蒼子のおそうじ日記
第6話 迷いを捨てる
インターネットの発達は、便利さを通り越して、少し怖い。
中学の時の同級生・藤原冴子とは、SNSを通して繋がり、最近はよくDMでやり取りしていた。
蒼子もSNSはアカウント作ったまま放置していたが、この事をきっかけに冴子とやり取りする為に活躍していた。
冴子はとあるタイの田舎の村でイラストを書いたり、日本人のキリスト教の宣教師達と子供の勉強を教えたり、ボランティアもやっているようだった。
他人の目を気にして落ち込んでいた蒼子だったが、こんな冴子を見ていたら「世界は広い」と考えが変わってきた。
今日はテレビ通話もやり、タイにいる冴子と会話もした。
一昔前前だったら考えられない事だ。インターネットの発達を考えると少し怖いぐらいだが、冴子と話していると楽しかった。中学の時はさほど親しくはなかったが、大人になると気が合う人も変わるようだ。
「えー、蒼子って今は仕事してないの? だったらこっち来てみなよ。世界が広がるよ」
日に焼けた肌を見せ、ニコニコと笑っている冴子。
そんな冴子は蒼子の状況も特に問題視していなかった。
「日本にいたら死にたくなるしねえ。私も死のうと思って海外に出たんだけど、かえって生き返ったよ、世界が広がって。はは」
深刻と思われる過去も大きな声で笑い飛ばす冴子を見ていたら、肩の荷も降りてきた。
「旅行でも良いからさ」
「そうか、それも良いかもしれない」
海外に出る選択肢もありなのかも?
どうせ今は転職活動もうまくいかない。頭の片隅に冴子のところの行くという選択肢も浮かんできた。
そんな事を考えながら、今日も部屋の片付けをしていた。
以前よりはだいぶ綺麗になってきたが、「いつか必要になるかも?」と思いとっておいた紙袋やノベルティのエコバッグ、シャープペンなど細々としたものが出てきて、手が止まる。
「これは捨てるべき? でもいつか必要になる時があるかもしれないし……」
タイミングが悪いことに防災カバンも出てきた。これも何かノベルティで貰ったものと思われるが、中にはフエやカイロ、タオルなども入っている。これもいつか必要になるかもしれないと思うと迷い、捨てられない。
掃除はこうして迷いが出てしまい、手が全く進まない。
『蒼子、こういう時は何やっても進まないわ。とりあえず掃除はいったん中止したら?』
いつのまにかピー子が飛んで来て肩に止まる。
「そうだね。とりあえず、散歩でもして頭を切り替えるよ」
『散歩はいいわ。引きこもるよりグッドよ!』
ピー子に励まされ、着替え身支度を整えて、散歩に出る事にした。
よく晴れた午後。
近所の公園には、犬を連れた老人、主婦のグループ、子連れの母親などで賑わっていた。
蒼子と同年代の女は他に見当たらないが、ベンチに座り、ペットボトルのお茶を飲みながら、ホット息をつく。
掃除中も迷いに囚われ、手がつかなくなっていたが、こうして休憩していると、心が落ち着いてきた。
思えば少し焦っていたところもあった。
こういう何もしないでボーっとする時間も必要なのかもしれない。迷いに囚われていたのも、心の余裕が必要だったのかもしれない。
・落ちつていこう
・ゆっくりでも着実の一歩ずつ
蒼子はあのノートを取り出し、今、気づいた事を書く。
書いていると、余計に心はホッとしてきた。迷いも薄れてきたかもしれない。
「ママ、ジュース買って!」
そんな蒼子の目の前に幼稚園生ぐらいの男の子が母親にワガママを言っていた。自動販売機を指差し、騒いでいた。
「まーくん、今ジュースは必要? さっきスポーツドリンクを飲んだでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「目の前のものに惑わされないの。ちゃんと考えて」
蒼子より若い母親だったが、かなりしっかり者のようだった。子供は母親の言うことに納得し、大人しくなっている。
「そうか、目の前のものに惑わされないか……」
そんな親子を見ていたら、蒼子も何か気づきそうだった。
家に帰ると、掃除を再開。
さっきは迷い、いつか使うだろうと思っていたものも捨てる事にした。
今、使うのか。本当に必要なのか。
そうした基準で優先順位を考えると、要らないものばかりだったと気づく。防災用のグッズは、今の安心感の必要の為という理由でとっておく事にした。
迷いもちゃんと優先順位をつけたら、 綺麗に消えていた。
もしかしたら紙袋やノベルティのボールペンを使う日が来るのかもしれないが、それよりは今、綺麗な部屋の方が必要だと決めた。そう、自分で決めて片付けていると、迷いも消えて、サクサクと掃除も進んでいった。
『わ! かなり綺麗になったんじゃない?』
またピー子が飛んできて、蒼子の手の平に止まった。
「そう?」
『頑張ったじゃない? この頑張りは素直に自分で認めてあげましょう』
ピー子の明るい声を聞いていたら、今日は自分を認めても良い気がしてきた。
・綺麗になってきた!
そうノートに書いていると、初めて達成感のようなものが出てきた。
『さて、蒼子。次は何が必要?』
前よりもだいぶ綺麗になった部屋を眺めながら考える。
手の上には青い羽根のピー子。なんとなく幸せはもうすぐそこに来ているような気もしてきた。
「今必要なのは……。お金?」
闇雲に転職活動をしていた蒼子だったが、目的も軸もブレブレだった。シンプルに考えれば、必要なものは金だ。
だとしたら、手段は何でもいいか?
もちろん、犯罪行為などは御法度だが、雇用形態などのこだわりは、優先順位が低くなってきた。
それに金が貯まれば、冴子に会いに行く選択肢も可能だ。
ちょうど隣町で新しく配送センターが出来、求人情報も出ていた。大量採用とあり、面接も簡単なものらしい。オープニングスタッフなのっ期間限定雇用だが、給料も悪くはない。旅費ぐらいは簡単に稼げるかもしれない。
迷っている暇はない。
さっそく採用担当に連絡し、面接を受けると、その場で即採用された。
順調すぎて少し怖いぐらいだったが、この流れに乗ってみるか。
そう、迷っている暇なんて無いのだ。
『良かったじゃない。バイトだけど、頑張って!』
ピー子にも励まされ、希望も出てきた。部屋も片づいてきた。
幸せはすぐそこ?
本当にそんな気がしてきた。
中学の時の同級生・藤原冴子とは、SNSを通して繋がり、最近はよくDMでやり取りしていた。
蒼子もSNSはアカウント作ったまま放置していたが、この事をきっかけに冴子とやり取りする為に活躍していた。
冴子はとあるタイの田舎の村でイラストを書いたり、日本人のキリスト教の宣教師達と子供の勉強を教えたり、ボランティアもやっているようだった。
他人の目を気にして落ち込んでいた蒼子だったが、こんな冴子を見ていたら「世界は広い」と考えが変わってきた。
今日はテレビ通話もやり、タイにいる冴子と会話もした。
一昔前前だったら考えられない事だ。インターネットの発達を考えると少し怖いぐらいだが、冴子と話していると楽しかった。中学の時はさほど親しくはなかったが、大人になると気が合う人も変わるようだ。
「えー、蒼子って今は仕事してないの? だったらこっち来てみなよ。世界が広がるよ」
日に焼けた肌を見せ、ニコニコと笑っている冴子。
そんな冴子は蒼子の状況も特に問題視していなかった。
「日本にいたら死にたくなるしねえ。私も死のうと思って海外に出たんだけど、かえって生き返ったよ、世界が広がって。はは」
深刻と思われる過去も大きな声で笑い飛ばす冴子を見ていたら、肩の荷も降りてきた。
「旅行でも良いからさ」
「そうか、それも良いかもしれない」
海外に出る選択肢もありなのかも?
どうせ今は転職活動もうまくいかない。頭の片隅に冴子のところの行くという選択肢も浮かんできた。
そんな事を考えながら、今日も部屋の片付けをしていた。
以前よりはだいぶ綺麗になってきたが、「いつか必要になるかも?」と思いとっておいた紙袋やノベルティのエコバッグ、シャープペンなど細々としたものが出てきて、手が止まる。
「これは捨てるべき? でもいつか必要になる時があるかもしれないし……」
タイミングが悪いことに防災カバンも出てきた。これも何かノベルティで貰ったものと思われるが、中にはフエやカイロ、タオルなども入っている。これもいつか必要になるかもしれないと思うと迷い、捨てられない。
掃除はこうして迷いが出てしまい、手が全く進まない。
『蒼子、こういう時は何やっても進まないわ。とりあえず掃除はいったん中止したら?』
いつのまにかピー子が飛んで来て肩に止まる。
「そうだね。とりあえず、散歩でもして頭を切り替えるよ」
『散歩はいいわ。引きこもるよりグッドよ!』
ピー子に励まされ、着替え身支度を整えて、散歩に出る事にした。
よく晴れた午後。
近所の公園には、犬を連れた老人、主婦のグループ、子連れの母親などで賑わっていた。
蒼子と同年代の女は他に見当たらないが、ベンチに座り、ペットボトルのお茶を飲みながら、ホット息をつく。
掃除中も迷いに囚われ、手がつかなくなっていたが、こうして休憩していると、心が落ち着いてきた。
思えば少し焦っていたところもあった。
こういう何もしないでボーっとする時間も必要なのかもしれない。迷いに囚われていたのも、心の余裕が必要だったのかもしれない。
・落ちつていこう
・ゆっくりでも着実の一歩ずつ
蒼子はあのノートを取り出し、今、気づいた事を書く。
書いていると、余計に心はホッとしてきた。迷いも薄れてきたかもしれない。
「ママ、ジュース買って!」
そんな蒼子の目の前に幼稚園生ぐらいの男の子が母親にワガママを言っていた。自動販売機を指差し、騒いでいた。
「まーくん、今ジュースは必要? さっきスポーツドリンクを飲んだでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「目の前のものに惑わされないの。ちゃんと考えて」
蒼子より若い母親だったが、かなりしっかり者のようだった。子供は母親の言うことに納得し、大人しくなっている。
「そうか、目の前のものに惑わされないか……」
そんな親子を見ていたら、蒼子も何か気づきそうだった。
家に帰ると、掃除を再開。
さっきは迷い、いつか使うだろうと思っていたものも捨てる事にした。
今、使うのか。本当に必要なのか。
そうした基準で優先順位を考えると、要らないものばかりだったと気づく。防災用のグッズは、今の安心感の必要の為という理由でとっておく事にした。
迷いもちゃんと優先順位をつけたら、 綺麗に消えていた。
もしかしたら紙袋やノベルティのボールペンを使う日が来るのかもしれないが、それよりは今、綺麗な部屋の方が必要だと決めた。そう、自分で決めて片付けていると、迷いも消えて、サクサクと掃除も進んでいった。
『わ! かなり綺麗になったんじゃない?』
またピー子が飛んできて、蒼子の手の平に止まった。
「そう?」
『頑張ったじゃない? この頑張りは素直に自分で認めてあげましょう』
ピー子の明るい声を聞いていたら、今日は自分を認めても良い気がしてきた。
・綺麗になってきた!
そうノートに書いていると、初めて達成感のようなものが出てきた。
『さて、蒼子。次は何が必要?』
前よりもだいぶ綺麗になった部屋を眺めながら考える。
手の上には青い羽根のピー子。なんとなく幸せはもうすぐそこに来ているような気もしてきた。
「今必要なのは……。お金?」
闇雲に転職活動をしていた蒼子だったが、目的も軸もブレブレだった。シンプルに考えれば、必要なものは金だ。
だとしたら、手段は何でもいいか?
もちろん、犯罪行為などは御法度だが、雇用形態などのこだわりは、優先順位が低くなってきた。
それに金が貯まれば、冴子に会いに行く選択肢も可能だ。
ちょうど隣町で新しく配送センターが出来、求人情報も出ていた。大量採用とあり、面接も簡単なものらしい。オープニングスタッフなのっ期間限定雇用だが、給料も悪くはない。旅費ぐらいは簡単に稼げるかもしれない。
迷っている暇はない。
さっそく採用担当に連絡し、面接を受けると、その場で即採用された。
順調すぎて少し怖いぐらいだったが、この流れに乗ってみるか。
そう、迷っている暇なんて無いのだ。
『良かったじゃない。バイトだけど、頑張って!』
ピー子にも励まされ、希望も出てきた。部屋も片づいてきた。
幸せはすぐそこ?
本当にそんな気がしてきた。
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