組織から孤島に逃げ落ちた元悪役令嬢は花屋を開きモフモフ動物達とスローライフを送っていたら世界トップレベルの魔石商になってしまった件⁉

菅原 みやび

忍びの匠

「ダジリン=ブラッドでしたね、確か……」

 クロウのその言葉を聞き、私と小次狼さんはお互いに顔を見合わせ一瞬動きを止めてしまう。

「ダ、ダジリンって……ダジリン国の王族の名前と同じ?」
「これは流石に驚きの事実じゃの……」

 とても偶然とは思えないその名に、私も小次狼さんも目を大きく見開いて驚いているのだ。

 そして私はエターナルアザーが何故ダジリン家と深い関係を結べたのか、今になって理解出来てしまったのだ。

「え? でも長はこの話をしたときに『たまたま同じ名だ』って、苦笑してましたよ?」
「……流石クロウ、素直に信じ過ぎね……」

「だが、これで後日イハール殿と会った時に例のペンダントの背面を見て確認すれば色々はっきりするの……」
「ええ……」

 私と小次狼さんはお互いの顔を見て頷く。

 一方クロウは眉を潜め、何か分からないようなピンと来てない表情をしている。

(……だからこそ、長はいやダジリン=ブラッドはクロウにだけ本名のヒントを話したんだろうな……)

 なにはともあれ、これで長の手掛かりは色々掴めそうだ。

「ふむ、まあこれで花屋に聞く内容はあらかた決まったかのお……」

(何やら独り言を呟く小次狼さんだが、よくよく考えると私達は小次狼さんが具体的に何の確認をしにいくのかは知らないのよね……) 

 とか考えていると目の前に、花屋リランダの看板が見えて来るので急いで中に入る。

 店内にはカラフルに咲き誇ったチューリップなど丁度季節ものの花や、マジッアイテム温室で栽培された花々などが綺麗に陳列されていた。

「ほお、中はほどほどに広いのお……」

 小次狼さんが言うように中は喫茶店くらいの広さがあった。

「へえー、オシャレな小ばさみも売ってるんですね!」
「そうね……それに小動物の陶磁器も鉢植えに合って可愛らしいかな?」

 クロウが感心したように、王室ご用達のお店であるからか、洒落た小物や鉢なども販売されており中々センスが良い模様。
 
 赤レンガで作られた小洒落たお店、印象はそんな感じだ。

「おや? 貴方方はもしや、先程店の前に立たれていた方達では?」

 店に入ると同時に店のオヤジさんに話しかけられる私達。

 どうやら、そのオヤジさんは私達を見ながら店じまいの用意をしている模様。

 白のエプロンを着た、チョビ髭のちょっと小太りの愛層が良いオヤジさんだった。

「ああ、閉店間際にすまないね。丁度知人のイハール殿とそこでお会いしたもので、少しばかりお話をしていたのですよ」
「えっ! ああ経営主様とお知り合いでしたか! これは失礼を……」

 ホウキで店内を掃除していたオヤジさんは申し訳なさそうに、こちらに向かって軽く会釈をする。

 少し、ほんの少しだけ眉を潜めた小次狼さんは少し考え、再びオヤジさんに話しかける。

「だいぶ前の話になりますが、紫色のヘリオトロープを最終的に頼まれたのはイハール殿本人ですかな?」
「は、はあ……よくご存じで……」

(えっ!)

 私は小次狼さんと花屋のオヤジさんの会話の内容に驚き、思わず声がでてしまいそうになる。

「ふむ、では最後にもう1つ。その話をイハール殿がされたのはもしや夕方以降……とか?」
「は、はあ、確かにそうですが。よくそんなことまで、よくご存じで……」

「いや、なに今後商売をしていく中で、イハール殿がどんな方か知りたくて色々店主殿に聞いた次第です。お仕事のお邪魔をしてしまい申し訳ない……」

 小次狼さんはにこやかに笑い、軽く花屋のオヤジさんに会釈する。

(う、上手い! 流石小次狼さん……)

 最小の会話で最大の情報を引き抜いて行く、流石は元忍びの統領。

 トーク能力も超一流である。

「あ、すいません! この子リスと小鳥さんの陶磁器を1つずつ下さい!」
「あ、はい! 毎度どうも!」

 ……対してクロウは流石マイペースである……。

(ま、まあ、そこがいいとこではあるんだけど……ね) 

 用事が済んだのか、小次狼さんはもう一言も話さない。

「では、すいません……お邪魔しましたあ……」

 私達は小物を購入した後、店のオヤジさんに手振りお店を出ていく。

「まあ、順不同になったが、逆にそれが色々良かったのお……」
「そうね……」

(そう、小次狼さんが言う通り、とんでもない情報が色んな人から聞けたしね……) 

「そんな事より、私お腹ペコペコなんです! 折角だから美味しいもの食べましょうよ!」
「ああ、はいはい……」

(まあ、今回の功労者はクロウだし、まあいいかな……)

 私は情報過多で頭の方はもうお腹いっぱいであるが……。

「ほっほ……折角じゃから儂が夕飯は奢らせてもらいましょうかの? 姫君たち……」

「わーい!」
「あ、じゃあ美味しくいただきます」

 こうして私達は小次狼さんにエスコートしていただき、イッカ国の美味しい魚料理を食していくのだ……。

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