蒼子のおそうじ日記
第7話 安さを捨てる
蒼子が新しくバイトを始めたのは、atozonという通販サイトの物流センターだった。
速い、安い、丁寧を社是とした職場で、毎月のようにキャンペーンや割引セールもやっている。品揃いも豊富で国内最大のネット通販サイトでもあり、全国各地に配送センターがある。
蒼子の働く事になった配送センターも新しく出来たところで、ロボットが物を運んだり、最新技術も取り入れられていたが、段ボールを開墾し、中身を検品して、他部者に送る作業は、今の技術のロボットでは難しい。
蒼子もそんな仕事を朝から晩までやっていた。
コンクリートは打ちっぱなしの地味な雰囲気の配送センターだが、ベルトコンベアが常に動き、段ボールが延々と送られてくる。
蒼子はそれを開け、検品してスキャンし、コンテナにつめ、またベルトコンベアにのせ他部所に送るという作業を延々と繰り返していた。
一見、誰にも出来そうな単純な作業だったが、ペットボルトのセット品や一升瓶などの液体物も多く、想像以上に体力を使う。
同じベルとコンベアにつき一緒に仕事をする同僚も中年男性や若い男性も多く、所属した初日から蒼子は後悔しはじめた。一応求人には男女ともに活躍と書いてあったが。
体力だけでなく、意外と安全対策も厳しい。ベルトコンベアにカッターや梱包資材などを落しただけでも、それが止まり、けたたましいサイレンがなる。こう言ったミスをするだけで迷惑がかかる事になり、事務職しか経験がなかった蒼子は、冷や汗をたらしながら、何とか仕事をやっている状況だった。幸いな事に同僚も上司も優しいのが救いだった。ただ、本当に鈍臭いタイプの男性は、上司にかなり怒鳴られていて、気は全く抜けない。
タイミングが悪い事に、秋のキャンペーンセールがあった為、大量に在庫を入れている為、蒼子の部署も多忙を極めていた。
もっと忙しい他部署に助っ人に出たり、シフトも夜勤に回されたりして目が回る思いだった。
よく配送センターや工事勤務は人と関わりが無いから楽とも言われていたが、それは大きな誤解だと気づく。どんな事も報連相は必要だし、ベルトコンベアは連帯責任も負うので安易にミスもできない。
安全対策も厳しく、私語も厳禁だ。携帯も情報漏洩の観点から持ち込めない。その上、同じ作業を延々と繰り返し、何の成長も無い事に、気が狂いそうにもなってきた。
他部署では最新ロボットが動きまわり、荷物を運んでいる場面もよく見るようになり、危機感も出てきた。これからは人間にしかできない仕事が求められる時代になるであろう事を実感し、危機感も出てきてしまった。このまま働いき続けるのももちろん、事務職などで転職活動するのは、本当に良い事なのかもわからなくなってきた所、連日の夜勤続きで、高熱が出て寝込んでしまった。
以前よりだいぶ綺麗になった部屋。ものも少なくなり、シンプルになってきた部屋だが、ここで一人で寝込んでいると、何だか泣きたくなってきた。
この先に不安。最初技術やAI、ロボットは素晴らしいものだが、雇用と仕事を奪うのは、本当に良いものかわからない。
顧客としては、こういった通販サイトは便利だ。安くて、早くて、丁寧。
その裏では、何人もの労働者に支えられているものだと想像もしていなかった。表面的には感謝はしていたが、こうした便利さは人を豊にするのかもわからない。
こういった通販サイトのおかげで町の個人商店も消えている。配送センターだけなく、配達員の労働環境も問題になっているともニュースで見たことがあった。
今の時代は便利なはずなのに、巡り巡って不便になっていないか?
体調が悪いせいか、そんな現実も考えてしまう。
『そうよ、蒼子。安いものには、必ずリスクがあるわけよ』
いつの間にかピー子が飛んできて。枕元に降り立つ。
『客としては安いものを買うのもいいでしょう。でも働く側は? 長い目で見るとどう?』
そう言われると、ぐうの音も出なかった。
思えば安さを理由に買った服、百均で買った雑貨、プチプラ、文房具……。全部ゴミ袋行きになり、捨てる事になった。
初めから買わないという決断をしていてば、こんなに汚部屋にならなかったかもしれない。安さにも大きなリスクがあるのだろう。
今は断捨離や掃除もブームみたいになっていたが、元々必要のないものを買わなければ、掃除の手間だってそんなに無かったはずだ。
『安さも豊かさも、頭を使ってちゃんと使いこなさないと、ダメなのよ』
「わーん、ピー子の言う通り。なんだか結局自分の元に戻って来ててる気が……」
安さを追求すすぎた結果、結局労働者としても同じように買い叩かれている。
これは自分が望んでいた幸せか?
『まあ、今はそんな事は考えずにゆっくり休みましょう』
「う、うん」
珍しくピー子もーの声も優しく聞こえ、眠くなってきた。
『でも今回の事で気づいた事は、忘れないでね』
ピー子はそう言い残すと、パタパタと飛び立ち、鳥籠の方へ戻っていく。
今は身体を休める事に優先しよう。早く眠ろう。
その前に、ノートを広げてこう書いた。
・安さを捨てる
・本当に必要なものだけをよく考えて買う
ものの価値は値段だけじゃ無いのかもしれない。
バイトとはいえ、配送センターでの仕事も想像以上に大変だった。身体もこうして悲鳴をあげているが、大事な事に気づけたようだ。
客としては、ネットショッピングも少し控えてみようか。安さに釣られて買い物するのもやめたい。
・価値のある物、お店、従業員を大切にしている企業などで買い物したい。
・送料無料とかも本当は、不当なサービスなのかも知れない。
そう書くと、余計に眠気が襲ってきた。今日はノートも掃もお休みだ。身体を休める事を優先し、また元気になった日から頑張ろう。
速い、安い、丁寧を社是とした職場で、毎月のようにキャンペーンや割引セールもやっている。品揃いも豊富で国内最大のネット通販サイトでもあり、全国各地に配送センターがある。
蒼子の働く事になった配送センターも新しく出来たところで、ロボットが物を運んだり、最新技術も取り入れられていたが、段ボールを開墾し、中身を検品して、他部者に送る作業は、今の技術のロボットでは難しい。
蒼子もそんな仕事を朝から晩までやっていた。
コンクリートは打ちっぱなしの地味な雰囲気の配送センターだが、ベルトコンベアが常に動き、段ボールが延々と送られてくる。
蒼子はそれを開け、検品してスキャンし、コンテナにつめ、またベルトコンベアにのせ他部所に送るという作業を延々と繰り返していた。
一見、誰にも出来そうな単純な作業だったが、ペットボルトのセット品や一升瓶などの液体物も多く、想像以上に体力を使う。
同じベルとコンベアにつき一緒に仕事をする同僚も中年男性や若い男性も多く、所属した初日から蒼子は後悔しはじめた。一応求人には男女ともに活躍と書いてあったが。
体力だけでなく、意外と安全対策も厳しい。ベルトコンベアにカッターや梱包資材などを落しただけでも、それが止まり、けたたましいサイレンがなる。こう言ったミスをするだけで迷惑がかかる事になり、事務職しか経験がなかった蒼子は、冷や汗をたらしながら、何とか仕事をやっている状況だった。幸いな事に同僚も上司も優しいのが救いだった。ただ、本当に鈍臭いタイプの男性は、上司にかなり怒鳴られていて、気は全く抜けない。
タイミングが悪い事に、秋のキャンペーンセールがあった為、大量に在庫を入れている為、蒼子の部署も多忙を極めていた。
もっと忙しい他部署に助っ人に出たり、シフトも夜勤に回されたりして目が回る思いだった。
よく配送センターや工事勤務は人と関わりが無いから楽とも言われていたが、それは大きな誤解だと気づく。どんな事も報連相は必要だし、ベルトコンベアは連帯責任も負うので安易にミスもできない。
安全対策も厳しく、私語も厳禁だ。携帯も情報漏洩の観点から持ち込めない。その上、同じ作業を延々と繰り返し、何の成長も無い事に、気が狂いそうにもなってきた。
他部署では最新ロボットが動きまわり、荷物を運んでいる場面もよく見るようになり、危機感も出てきた。これからは人間にしかできない仕事が求められる時代になるであろう事を実感し、危機感も出てきてしまった。このまま働いき続けるのももちろん、事務職などで転職活動するのは、本当に良い事なのかもわからなくなってきた所、連日の夜勤続きで、高熱が出て寝込んでしまった。
以前よりだいぶ綺麗になった部屋。ものも少なくなり、シンプルになってきた部屋だが、ここで一人で寝込んでいると、何だか泣きたくなってきた。
この先に不安。最初技術やAI、ロボットは素晴らしいものだが、雇用と仕事を奪うのは、本当に良いものかわからない。
顧客としては、こういった通販サイトは便利だ。安くて、早くて、丁寧。
その裏では、何人もの労働者に支えられているものだと想像もしていなかった。表面的には感謝はしていたが、こうした便利さは人を豊にするのかもわからない。
こういった通販サイトのおかげで町の個人商店も消えている。配送センターだけなく、配達員の労働環境も問題になっているともニュースで見たことがあった。
今の時代は便利なはずなのに、巡り巡って不便になっていないか?
体調が悪いせいか、そんな現実も考えてしまう。
『そうよ、蒼子。安いものには、必ずリスクがあるわけよ』
いつの間にかピー子が飛んできて。枕元に降り立つ。
『客としては安いものを買うのもいいでしょう。でも働く側は? 長い目で見るとどう?』
そう言われると、ぐうの音も出なかった。
思えば安さを理由に買った服、百均で買った雑貨、プチプラ、文房具……。全部ゴミ袋行きになり、捨てる事になった。
初めから買わないという決断をしていてば、こんなに汚部屋にならなかったかもしれない。安さにも大きなリスクがあるのだろう。
今は断捨離や掃除もブームみたいになっていたが、元々必要のないものを買わなければ、掃除の手間だってそんなに無かったはずだ。
『安さも豊かさも、頭を使ってちゃんと使いこなさないと、ダメなのよ』
「わーん、ピー子の言う通り。なんだか結局自分の元に戻って来ててる気が……」
安さを追求すすぎた結果、結局労働者としても同じように買い叩かれている。
これは自分が望んでいた幸せか?
『まあ、今はそんな事は考えずにゆっくり休みましょう』
「う、うん」
珍しくピー子もーの声も優しく聞こえ、眠くなってきた。
『でも今回の事で気づいた事は、忘れないでね』
ピー子はそう言い残すと、パタパタと飛び立ち、鳥籠の方へ戻っていく。
今は身体を休める事に優先しよう。早く眠ろう。
その前に、ノートを広げてこう書いた。
・安さを捨てる
・本当に必要なものだけをよく考えて買う
ものの価値は値段だけじゃ無いのかもしれない。
バイトとはいえ、配送センターでの仕事も想像以上に大変だった。身体もこうして悲鳴をあげているが、大事な事に気づけたようだ。
客としては、ネットショッピングも少し控えてみようか。安さに釣られて買い物するのもやめたい。
・価値のある物、お店、従業員を大切にしている企業などで買い物したい。
・送料無料とかも本当は、不当なサービスなのかも知れない。
そう書くと、余計に眠気が襲ってきた。今日はノートも掃もお休みだ。身体を休める事を優先し、また元気になった日から頑張ろう。

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