陽炎輝夜 ~真夏のかぐや姫~

月親

09.答の無い問い

 昨日と打って変わって、今日は快晴。だからといって、進んで朝陽を拝みたかったわけじゃない。ましてや朝から自宅と実家を往復なんて、やりたくなんてなかった。疲れ果てた。


「ただいま……」


 嗚呼、二時間四十三分ぶりの懐かしい我が家よ。埃と砂とでアレンジメントされた玄関も今ばかりは輝いて見えるぜ。ここはもう俺ワールド、そのまま身体がしたいように倒れさせてやる。


「泉さん、眠いですか?」
「おうとも。何が悲しくて日の出前に呼び出されたあげく、行ったら「もう解決した」と言われ、そこで帰してくれりゃいいものを「折角来たんだから朝メシでも一緒にどうだ」と誘ってきて、ノコノコ誘いに乗ったら何故か俺が作ることになっていて、さらに後片付けまでやらされて今はすでに九時過ぎ。もう、俺はどこから突っ込んでいいのかわからん……」
「それはそれは今日も親孝行しましたね。あ、そうそう。葵さんもう来てますよ。上がってもらいました」
「なっ」


 美月がさらりと、俺を叩き起こす一打を繰り出す。まだ玄関マットにただいまのハグをして一分と経たないというのに。


「そうそう、じゃない。なんで真っ先にそれを言わない。って、いうかどうして俺がいないのに中に入れるんだ?」
「私が、いいですよーって言いました」
「それはわかるとして、鍵は?」
「泉さんが開けて行ったじゃないですか」
「俺が?」


 そんなこと……だって俺のズボンのポケットに鍵は入っている。さすがに鍵を持っていてかけてないってことは無いはず。


「私がお見送りして家の中に戻ったら、泉さんが帰ってきて鍵だけ開けて、また行ってしまいました」
「あーーーっ!」


 そうだ、そういえばそうだ。


「つまるところ、美月が悪い」
「なんで私ですか」
「お前が見送りに来たから、玄関を開け放してきたと勘違いして鍵をかけに戻ったんだ」
「泉さんが、ぼんやりさんだっただけじゃないですか」
「ええい、ああ言えばこう言う。本当にお前は葵ちゃんと違って可愛くな――」


 美月を指差し反撃に出たところで、俺は感じた引っかかりに口を閉じた。美月に向けていた手を戻し、無言で靴を脱ぐ。


「懐いてくれる相手が好き。けれどそうしたら相手はそれでいいのかと疑問に思う泉さん。
泉さんのことを好きなその相手は、どうしたらいいんでしょうね」


 部屋に入る直前に後ろから美月に尋ねられる。


「……」


 俺は美月に、それから自分自身に答えることなく、そのまま部屋へと入った。



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