組織から孤島に逃げ落ちた元悪役令嬢は花屋を開きモフモフ動物達とスローライフを送っていたら世界トップレベルの魔石商になってしまった件⁉

菅原 みやび

青き光の中で

 しばらく進むと鉄製の黒い巨大な鉄格子が見えて来る。

「あ、これ、誰か出てくるまでしばらく待たないといけないのかな?」 
「いえ大丈夫でしょう」

 クロウは鉄格子の先端についている握りこぶし大の丸い透明な硝子? を指さす。

「ん? あれがどうしたのクロウ?」
「あれでイハールさんは外の様子を感知しているハズです」

「あ、そっか。貴方此処に来たことがあるんですっけ……」
「はい! 何回かありますね!」

 私達がそんなやり取りをしていると、何と驚いた事に黒き巨大な鉄格子は自動で静かに開いて行くでは無いか!

「ほお……これは大したカラクリじゃわい……」
「ですよね! 入口の装飾ドアも今みたいな感じで自動で開く仕組みなんですよね!」

「へ、へえ……」

 私と小次狼さんは、口を大きく開き感心するほかなかった。

 闇夜を照らす青・赤・黄などの魔法の街灯を頼りにそのまま私達は真っすぐ玄関に向かって進んでいく。

「わあ……私、この屋敷に夜に伺うのは初めてなのでこの綺麗な明かりにはビックリですね……」
「成程、イハール殿が夜に招待した一つの理由はこれじゃろうな……」
「でしょうね……」

 うっすらと輝く月明かりと魔法の街灯の光に照らされた庭園。

 道なりにシンメトリーに植栽された、丸や四角に三角型にカットされた木々……。

 闇夜だからかそれが逆にミステリアスな景色に見えてしまう。

 私達はその景色を楽しみながら、前に進んでいくと大きなヒョウの装飾ドアが見えて来るが……。

「あっ、これは……」
「こりゃ、素晴らしいの一言じゃの……」
「か、感激ですね……」

 私達が驚いたのは装飾ドアもだが、その上に魔法の小さなライトの光で「ようこそ親愛なる友人達」と文字が書かれていたからだ。

 その時、私はその硝子製のライトが紫色にうっすらと輝いているのに気が付いてしまい、はっと息を飲む……。

(丁度あの時もこんな満月の夜だった……。それにこの紫色の硝子製のライトも……? これは果たして偶然なの? それとも……)

「レイシャ様? どうなされたのですか? 顔色が悪いですよ?」
「え? ええっ! い、いやホラっ! この光がさ、そもそも紫色だからっ!」

「そ……そうじゃな、額に汗をかいているのもきっと気のせいじゃろうな……」

 小次狼さんは意地悪なにやけ顔で私を見て、おどけてみせる。

 と、その時、勝手に目の前のドアが静かに開く……。

「あ、ほら! ドアも空いたし、サクサク行くわよっ!」
「えっと、どうでもいいですが、レイシャ様はイハールさんの客間は分るんですか?」

「えっと……」
「さ、クロウ嬢についていきますぞ、レイシャ様……」

 しどろもどろな私に対し、流暢な動作で敬礼し、からかう小次狼さん。

 中に入ると頭上にガラス製の豪華なシャンデリアが見える。

「じゃ、ついて来てくださいね!」
「うん……」
「任せますぞ」

 それに照らされた床の上には真紅の絨毯が敷かれ、クロウはそれに導かれるように2階の階段に上がって行く。

 そのまま屋敷の回廊を進んでいくと、ふとクロウは歩を止める。

「この部屋なので、少しお待ちを」

 クロウは装飾ドアを軽く叩く。

 するとブラッド青年の「空いているのでどうぞ……」という言葉が聴こえて来る。

「じゃ、イハールさん、失礼しますね!」

 クロウが装飾ドアを開き、私達はその客間に入って行く。

 中を見ると、真紅のソファーにゆったり腰かけている青の燕尾服を着たブラッド青年が見えるのだが……。

「……えっと、イハールさん……ですよね?」

 そう、クロウもブラッド青年の持つ違和感に気が付いている模様……。

 その落ち着いた見た目はいつもと変わらないのだが……。

 何というか、纏っている雰囲気がいつもと全然違うのだ……。

 そう、これはまるで……。

「お久しぶりですね。いや、初めましてと言ったほうが正しいですかな? イハール=ブラッド。 いや、ダジリン=ブラッド……」 
「……え?」

 私はその小次狼さんの言葉に驚きつつも、何故か納得してしまう不思議な感覚に陥ってしまう……。

「あ、あ……この氷剣のように澄んだ懐かしい雰囲気、ま、まさか……」

 横目で見るとクロウも驚きと納得の複雑な表情をしていた……。

「ふ、ふふふふ……流石は雷龍小次狼、見事なまでの推察……。だが、半分正解で半分不正解だがな……」
「ほお……?」

 この時私はブラッド青年の胸元に見える大粒の青き魔石が怪しい輝きを放っているように見えてしまうのだった……。

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