転生して5秒で魔王撃破!? ~最強幼女と美少女奴隷の冒険物語~

月城友麻

1. ハーレムはどこへ?

「うっひょーっ! これが異世界!? やったぁ!」

 男子高校生の涼風すずかぜ あおは広い草原でそよ風に吹かれながらガッツポーズを見せる。

 不慮の事故で亡くなった蒼であったが、女神の計らいで夢にまで見た異世界転生を果たしたのだった。

「ステータスウィンドウ!」

 蒼がこぶしを青空につき上げながら叫ぶと、青い画面が空中に現れる。

「キターーーー!」

 蒼は絶叫した。

 ステータスが整然と並んでいる画面、それはまさに異世界転生が成功した証拠でもあった。

 蒼は真っ先に【スキル】の欄を探す。異世界での生き方を決めるのは【スキル】であり、いい【スキル】であればハーレム作って一生面白おかしく生きられるというのが異世界の相場だったのだ。

「めっがみ様~、なにくれたのかなぁ……、え?」

 蒼は凍り付く。そこに書かれていたのは――――。


ーーーーーーーーーーーーーーーー
スキル:即死Death
    指定した対象を殺します
ーーーーーーーーーーーーーーーー

 という物騒な【スキル】だった。

 え……? 何……これ?

 戸惑う蒼。こんなスキル聞いたこともないし、対象の指定方法も分からなかったのだ。

「じゃあ何? 魔王Deathデス! って言ったら魔王死んだりするの? 何なのこのスキル……」

 口をとがらせて眉間を寄せ、ため息をついたその時だった。

 いきなり頭の中に電子音が鳴り響く。

 ピロローン! ピロローン! ピロローン! ピロローン! 

 新たな画面が空中に次々と湧いてくる。

『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』『レベルアップしました』

 はぁ!?

 蒼はあんぐりと口を開け、次々と折り重なっていく画面を呆然と眺めていた。

「ま、まさか……。もしかして本当に!?」

『偉業達成!:世界を闇の力から救いました。称号【救世主】を獲得しました。』
『信じがたい功績!:レベル差998を跳ね返し、勝利しました。称号【ジャイアントキリング】を獲得しました。』

 これはつまり、魔王を倒してしまったということだろう。ただ、『魔王Death!』と、言っただけで魔王は死に、自分に膨大な経験値が加算されているようだった。

「いやいやいや、ちょっと待ってよぉ……」

 いつまでも鳴りやまないレベルアップの効果音に蒼は頭を抱え途方に暮れた。転生直後に一言言葉を発しただけで世界を救ってしまった。ゲームだったら超クソゲーである。一体女神は何を考えてこんなスキルを付与したのだろうか?

 はぁぁぁぁ……、えぇっ!?

 深いため息をついて自分の手を見た蒼は、ビックリして二度見してしまった。なんと、それはモミジのようなプニプニの幼児の手だったのだ。

 ま、まさか!?

 慌てて自分の身体を見回してがく然とする蒼。

 そう、蒼は青いワンピースを着た金髪の幼女だったのだ。

「な、何これ!? め、女神様、頼むよぉ……」

 ひざから崩れ落ちた蒼は、これからどう生きていっていいのか皆目見当もつかず途方に暮れる。

「ハーレムは……? ねぇ、女神様ぁ……?」


      ◇


 その頃、はるかかなた上空に一艘いっそうのクリスタルでできた巨大な船がゆったりと飛んでいた。船体いっぱいにあふれかえるあおく透明な水が太陽の光に照らされ、揺らめく水面が幾重にもきらめく光のカーテンをつくりだす。そこを色とりどりの魚の群れが通り過ぎていった。

 空を行く澄み通った青の楽園、それは神々の領域の一つ、水瓶宮アクエリアス。大理石で創られた壮麗な艦橋では碧い髪の美しい少女【大天使シアン】が地上の様子を映し出し、楽しげに笑っていた。

「きゃははは! あー、可笑おかしい! 見た? 今の顔」

 シアンは蒼の崩れ落ちる姿を見ながら大笑い。

 そして、急に真顔になるとビシッと映像の蒼を指さした。

「ハーレムとか考えてるからそうなんの! エッチな小僧はお仕置きだゾ! くふふふ……」

 後ろでそれを見ていた白い法衣の男性はふぅとため息をつくと、シアンに声をかける。

「こんなことしちゃって本当にいいんですか? 女神様にはなんと報告したらいいか……」

「きゃははは! 大丈夫だって。女神様には『任せる』って言われてるんだから。僕の深淵なプランではこの子が世界を救ってくれるんだよ?」

「いや、でも、即死スキルなんて前例ないですよ?」

「ほらきた! 『前例』! そういう事なかれ主義を続けてきたから平和にならないの! 僕がやる以上、前例ない事しかやらないの!」

 シアンはテーブルをバン! とこぶしで叩き、熱弁をふるった。

「はぁ……。でも、前回もそう言って地球一つ吹っ飛ばしましたよね?」

 男性は渋い顔をしてシアンを見つめる。

「あ、いや、あれは……。まぁとにかく! 今回はふっ飛ばさないようにするから大丈夫!」

「次失敗したらこの水瓶宮アクエリアス没収するって女神様言ってましたよ?」

 男性は心配そうにシアンの顔をのぞきこむ。

「ぼぼぼ、没収!? マジで?」

「マジもマジ、女神様相当怒ってましたから……」

 くぅぅぅ……。

 シアンは眼下に広がる壮麗な碧い水の世界に目を落とし、イルカたちが楽しそうに魚の群れを追うさまを見つめた。

 シアンが水瓶宮アクエリアスを任されて三年、イルカもずいぶん大きくなり、懐くようになってきていた。いまさら別れられない。

「……。変更があれば指示ください」

 男性は淡々とそう言うと自分の席へと戻っていった。

「蒼ちゃん……。頼むよ。今度こそあのバカチンをぶっ飛ばしてやるんだから……」

 シアンは悲壮な顔で両手を組み、蒼に祈りをささげた。


        ◇


 そんなやり取りがあったなど夢にも思わない蒼は、今にも泣きだしそうなしょぼい顔でステータス画面を再確認していた。

「確かに『最強にしてくれ』と頼んだし、実際最強なんだろうけど……。コレジャナイ……」

 蒼は肩を落とし、うなだれる。

「可愛い女の子たちとパーティを組んで、ハーレムで愛を育みながら魔王を倒す、それが異世界の醍醐味なんだよ。分かってねーな、女神たちは……」

 蒼はパンとひざを叩き、ため息をつく。幼女ではハーレムなど築きようがない。魔王も倒してしまったし、一体これから何を目標にしたらいいのだろうか?

 蒼は改めてステータスウィンドウを眺める。
 すると下の方にとんでもないものを見つけた。

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特記事項:原点回帰【呪い】
    徐々に若返ります
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 は……?

 蒼は真っ青な顔で固まった。なんと呪いがかかっているではないか。それも若返りとは最悪だった。ただでさえ幼女だというのに、このままではあっという間に赤ちゃんになってしまう。

「うそーん……」

 思わず宙を仰ぐ蒼。

「ちくしょう! 女神め! くぅぅぅ……」

 蒼は可愛い幼女のこぶしをブンと振り、生えてきたばかりの乳歯をギリッと鳴らした。

 なんとかして苦情を言ってやりたい蒼だったが、どんなに喚いてもどこまでも広がる草原に消えていくばかり。この無慈悲な現実に蒼は大きくため息をつく。

 はぁーあ……。

 蒼は澄み渡る青空にぽっかりと浮かぶ白い雲をぼーっと眺めながら、草原を渡るそよ風にただ身をゆだねる。

 高く飛ぶ雲雀ひばりが蒼の悩みなどお構いなしにチッチッチーとさえずっていた。

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