組織から孤島に逃げ落ちた元悪役令嬢は花屋を開きモフモフ動物達とスローライフを送っていたら世界トップレベルの魔石商になってしまった件⁉

菅原 みやび

ヘリオトロープの花言葉は?

 すっかり打ち解けた王妃は宝石箱に入っていた指輪を手に取り、積極的に私と会話を続けていく。

 リングのサイズやら、保存の仕方などなど聞かれた事に対し柔軟な対応をしていく私。

「この指輪の魔石に刻まれた印章はもしかして?」
「ええ、このイッカ国のシンボルであるサーベルタイガーになります。なお魔石である為、当然マジックリングになってまして……」

 そう、イッカ国では王族が婚姻する場合、必ずこのサーベルタイガーの印章が刻まれた宝石の指輪をつける習わしがある。

 純銀の装飾リングの中央で眩い輝きを放つ、真紅の4カラットの大粒の魔石。

 楕円形状の魔石の天井であるファーブルファセットの部分に刻まれたサーベルタイガーの印章は光輝なる王族が身に着けるのに相応しいと言えよう。

「そうですか、説明ありがとうございます! 効果は知っているので大丈夫です!」

 王妃はリングをまじまじと見つめながら、何故かとても嬉しそうに笑う。

(……あ、あれ? この結婚乗り気じゃないと思ってたのだけど? あれれ?)

 私はさっきとは全く違う反応を示す王妃のその態度に物凄く困惑する。 

(さて、小次狼さんの意見はどうなんだろうか?)

 小次狼さんの姿を見ると、少し眉を潜め自身の首に手を当て、首を横に振っているのが見える。

 これは第三者から見たら、立ち疲れてのトレッチをしているように見える。

 が、これも実は私達の隠しサインで【自分はそうは思わない】というジェスチャーになる。

(えっと、じゃあ小次狼さんは王妃が第二王子と愛し合っていると?)

 私も、独自のジェスチャーを送りそれを確認する。

 すると再び自然体で腕組みし、目を閉じる小次狼さん。

(ええっ! う、うーん? じゃあ少し整理してみようかな。先程王妃が喜んでいたのは、マジックリングそのものではなく……あっ!)

 私はマジックリングを見ていた王妃の目線を再び追う。

 そしてある事に気が付いてしまい、顔が真っ青になるのが自分でも分ってしまう。

(それにこの部屋に飾っている紫の花……! こ、こうしてはいられない!)

「あ、あのすいません、あらかた説明も終わりましたがよろしいでしょうか?」

 私はあえて若干もじもじする。

「あっ、ああ! すいません気が付かなくて! もう説明は十分ですよ」
「あ、ありがとうございます! では失礼します! 出来れば今後とも御贔屓に!」

 私達は急ぎ足で部屋を出ていく。

「こちらこそ、あ、お手洗いは部屋から出てすぐ右の部屋ですよ!」
「す、すいません、助かります!」

 そう、私は「お手洗いに行きたいから敢えてもじもじした」のだ。

 多少演技は入っているものの、先程頂いた白ワインで若干催してきた事実がある。

 王妃様は聡い方なので、申し訳ないが逆にそれを利用させてもらった。

 とても恥ずかしい演技ではあるが、緊急にあの部屋を出る必要があったので止む無しである。

 私はお手洗いを終え、回廊を歩きながら小次狼さんと小声で話していく。

「小次狼さん!」
「うむ、困ったことになったのお……」

「ごめんね、巻き込んでしまって」
「いや、まあこの依頼を受けたのはそもそも儂じゃしのお……」

 何故こんな話をしているのか?

 それはあの部屋に飾っている花が【紫色のヘリオトロープ】だった事に私達が気が付いてしまったから。

 即ち、私が昔所属していた怪盗組織【エターナルアザー】が怪盗予告に必ず使う贈り物の花だったからだ。

(うーん、これは困った……)

 営業を終えて脱力している私は、海より深いため息をつくのだ……。

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