組織から孤島に逃げ落ちた元悪役令嬢は花屋を開きモフモフ動物達とスローライフを送っていたら世界トップレベルの魔石商になってしまった件⁉

菅原 みやび

スノーウルフは吹雪と共に

 『ブラックシューティングスター』……。

 言わずと知れたクロウの組織の通り名ではあるが、私はこの名前がクロウの尋常じゃない俊敏さとテレポート魔法の組み合わせからきているものと勘違いしていた。

 そう、あれは百年前以上の昔の話。

 私とクロウが珍しく組まされた2回目の仕事の時だったと思う……。

 私とクロウはガーラング国に来ていた。

 ガーラング国はイッカ国やリャン国と並ぶ三大強国であり、年中雪が降り続けている厳しい広大な大地からなっている国だ。

 広大な土地から産出される鉱石や厳しい寒さでも育つ農産物、更にはその大地で逞しく育った人々がガーランド国を支えていた。

 自然環境が厳しい事から難攻不落の天然要塞である山々があることも、強国の理由の1つでもあった。

 そんな糞寒い土地に私達はマジックアイテムと防寒具を頼りに、珍しく鉱山に魔石を取りに来ていたのだ。

 「盗みじゃない仕事」と聞いて喜んで来たら、このザマである。

 私達は吹雪が激しい中、クロウの魔法と長のマジックアイテムを頼りに黙々と目的地に向い登山して行く。

「クロウ貴方、長から最近また魔法を習っているらしいじゃない」
「……そうですね」

「どんな魔法なの?」
「簡単に説明すると一撃必殺のヤバイ魔法ですね!」

「た、端的すぎてイメージが湧かないんだけど……」
「あ、あはは……すいません。私も説明がしにくいので……」

「うん、まあ気にしなくていいわよ……」 
「まあ、そう言ってもらえると……」

(とは言ったものの、本当は凄い気になるのよね……)

 私に対し苦笑していたクロウはふと、歩みを止める……。

「ん? どうしたのクロウ? まだ、魔石がある場所はかなり登った先なんじゃ?」

 私は発掘ポイントのマーキングが入った地図を見ながらクロウに問う。

「……敵ですレイシャ様!」
「了解!」

 私達はそれぞれ戦闘態勢を取る。

 なるほど、前方から遠目に吹雪とは別のものがこちらに向かって走って来るのが見える。

「レイシャ様、スノーウルフの群れです! 5体ほど来ます!」
「了解! 私が前に出るのでクロウは援護をお願い!」

「心得ました!」

 そんなやり取りをしている間に、スノーウルフは猛スピードでこちらに向かって走ってきており、先頭の3頭が目と鼻の先に見える!

(この国のスノーウルフは強靭な生命力が厄介なので一撃で仕留めたいところ、一気にいくしかないわね……)

 私は抜刀したレッドニードルを胸元に構え高らかに叫ぶ!

「燃えよレッドニードル! 更に伸びよ!」

 私の命令に答え、胸元のペンダントは真紅の輝きを放つ!

 更にはそれに呼応するようにレッドニードルの刃に紅蓮の炎が灯る。

 その伸びた刃はまるで龍の如く蛇行し、スノーウルフ達が悲鳴も上げる間も無くあっという間に焼き尽くす!

「……ウォオオン!」

 その様子を見ていた後続のスノーウルフ2頭は立ち止まり、警戒とも仲間を失った悲痛な叫びともとれる声をだす!

「今よ、クロウ!」
「はいっ! 炎の弓よ! 穿て!」

 クロウが唱えた炎の弓は足が止まったスノーウルフ2頭を同時に貫き、その2頭はあっという間に火だるまになり灰になる。

 そう、この頃のクロウはドラゴンファングの魔法をまだ覚えてはいなかった。

 理由はクロウは基本補助的な動きがメインだった事。

 更には力加減をクロウが知らなかった事だ。

「まあ、私達にかかればこんなものよね……」
「そうですね……」

「……どうしたのクロウ? 何か心配事?」

 クロウのその浮かない顔が気になり、私は聞いて見ることにする。

「いえ、さきほどスノーウルフが遠吠えをしていたのが気になって……」
「ああ、あれは私達が強すぎて警戒していただけじゃない? ほら足も止まっていたじゃない?」

「そうなんですけど……」
「何がひっかかっているの?」

 というのも、クロウは魔法感知は間違いなく一級品であるし私も頼りにしている。

 更にはそれだけでなく、モンスターの知識もあったりするので気になるのだ。

「さっきのは、複合の雄たけびと感じられるのでもしかしたら……」
「なるほど、仲間を呼んだかもしれないと……?」

 そんな事を話しているからか、私はこの猛吹雪の中、複数の狼の雄たけびが聞こえたような気がしたのだ……。

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