組織から孤島に逃げ落ちた元悪役令嬢は花屋を開きモフモフ動物達とスローライフを送っていたら世界トップレベルの魔石商になってしまった件⁉

菅原 みやび

月下の悲愴曲

 正直私の生涯プランは組織の試験をなんとか合格し、ほとぼりが良いとこで組織からなんとか抜ける気でいた。

 理由としては、怪盗というリスキーな組織、当たれば裕福でいられるかもしれないがやはり世間では俗という認識。

 しかも失敗すれば間違いなく死がつきまとう。

 私の親しい同志たちも実際何人か消えて行った……。

 何が真っ当と言われると組織以外の環境に置かれていない私も困るが、だからかまったりとした田舎でのスローライフ生活にこの時から憧れを抱いてはいた。

 が、幹部となるとまた少し話は変わって来る。

 理由は幹部特権が与えられ、組織を変革出来るから。

 つまりある程度自由は効くし、この世界的怪盗組織を意のままに動かせるのだ。

 勿論、超常的な力を持つ長の元でにはなるが。

(どうせならイチかバチか組織を自分の手で変えてみるのもアリかもね!)

 この時、私の腹は決まった。

 長はそんな私の考えをまるで理解しているかのように、私に向かって満足そうに微笑みゆっくりと頷いている。  

「どうするレイシャ?」
「勿論喜んで引き受けるわ」

「そうか、君ならそういうと思っていたよ! では試験を始めよう!」
「は! お願いします!」

 私は再び少し緊張しながら返事をする。

「そんなに緊張しなくていい。すぐ終わる……」
「え……?」

 長は真紅の玉座からゆっくりと立ち上がり、こちらに向かって優雅に歩み寄って来る。

「……あ、あの? 一体何を?」
「レイシャ君は永遠の命に興味はないか?」

「えっ⁈」

 長の言っている意味は分からなかったが、何故か危機感を感じ私は少し後ずさる。

 が、その時、驚いた事に何者かに肩を掴まれる!

(こ、この部屋には誰もいなかったはず? それに私に気配を感じられずに近づける者が長以外にいるなんて……)

 自慢じゃないが私は人の気配の察知は得意だった。

 だからこそ、今までなんとか怪盗をやり続け生き残る事が出来たのだから。

 そして、私は気が付いてしまう。

(肩を掴んでいる手が……冷たい……⁈)

 そう、明らかに人の手ではない。

「レイシャ、君が今感じた通り君の肩を掴んでいる者は私の忠実な僕だよ……」

 私はその長の一言で私の肩を掴んでいる者の正体を察してしまった……。

 更には試験で行方不明になった者の末路も。

 そして、これから私がどんな目に合うかも……。

「や、やめて下さいっ……!」

 私は身を震わせ首を横に振り、長に必死で懇願する。

 その為か月明かりを受けた私の銀髪は激しく揺れる。

「怖がらなくていい……。なあに、すぐ済む……」
「い、いや! わ、私はエルフである事を捨てたくないの!」

(それに何よりも、太陽の元を歩けないのは嫌! 海でのバカンスも出来なくなるのは……)

「もう遅い! 君は幹部試験を受ける事を常任した! これは君と私の契約なのだよ、レイシャ!」
「あ、ああっ……!」

 自身の首元に凄まじい激痛と熱い何かが流れ落ち、意識が次第に遠のいていくのを感じ取る私……。

 私はこの時痛みと共に思い知ったのだ、いくら優しく感じていても長は人外のバンパイヤ。

 人やエルフの常識は一切通用しないし、バンパイヤ独特の価値観を持っているのだと。

 それに高位のバンパイヤは不思議な魔法やスキルがあると聞いたことがある。

 そう、例えば「人の思考が読める」とか……。

 今覚えば、当時の私の考えは長に筒抜けだったし、さぞかし扱いやすかっただろう。

 こうして私の悲鳴とも懇願ともとれる声が月夜の城内に静かに響いていく……。

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