蒼子のおそうじ日記
第5話 他人の目を捨てる
ピー子からのアドバイスもあり、だんだんと部屋も片付いてきた。それに面接も決まり、ご機嫌でハロワークから帰った日の事だった。
家の近所を歩いていたら、中学生の時の友達と再会した。南村春香という名前の同級生だ。当時から派手でギャルっぽい子だったが、今はそこそこ落ち着き、セレブ風ママだ。小学生ぐらいの男の子と一緒に歩いて、驚く。今の名字は南田ではなく、白鳥というらしい。
そうは言っても蒼子の年代でこのぐらいの子供がいても、さほど不自然もない。昔だったらもっとアラサー女性に子供がいる事は普通だっただろう。
「え、蒼子って今何やってるの? スーツ姿って事はなに? 転職活動中?」
春香は蒼子の様子を見ていちいち驚いていた。
「うちらアラサーだよね? 仕事すら無いとかって終わって無い? どういう事よ?」
その口元は笑いを堪えているようで引き攣っていた。子供からも笑われているような気がして蒼子は思わず下を向いてしまった。
「やばいって。まあ、頑張ってねー」
下を向いている蒼子を無視し、春香と子供は笑いながら去って行った。
その後、蒼子の表情は、暗いままだった。春香の声や表情などを思い出し、落ちこむ。
「自分なんて……」
ついつい再び自分を責めるモードに入ってしまい、片付けのやる気も失う。
AIのチャットアプリは削除してしまったが、スマートフォンではSNSのアプリを開き、中学の時の同級生の動向を見てしまう。
春香だけでなく、多くの元クラスメイト達は充実した人生を送っているようだ。
春香みたいに結婚子宝に恵まれたもの、転職して収入が上がったもの、起業したもの、婚活が上手くいったもののSNSを見てしまい「それに比べて私って一体……」と落ち込んでしまった。
SNSには、「気の合う友達だけ付き合い、どうでない人はバンバン切ろう」とも発信いるもんlもあり、今の状況ではそうするのもアリか。
こんな他人と比較してしまう自分に嫌気もさし、心が真っ黒になっていく。
当然、進んでいた掃除の手も止まり、服や本も出しっぱしになり、床に書類が積み重なり、下の雰囲気に戻ってきた。決まっていた面接も先方から急にキャンセルも入り、踏んだり蹴ったりだった。
『蒼子!』
そんなある朝。
ピー子が飛んでやってきた。最近はピー子が話しかけても無視していたのだが。
「なに? もう片付けのやる気無くしたから」
蒼子はベッドから起き上がりながら、文句をぶつぶつと言う。その表情は元に戻っていた。
『他人の目を気にして比較するのは、辞めなさい』
そう言われると思った。自分でもわかっていたが、比較も他人の目も捨てられない。
そういえば中学生ぐらから、急に他人の目を気にしはじめた。
この頃から容姿や成績、生まれ持った家柄に「差」があると実感してきた。学校では「みんな平等」と綺麗事を教わるが、実際はそうでは無い事の違和感。
そんな事を意識するにつれて、自分が他人からどう見えるのか気になる。
この社会は平等ではなく、「差」があるらしい。そんな中で自分と他人との「差」が悪く働かないか気になってくる。
他人の目が怖い。一度悪い方の「差」がついてしまったら、どうしよう。
今も中学生の時みたいに、自分の周りに他人の視線がチクチク刺さっているような恐怖も感じる。足がすくむ。少しはあった自信も灯りが消えるようにフッと消えていく。
『だったら蒼子。この中学の時の冴子って友達のSNS見てみたら?』
「冴子?」
何でピー子がそんな事を知っているのか不思議に思いつつ、冴子のSNSも見てみた。
確か藤原冴子は、けっこうな変わり者だった記憶がある。いわゆる厨二病で趣味なども変わっていたが。
「あれ、冴子って海外にいるのか……」
SNSを見ると、冴子は海外に渡り、イラストを描きながら、ボランティア活動をしているようだった。特にイラストで成功している様子は無いようだが、タイの子供達とキラキラした笑顔を見せている。
衝撃的だった。こんな生き方もアリなのか、と。
『冴子は他人の目を気にしてると思う?』
「してないと思う……」
『蒼子のいう範囲の他人って誰よ? 世界中の全ての人? とても狭い範囲じゃない?』
確かにそうかも知れない。比較して気にしていた他人は、中学の時の友達数人だ。ピー子の言う通り狭かった。
それに冴子が今の蒼子を見ても、馬鹿にしたりはしないだろう。あの子は中学の時から変わり者だったが、人を見下したり、悪口を言う事は決してなかった。一方、春香は冴えない男子達に露骨に悪口を言い、案外嫌われていた事も思い出す。
『ね、他人の目なんて、狭い考え方よ』
「そうかも」
『さあ、また片付けましょう。このブランドもののネックレスとか本当に必要?』
捨てずにとってある物も、他人の視線を気にしたり、見栄を張って残しているものも多かった事に気づく。
どうせ面接がもなくなって暇だ。
今日は、そんな不用品を一つずつ捨てていった。
「すっきりして来たかも」
そんな物を捨てたら、不思議と蒼子の気持ちも軽くなってきた。
・また要らないものも捨てられた
ノートにそう書き、赤ぺンで花丸も描く。
冴子に連絡でもとってみようか。彼女のSNSを見て考え方も変わったし。
確かにマナーや常識的な事に関しては、他人の目を気にした方が良い場合もあるかもしれないが。
比較して無駄に自分を責める為には、他人の目を気にしても仕方ない。
そんな他人の目は、今は捨てる事にした。
家の近所を歩いていたら、中学生の時の友達と再会した。南村春香という名前の同級生だ。当時から派手でギャルっぽい子だったが、今はそこそこ落ち着き、セレブ風ママだ。小学生ぐらいの男の子と一緒に歩いて、驚く。今の名字は南田ではなく、白鳥というらしい。
そうは言っても蒼子の年代でこのぐらいの子供がいても、さほど不自然もない。昔だったらもっとアラサー女性に子供がいる事は普通だっただろう。
「え、蒼子って今何やってるの? スーツ姿って事はなに? 転職活動中?」
春香は蒼子の様子を見ていちいち驚いていた。
「うちらアラサーだよね? 仕事すら無いとかって終わって無い? どういう事よ?」
その口元は笑いを堪えているようで引き攣っていた。子供からも笑われているような気がして蒼子は思わず下を向いてしまった。
「やばいって。まあ、頑張ってねー」
下を向いている蒼子を無視し、春香と子供は笑いながら去って行った。
その後、蒼子の表情は、暗いままだった。春香の声や表情などを思い出し、落ちこむ。
「自分なんて……」
ついつい再び自分を責めるモードに入ってしまい、片付けのやる気も失う。
AIのチャットアプリは削除してしまったが、スマートフォンではSNSのアプリを開き、中学の時の同級生の動向を見てしまう。
春香だけでなく、多くの元クラスメイト達は充実した人生を送っているようだ。
春香みたいに結婚子宝に恵まれたもの、転職して収入が上がったもの、起業したもの、婚活が上手くいったもののSNSを見てしまい「それに比べて私って一体……」と落ち込んでしまった。
SNSには、「気の合う友達だけ付き合い、どうでない人はバンバン切ろう」とも発信いるもんlもあり、今の状況ではそうするのもアリか。
こんな他人と比較してしまう自分に嫌気もさし、心が真っ黒になっていく。
当然、進んでいた掃除の手も止まり、服や本も出しっぱしになり、床に書類が積み重なり、下の雰囲気に戻ってきた。決まっていた面接も先方から急にキャンセルも入り、踏んだり蹴ったりだった。
『蒼子!』
そんなある朝。
ピー子が飛んでやってきた。最近はピー子が話しかけても無視していたのだが。
「なに? もう片付けのやる気無くしたから」
蒼子はベッドから起き上がりながら、文句をぶつぶつと言う。その表情は元に戻っていた。
『他人の目を気にして比較するのは、辞めなさい』
そう言われると思った。自分でもわかっていたが、比較も他人の目も捨てられない。
そういえば中学生ぐらから、急に他人の目を気にしはじめた。
この頃から容姿や成績、生まれ持った家柄に「差」があると実感してきた。学校では「みんな平等」と綺麗事を教わるが、実際はそうでは無い事の違和感。
そんな事を意識するにつれて、自分が他人からどう見えるのか気になる。
この社会は平等ではなく、「差」があるらしい。そんな中で自分と他人との「差」が悪く働かないか気になってくる。
他人の目が怖い。一度悪い方の「差」がついてしまったら、どうしよう。
今も中学生の時みたいに、自分の周りに他人の視線がチクチク刺さっているような恐怖も感じる。足がすくむ。少しはあった自信も灯りが消えるようにフッと消えていく。
『だったら蒼子。この中学の時の冴子って友達のSNS見てみたら?』
「冴子?」
何でピー子がそんな事を知っているのか不思議に思いつつ、冴子のSNSも見てみた。
確か藤原冴子は、けっこうな変わり者だった記憶がある。いわゆる厨二病で趣味なども変わっていたが。
「あれ、冴子って海外にいるのか……」
SNSを見ると、冴子は海外に渡り、イラストを描きながら、ボランティア活動をしているようだった。特にイラストで成功している様子は無いようだが、タイの子供達とキラキラした笑顔を見せている。
衝撃的だった。こんな生き方もアリなのか、と。
『冴子は他人の目を気にしてると思う?』
「してないと思う……」
『蒼子のいう範囲の他人って誰よ? 世界中の全ての人? とても狭い範囲じゃない?』
確かにそうかも知れない。比較して気にしていた他人は、中学の時の友達数人だ。ピー子の言う通り狭かった。
それに冴子が今の蒼子を見ても、馬鹿にしたりはしないだろう。あの子は中学の時から変わり者だったが、人を見下したり、悪口を言う事は決してなかった。一方、春香は冴えない男子達に露骨に悪口を言い、案外嫌われていた事も思い出す。
『ね、他人の目なんて、狭い考え方よ』
「そうかも」
『さあ、また片付けましょう。このブランドもののネックレスとか本当に必要?』
捨てずにとってある物も、他人の視線を気にしたり、見栄を張って残しているものも多かった事に気づく。
どうせ面接がもなくなって暇だ。
今日は、そんな不用品を一つずつ捨てていった。
「すっきりして来たかも」
そんな物を捨てたら、不思議と蒼子の気持ちも軽くなってきた。
・また要らないものも捨てられた
ノートにそう書き、赤ぺンで花丸も描く。
冴子に連絡でもとってみようか。彼女のSNSを見て考え方も変わったし。
確かにマナーや常識的な事に関しては、他人の目を気にした方が良い場合もあるかもしれないが。
比較して無駄に自分を責める為には、他人の目を気にしても仕方ない。
そんな他人の目は、今は捨てる事にした。
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