれましたか?どこが苦しいのです?しっかりしてください…」
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