亡命した貴族令嬢は隣国で神のような愛に包まれ、名家奪還の大逆転を遂げます!

鼻血の親分

Episode5

「お嬢様、お掃除のことは私にお任せください」
「ありがとう、ユリカ」

ユリカは私に気を遣っているようです。リュメル様から頂いた大切なお仕事に専念して欲しいと思っているのでしょう。

──さてと、やりましょうか。

今ではすっかり綺麗に整頓されたこの屋根裏部屋。窓がなく空気孔から漏れる僅かな光を頼りに古びた机の上で私はペンを取り書類に目を通しました。

私は父のお仕事を通じて、また隣国の『ライクス王国』に留学した経験から、我がカアラプシャン国の実情を憂いていました。ワイロに塗れた政治的腐敗、行き詰まった経済により失業者で溢れる首都。
失礼ながらリュメル様の贅沢三昧な生活及び、外交の主宰でありながら、お仕事を丸投げになされるご姿勢では……

『この国は近いうちにライクス王国に吸収される』
と危惧しております。


゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚・*:.。. ☆☆


一通りのお仕事を終えた私は、二、三点ほどリュメル様にご報告すべきことがございました。カアラプシャン国の外交に関する重大な案件です。直接、リュメル様へお伝えしなければならないと、執務室へ参りました。ところが──

「おい、使用人が御主人様に何の用だ?」
モッペルに見つかってしまいました。これはとても面倒です。
「リュメル様からご依頼されました書類のことで、お話しがしたく……」
モッペルは私から乱暴に書類を奪った。
「話だと?一体何の話だ!?」

あのね、貴女にこの国の重大なるお話しを軽々しく言えるとでもお思いですか?それに話したところで理解できますか?リュメル様にお伝え出来ますか!?

この無知で肥満な女に腹が立ちますが、ここは冷静に対処しないと叩かれます。
「外交の問題で気になる事案がございました」
するとモッペルは私を睨んだまま黙っておいでです。迷ってらっしるようですね。

でも、そこへ更に面倒なへクセが現れました。
「フロリアン?お前、そうやってリュメル様に近づこうとしてるのでしょう?」
「いえ、とんでもございません!」
へクセは鼻息がかかるほどの至近距離で私を睨んでいます。とても近いです。お下品な香水の匂いがプンプンします。
「ふーん。お前がいくら頑張ってもリュメル様は相手にもしないわ」
「そ、そうではなくて!」
「なに?この私と張り合おうとしてるの!?」
「だから……!」

この公妾はやっぱり私を警戒している。リュメル様に会わせようとしない。

「仕事が終わったなら、さっさと持ち場にお帰りなさい!」
ここは一旦、引き下がりましょう。
「かしこまりました」

私は屋根裏へ戻りましたが、どうしても気になって仕方ありません。書類の中にライクス王国への密入国に関する決議文書が含まれていたのです。この問題に対して我が国は関知しないと記されています。

『こんな外交してたら本当に駄目だと思います。リュメル様から国王様へもう一度、ご検討して頂くよう進言してください!』

このような意見を述べたかったのです。この国を案じて……

ああ、やはり直接お会いして申すべきです!

私は人目を忍んで再び執務室に向かいました──




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