臨魁学園物語――転校生とガチ恋をして、二人で幸せになる話――
プロローグ 大人になった私たちは、あの頃を思い出す。
職員室を出、自分が担任をする教室へと向かう。
時間は始業3分前。遅刻になりたくない為に、生徒たちは教室へと急ぐ。
「おはようございます!」
生徒たちは僕に向かって、走りながら挨拶する。
「廊下は走るところじゃないぞ!スピード緩めて歩きなさい!」
彼等に向かって僕はそう返す。とは言うものの、遅刻寸前の彼等には、僕の声なんて届いてやいない。
──しょうがないな。
僕は小さくため息をつき、教室へと向かう。僕の後ろには、女の子が一人――他の生徒がブレザーの中、前の学校のものと思われるセーラー服を着て――ついてくる。
『教職コース2年1組』という教室札のある部屋。ここが僕が受け持つ教室だ。
「緊張してる?」
僕はその少女に声をかける。少女は硬い表情をして頷くだけだった。
「だよね。この状況で緊張しなかったら、ものすごい大物だよ。僕の妻みたいにね」
ちょっとおどけて、少女の緊張を取ろうとするがあまり上手くいかなかったみたいだ。少女は肩も上がってガチガチになっている。
「さっきも言ったけど、僕のクラスの生徒たちはいい子が多いからね、すぐに慣れると思う。少しの辛抱だよ」
僕はそう伝えて、教室の扉に手を伸ばす。
「ちょっとだけ、そこで待っていてくれるかな?すぐに呼ぶから」
と、僕はその生徒に伝え、その場で待つように指示をした。少女は、こくんと頷いて、でも所在なげに両手をもじもじと組んだり撫でたりする。
僕は扉を開け、教室に入る。同時に、チャイムが始業の時を告げる。
騒がしかった生徒たちが、急いで各々自分の机に戻る。
僕は扉をわざと開けたままにして(いつもはきちんと閉じるのだけれど)、教卓まで歩き、生徒たちと相対する。
「起立!」「礼!」
学級委員長がそう号令し、「おはようございます」と挨拶する。
僕も、「おはようございます」と返し、教室をぐるりと見回す。
見慣れた顔が、六十の瞳が僕に集中する。朝のホームルーム、僕が話し出すのを待っている。
──僕も、十年くらい前はこのなかの一人だった──
僕が今、この教壇に立てているのは誰のおかげだろう?子供の頃からの夢であった、『教師』という職業。
両親のおかげ?
兄弟のおかげ?
友人のおかげ?
先生のおかげ?
確かに、両親が僕をここまで見てきてくれたから。兄弟が、友人が、先生方が僕の色々な相談に乗ってくれたから。
それもちゃんとした理由になっている。
しかし、僕の一生を決定づけたのは、あの娘の存在だ。
今も一緒にいる、つまりは夫婦という関係になっている女性。この人との出会いが、自分の人生のターニングポイントだったんだな、とつくづく思う。
一年と少しという、長い一生のうちの、とても短い時間。でも、忘れることができない、いや、決して忘れてはならない記憶。
「着席」
委員長の声が、僕を我に返らせた。
僕は、今日一日の連絡事項を伝える。
「今日は水曜日…」
と、生徒たちに予定を伝える。そして、扉の外にいる、おそらく一人で不安を抱えている女子生徒に視線をやると、僕はあの日の少年に戻った気分になる。
そう、あれはまさに十年前の出来事。東条慎吾が十七歳の、秋に訪れた。
それは、普通の少年が、普通の少女に恋をした話。
<HR>
職員室を出て、教室に向かう私。
まだ誰もいない、こぢんまりとした教室に入って、教卓の上に水筒とタブレット端末を置く。
「さぁ、迎えに行こう!」
気合いを入れて、私は児童生徒玄関に向かった。
保護者やスクールバスが到着し、生徒達が三々五々降りて玄関に向かってくる。
その中で、私が担当する生徒を見つけて「おはよう」と挨拶すると、その子は「おはようごぁいます」と少々舌足らずな発音で挨拶してくれる。
そして、そのこと一緒に教室に向かっていく。
「昨日の休みは何してたの?」
「かぉくと旅行いったぉ」
家族と旅行に行ったんだ…。いいなぁ。
「私はまだ子ども小さいんだ。あんまり遠くはいけないけど、そのうち行きたいなぁって思ってるよ」
と言うと、その子はにこっと笑顔を向ける。
その笑顔を見て「あぁ、やっぱり生徒とは話をするのは楽しい!」って思う。
でも、復帰して半年しか経っていないから自信はなかなか持てないんだけど…。
そんな私たちは教室に入ってから、朝の準備をする。
それが、私の朝のルーティン。
仕事が終わって、17時半。
「あ、そろそろ行かないと。お先に失礼します!」
私は学校を出て、幼稚園に向かう。
その道中、ふっと制服姿の高校生のカップルを見かけた。仲よさそうに、手を繋いで…。
「あぁ~懐かしいな、あの頃。ふふっ」
私は、あの頃の私を思い出す。
中学生の中盤はとても辛かったけど、高校2年で転校して出会った友達にその辛さを昇華してもらって…。そして、人生をともにするパートナーに巡り会えた。
本当に辛い思いをした4年間から解放してくれた彼との楽しい高校生活が一つ一つ、今でも鮮明に思い出せるんだ。
それは、普通の少女が普通の少年に恋した話。
そして、二人で過ごした高校時代の思い出話――
そして、二人で過ごした高校時代の思い出話――
時間は始業3分前。遅刻になりたくない為に、生徒たちは教室へと急ぐ。
「おはようございます!」
生徒たちは僕に向かって、走りながら挨拶する。
「廊下は走るところじゃないぞ!スピード緩めて歩きなさい!」
彼等に向かって僕はそう返す。とは言うものの、遅刻寸前の彼等には、僕の声なんて届いてやいない。
──しょうがないな。
僕は小さくため息をつき、教室へと向かう。僕の後ろには、女の子が一人――他の生徒がブレザーの中、前の学校のものと思われるセーラー服を着て――ついてくる。
『教職コース2年1組』という教室札のある部屋。ここが僕が受け持つ教室だ。
「緊張してる?」
僕はその少女に声をかける。少女は硬い表情をして頷くだけだった。
「だよね。この状況で緊張しなかったら、ものすごい大物だよ。僕の妻みたいにね」
ちょっとおどけて、少女の緊張を取ろうとするがあまり上手くいかなかったみたいだ。少女は肩も上がってガチガチになっている。
「さっきも言ったけど、僕のクラスの生徒たちはいい子が多いからね、すぐに慣れると思う。少しの辛抱だよ」
僕はそう伝えて、教室の扉に手を伸ばす。
「ちょっとだけ、そこで待っていてくれるかな?すぐに呼ぶから」
と、僕はその生徒に伝え、その場で待つように指示をした。少女は、こくんと頷いて、でも所在なげに両手をもじもじと組んだり撫でたりする。
僕は扉を開け、教室に入る。同時に、チャイムが始業の時を告げる。
騒がしかった生徒たちが、急いで各々自分の机に戻る。
僕は扉をわざと開けたままにして(いつもはきちんと閉じるのだけれど)、教卓まで歩き、生徒たちと相対する。
「起立!」「礼!」
学級委員長がそう号令し、「おはようございます」と挨拶する。
僕も、「おはようございます」と返し、教室をぐるりと見回す。
見慣れた顔が、六十の瞳が僕に集中する。朝のホームルーム、僕が話し出すのを待っている。
──僕も、十年くらい前はこのなかの一人だった──
僕が今、この教壇に立てているのは誰のおかげだろう?子供の頃からの夢であった、『教師』という職業。
両親のおかげ?
兄弟のおかげ?
友人のおかげ?
先生のおかげ?
確かに、両親が僕をここまで見てきてくれたから。兄弟が、友人が、先生方が僕の色々な相談に乗ってくれたから。
それもちゃんとした理由になっている。
しかし、僕の一生を決定づけたのは、あの娘の存在だ。
今も一緒にいる、つまりは夫婦という関係になっている女性。この人との出会いが、自分の人生のターニングポイントだったんだな、とつくづく思う。
一年と少しという、長い一生のうちの、とても短い時間。でも、忘れることができない、いや、決して忘れてはならない記憶。
「着席」
委員長の声が、僕を我に返らせた。
僕は、今日一日の連絡事項を伝える。
「今日は水曜日…」
と、生徒たちに予定を伝える。そして、扉の外にいる、おそらく一人で不安を抱えている女子生徒に視線をやると、僕はあの日の少年に戻った気分になる。
そう、あれはまさに十年前の出来事。東条慎吾が十七歳の、秋に訪れた。
それは、普通の少年が、普通の少女に恋をした話。
<HR>
職員室を出て、教室に向かう私。
まだ誰もいない、こぢんまりとした教室に入って、教卓の上に水筒とタブレット端末を置く。
「さぁ、迎えに行こう!」
気合いを入れて、私は児童生徒玄関に向かった。
保護者やスクールバスが到着し、生徒達が三々五々降りて玄関に向かってくる。
その中で、私が担当する生徒を見つけて「おはよう」と挨拶すると、その子は「おはようごぁいます」と少々舌足らずな発音で挨拶してくれる。
そして、そのこと一緒に教室に向かっていく。
「昨日の休みは何してたの?」
「かぉくと旅行いったぉ」
家族と旅行に行ったんだ…。いいなぁ。
「私はまだ子ども小さいんだ。あんまり遠くはいけないけど、そのうち行きたいなぁって思ってるよ」
と言うと、その子はにこっと笑顔を向ける。
その笑顔を見て「あぁ、やっぱり生徒とは話をするのは楽しい!」って思う。
でも、復帰して半年しか経っていないから自信はなかなか持てないんだけど…。
そんな私たちは教室に入ってから、朝の準備をする。
それが、私の朝のルーティン。
仕事が終わって、17時半。
「あ、そろそろ行かないと。お先に失礼します!」
私は学校を出て、幼稚園に向かう。
その道中、ふっと制服姿の高校生のカップルを見かけた。仲よさそうに、手を繋いで…。
「あぁ~懐かしいな、あの頃。ふふっ」
私は、あの頃の私を思い出す。
中学生の中盤はとても辛かったけど、高校2年で転校して出会った友達にその辛さを昇華してもらって…。そして、人生をともにするパートナーに巡り会えた。
本当に辛い思いをした4年間から解放してくれた彼との楽しい高校生活が一つ一つ、今でも鮮明に思い出せるんだ。
それは、普通の少女が普通の少年に恋した話。
そして、二人で過ごした高校時代の思い出話――
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