没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平

第48話 フォー辺境伯邸で商談

 フォー辺境伯の屋敷を訪ねると、アポなしにもかかわらずフォー辺境伯は歓迎してくれた。

「おお! 無事だったか! 心配してたんだ!」

 フォー辺境伯は玄関ホールまで迎えに来てくれて、俺に抱きつきバンバン背中を叩く。
 南部男は情に厚いな。

「大丈夫です。小さいながら領主屋敷も建てました。領地の掌握は順調に進んでいます」

「そうか! そうか! 順調で何よりだ! で、今日はどうした?」

「商人と商談を持ちたいと思いまして。ご挨拶をしたら商店へ行こうと思います」

「まあ、待て! それなら商人たちを呼びつけよう!」

 俺は挨拶だけで、商店へ行こうと思っていたが、フォー辺境伯は商人たちを呼びつけると言う。
 なるほど。俺は年が若いとはいえ、伯爵家の当主だ。
 自分でのこのこ商店へ行って商談をするのは、貴族の立ち振る舞いとして相応しくないということだろう。

 フォー辺境伯に俺の推測を告げると笑顔で頷く。

「そういうことだ。それに、自分の縄張りに呼びつけて商談した方が有利だろう?」

「強かですね!」

「何を言ってるんだ。商人の方が何倍も強かだぞ! 弱気に出たらむしられて、つるっ禿だ!」

 フォー辺境伯の冗談に俺たちはドッと笑う。
 上機嫌のフォー辺境伯が執事に指示を出した。

「ヨシ! 商人たちを呼んでこい! それから、エトワール伯爵たちは、今夜泊まっていけよ! ちゃんとした食事をするんだ!」

 この親戚っぽいお節介な感じは嫌いじゃない。
 俺はフォー辺境伯に感謝して、商人たちを待った。

 一時間もせずに大店の商人四人が集まった。
 四人とも、ここ領都デバラスに店を構えている。
 以前、フォー辺境伯が開いた俺の歓迎会に出席していた商人だ。

 こちら側は、俺、執事のセバスチャン、護衛のシューさん、フォー辺境伯とフォー辺境伯の執事だ。

 場所はフォー辺境伯屋敷の南側にある日当たりの良いサロンになった。
 小ぶりなティーテーブルを挟んで俺とフォー辺境伯が座る。
 他の出席者は立ったままだ。

(貴族の商談って、かなり偉そうな感じなんだな……)

 会議室で名刺交換をしてから座る日本式商談と全く違う。
 日本式なら招いた俺が下座で、商人たちが上座だ。
 自分の記憶にある商談と全く違う進め方に、少々居心地が悪い。

 とはいえ、俺はエトワール伯爵家の当主である。
 堂々としていよう。

 今回は、商人たちと話し合いたいことが多い。
 ドライフルーツ、快速馬車、マジックバッグなど魔導具についても話し合いたい。

 フォー辺境伯を見習って、俺は足を組み小ぶりなティーテーブルに載せられたアイスティーで喉を潤す。

 商人たちの挨拶を受けてから、フォー辺境伯が用件を切り出した。

「よく来てくれた! エトワール伯爵が商談をしたいそうだ。先日話したドライフルーツが出来たので持ってきてくれたぞ!」

「「「「おお!」」」」

 商人たちの期待のこもった視線が俺に移る。
 俺は執事のセバスチャンに目で合図を送った。
 執事のセバスチャンが、サロンの壁際に置かれた大きなテーブルに掛かった白い布を取る。
 大きなテーブルの上に、きれいなパッケージに入ったドライフルーツが並ぶ。

「やっ!? これは!?」
「ドライフルーツは、先日拝見しましたが、この瓶は?」

 商人たちから驚きの声が上がる。
 よし! つかみはオッケーだな!

「ドライフルーツの容器を開発したのだ。遠慮せず手に取って確認をしてくれ」

 商人たちが、わらわらとドライフルーツのあるテーブルに群がる。

「軽い!?」
「ガラスではないのか!?」

 ドライフルーツよりもプラスチックの容器に注目が集まってしまっている。
 一番年輩の商人が俺にうやうやしく頭を下げて質問をした。

「エトワール伯爵様。このドライフルーツの入った容器は何でございましょうか?」

「その透明な容器はプラスチックという新開発の素材だ。今後、エトワール伯爵家から出荷するドライフルーツは、プラスチック容器に入れる」

「容器だけ、売っていただくことは出来ませんか?」

「容器だけか……」

 ダメではない。
 ダメではないが……、プラスチックは俺の生産スキルで作っているのだ。
 他の人は作れない。

 俺は他にも作りたい物がある。
 プラスチック製造マンになるのは、ちょっと嫌だ。

 俺は商人の申し出を断ることにした。

「容器だけ売り出す予定はない」

「左様でございますか……残念です……。このプラスチックなる容器は、軽くて非常に良いと感じたのですが……」

 商人たちは、非常にがっかりしている。
 俺は疑問に思ったことを、商人たちに質問してみた。

「その方たち商人は、マジックバッグを持っているであろう? マジックバッグがあれば、重さは関係ないと思うが?」

「マジックバッグを持っているのは、一部の商人だけでございます」

 俺は商人たちに事情を話させた。

 大店の商人でもマジックバッグは、一つしか持っていないらしい。
 まず貴族、次に魔物と戦う冒険者に優先販売されるそうだ。
 商人に回ってくるマジックバッグは少ない。

「では、商品の運搬はどうするのだ?」

「中堅どころの商人は馬車。若い商人は背中に商品を背負って、村から村を歩いて回ります」

 行商人だな……。
 俺は王都に住んでいたので、地方の商人事情に疎かった。

「ここ領都デバラスは、良い方でございます。ダンジョンが四つございますので、ダンジョンからマジックバッグが見つかることが、時々ございます。」

「なるほど。それでプラスチックの軽さに興味を示したのか」

「左様でございます。この軽さでしたら行商人も扱いやすうございます。それにこのプラスチックの瓶は透明で、中身がきれいに見えるのもよろしゅうございます」

 おっ! パッケージの意味に気が付いたか!
 俺は機嫌を良くした。

「そうなのだ。ドライフルーツが良い物に見えるであろう?」

「はい。ドライフルーツを、そのまま売るよりも、高い値付けが可能でございます。それから、ここには『マリーのドライフルーツ』と文字がございますが?」

「妹のマリーが作ったドライフルーツだ。領民が作ったドライフルーツは、文字の入っていない容器に入れてある」

「なんと! 伯爵様の妹君が!」

「うむ。屋敷の一角にドライフルーツの作業場を作ったのだ。妹のマリーもドライフルーツを作っているし、領民にも手伝わせている」

「なるほど! では、この文字は、エトワール伯爵家直営の証ということですな!」

 年輩の商人が、キラリと目を光らせた。
 プレミアム価格で売れると思っているのかな?

 話がドライフルーツに戻ったと思ったが、年輩の商人は粘る。

「エトワール伯爵様。このプラスチック瓶をお売りいただけませんか?」

 堂々巡りでキリがない。
 俺はプラスチックだけを作る人生は嫌なのだ。
 違う提案をしよう。

「実は、もう一つ商談を持ちたいのだが……。マジックバッグを売りたいが、どうか?」

「ほう! お売りいただけるのですか?」

 年輩の商人は、食いついてきた。
 俺は生産スキルでマジックバッグが作れる。
 魔石は沢山あるので、材料には事欠かない。

「ああ。定期的にそれなりの数を売ることが可能だ。プラスチックの容器より、マジックバッグの方が嬉しいのではないか?」

「ぜひ! お売り下さい!」

 俺が商人と商談を進めようとすると、それまで黙って聞いていたフォー辺境伯が割り込んできた。

「ちょっと待ってくれ! マジックバッグはダメだ!」

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