光を照らす思い出の写真。

白露時雨

プロローグ

 ヒラヒラと桜が舞う中、中庭のベンチでゆっくりと昼食をとる。
 米のところに『入学おめでとう』の文字があった。
 兄さんが食べれる海苔のりで作ったのかな。
 それにしても、美味しい。
 ほとんど、冷凍食品だけど。
「由一! アンタが言ってきなさいよ!」
「いやいや! これこそ朱音が!」
 ……?
 渡り廊下の方から声が聞こえる。
 背高いなぁ。きっと、先輩なんだろうな。
 赤髪ロングの先輩……可愛いなぁ。
 入学式に代表挨拶してた生徒会長に似てる。
 白髪はくはつの人、めっちゃ目綺麗。
 白と青のグラデーションだ。
 あ、こんなに見てたら可笑しい人って思われちゃうかな……。辞めとこう。
「由一〜!」
「あ"〜! もう分かったよ! ゴホンッ。あ、あの〜」
 なんか、ナンパ師みたいな人だな……。
「えっと……君! 水色髪の! 青いピンで止めてる子!」
 水色髪を、青いピンで止めてる……私?
「ベンチにいる!」
「私?」
「そう! 君君!」
 全く気づかなかった……。
「演劇部! 入らない!?」
「演劇部……?」
「そう! 部員少なくてさ……。お願い! この通り!」
 頭を90°にピシッと下げたナンパ師。
「か、顔をあげてください」
「よろしくお願いします!」
「えぇ……わ、分かりました……入ります」
「マジで!? やった〜! 朱音〜!! 成功した〜!」
 ハイテンションの陽キャ……。
 苦手なタイプだぁ。
「お疲れ様〜。あ、この子? お名前は?」
「い、一条一条水葉みずはです!」
「水葉ちゃんね! 私は宮本みやもと朱音あかね! 演劇部員だよ! よろしくね!」
 コミュ力高い……。
 あ、相槌(あいづち)打っておかないと……。
「よろしくお願いしますね」
「うん! 由一、アンタは自己紹介したの?」
「してない!」
「さっさとしなさいよ!」
「はいっ! まと由一ゆいちです! よろしくね、水葉ちゃん!」
「女の子に『ちゃんづけ』は無いわ〜」
「酷くないっ!?」
 何この人たち……
 面白い。
「あ、的先輩! ここに居ましたか! ちょっと来てください!」
「えぇ〜? 何のよう〜?」
「『何のよう〜?』じゃないですよ! 俺のこと、勝手に演劇部に入れて!」
「でも、入りたいって言ったじゃん」
「人に出される屈辱を知ってください。最悪っ」
「……蓮?」
「あ? ……一条っ!」
 やっぱり〜。
 花見はなみれん私の幼馴染(腐れ縁)で、無気力。
 長年一緒にいるから姿は覚えてる。
「なんでいるんだよ?」
「昼食中で〜す」
「唐揚げうまそっ。頂戴?」
「いや〜!」
 この唐揚げは唯一、自分で作った奴だからっ!
 流石の蓮でもこれだけはあげない!
「ケチ。まぁ良いや。早く行きますよ? 的先輩?」
「圧! 圧が怖いよ!」
「そんなの知りませんよっ!」
 蓮も苦労人だな……。
「早く生きますよ? 兄さん激おこですから」
「げっ。海が……」
「激おこ……っ!」
「「最悪だっ!!」」
 そんなに嫌なのかな?
 そう思いながら私は弁当を頬張る。
 うまぁ。
「それじゃ〜な。一条」
「うん。バイバーイ」
「……おう」
 大変だなぁ、蓮も。

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