亡命した貴族令嬢は隣国で神のような愛に包まれ、名家奪還の大逆転を遂げます!

鼻血の親分

Episode10

「では私、このお屋敷を出て行きます」

お父様、お母様、御先祖様、申し訳ございません。私に伝統あるベリューム家をお守りする事はもはや出来ません。これ以上、惨めな思いをしながらここに踏み止まるほど強くはないのです。どうかお許しください。

「出て行くだと?本気か!?」
「はい。僅か三ヶ月でございましたがお世話になりました。ベリューム家を末長くお願い申し上げます。……では、ご機嫌よう」
「ま、待ってくれ、フロリアン!」
「リュメル様ン、宜しいじゃありませんか。出て行くと言うのならン」
「し、しかし」
「世間の荒波に揉まれれば、いずれ戻って来ましょう。今は本人のお好きなようにさせてあげるべきですわ。それに政治秘書ならスカーゲンがいるではありませんかン」
「う、うむ。そうか……そうだよな」

私は急いで屋根裏へ戻り、奥様仕様のドレスから普段着に着替えると、僅かな荷物をカバンに押し込み出掛ける準備を始めました。でも行くあてなどございません。私は途中から涙が溢れてしまいました。そこへ丁度ユリカが戻って来たのです。正直に申せば、ユリカを心の何処かで待っておりました。

「お嬢様、如何なされたのです!?」
「ううっ……ユリカーー!うわーん!」

私はユリカの胸で大泣きしました。ユリカは私の背中を撫でながら、ゆっくりと話を聞いてくれます。

「お嬢様、私も共に参ります」
「ユリカ?駄目よ。巻き込めないわ」
「お嬢様のいらっしゃらないお屋敷に私の居場所なんてございませんよ」
「……ありがとう。でも何処へ行けばいいの?」
「私にお任せください。実は……」


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚・*:.。. ☆☆


私たちは翌朝、密かにベリューム家を後にしました。そして行き着いた先は元執事だったディーナのお屋敷でした。ユリカは時々ディーナと連絡を取っていたのです。

「お嬢様、よくぞ今まで我慢なされましたな」
「ディーナ……ごめんなさい。貴方の解雇を防ぐ事も出来ずに。また、今もご迷惑おかけして……」
「良いのです。私を頼ってくださった事、大変嬉しい限りです。これで大旦那様にも面目が立ちます」
「大旦那?父に?」
「はい。こんな事もあろうかと生前、大旦那様が私に託されたモノがございます」
「何の事かしら?」
「お嬢様、こちらをご覧ください」

ディーナは応接間の金庫から箱を取り出し、私に見せてくれました。そこには封筒が二通と豪華なシルクの織物に包まれた金貨が沢山入っていたのです。

「これって……」
「はい、大旦那様のご遺書でございます」
「い、遺書?初耳ですわ」
「私も中身は拝見してませんよ。お嬢様宛でございますので」

私は白い封筒を手にして、中の便箋を恐る恐る取り出し目を通しました。
そこに書かれていたのは──

『愛するフロリアンへ。
ベリューム家の行く末を、一人娘であるお前に婿養子と言う形で委ねてしまい大変申し訳ない。全ては私のせいである。それでも幸せになれたなら、十年後に遺産を渡すようディーナへ申し渡してある。
しかし、もし耐えきれずベリューム家から距離を置いたとしても、私にはお前を責める資格などない。その時は……』

これは──?

私はもう一通の封筒を掴んだ。




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