呪いを解くには、セ×クスするしかありません?!
どうあがいても伝わらない
萌はスカイホース社の清掃から外されてしまった。
もう天馬の姿を見ることも叶わなくなった。
清掃員をやめたくなったが、ナレーションの仕事ではまだ十分に稼いでいるとも言えず、清掃員を続けることにした。
しょげ込んだ萌は、清掃員の仕事にもナレーションの仕事にも、没頭した。仕事をしている間は、天馬のことを考えないで済んだ。
母親は口うるさく訊いてきた。
「ねえ、萌ちゃん、天馬くんとはどうなの? うまくいってるのよね?」
萌が無視していると、母親はまた言ってきた。
「天馬くんはずっと留守にしてるみたいだけど、お隣の家も売るのかしら。不動産屋の車が止まってたわ。萌ちゃん、天馬くんから何か聞いてる?」
え、そうなの?
天馬くん、もう二度と隣りの家に帰ってくる気がないの?
萌が思わず母親を見返したことで、天馬から何も聞いておらず、天馬との関係が途切れたことも見抜いたようだった。
「あらあ、萌ちゃん、罰が当たったのよ。天馬くんのこと、大事にしないから。やっぱり萌ちゃんには天馬くんはもったいない人だったのね」
萌は二階へ駆けあがった。
ベッドに伏せると涙が出てきた。
そうだ、罰が当たったんだ。私は天馬くんを手下分扱いしてたから。
私、傲慢だった。
とてもとても傲慢だった……。
それでもキキを恨めしく思う。
どうして、天馬くんにだけ話せないようにしたの? それなら、天馬くんにだけ話しかけられるようにしてくれたらよかったのに。
もっとも、それがキキの手違いだったことなど萌には知る由もない。
泣き終えると考えが前向きになった。
一番好きな人への声を奪われるという大きい支払いが必要だったんだわ。
大きい支払いで、私は天馬くんを助けた。
私が支払ったから天馬くんは今も生きてる。
天馬くんが死ぬことを考えたら、私が天馬くんに話しかけられないことくらいなんでもない。
落ち込んでいる場合じゃない。やっぱり天馬くんを取り戻す。
萌は天馬に手紙を出すことにした。
清掃員の先輩の「手紙」との言葉がヒントになった。
隣の家のポストに手紙はたまっていない。となると、どこかに転送をしているはずだ。それなら、天馬くんに届くはずだ。
どうして思いつかなかったんだろう。
『天馬くんへ。天馬くんが好きです。ひどいことを言ってごめんなさい。また、高遠くんと私は何でもありません。天馬くんに会いたいです』
返事を待たずに二通目、三通目と手紙を書いた。しばらく経っても返事が来ることはなかったが、いつも天馬に話しているように書き綴った。
『天馬くんへ。天馬くんが好きだよ。昨日のオーディションは少しだけ手ごたえがあったよ。寒いから温かくして寝てね』
『天馬くんへ。天馬くんが好きだよ。端役だけど役をもらえたよ』
『天馬くんへ。天馬くんが好きだよ。冬でも脱水症状があるんだって。ちゃんと水分を取ってね』
返事はない。
ひたすら壁打ちとなっている手紙を、萌は書き続けた。
そんな折、所属する声優事務所で、萌の担当者が言ってきた。
「萌ちゃん、ツナグルから、創立10周年記念パーティーへのお誘いが届いてるよ」
「えっ? 松本会長の?」
ツナグルとは天馬との関係がこじれるきっかけとなったナレーションをした会社だ。
萌は声を上げた。
まだ天馬とつながっていた。松本会長を通して、天馬と萌はまだつながっているのだ。
「行きたいなら行く?」
「行きたいです!」
天馬も来る。萌に誘いが来るくらいなのだからきっと招待されている。
ふと見た庭の梅の木が開花していた。まだ厚手のコートが必要だが、すぐそこに春は来ていた。
もう天馬の姿を見ることも叶わなくなった。
清掃員をやめたくなったが、ナレーションの仕事ではまだ十分に稼いでいるとも言えず、清掃員を続けることにした。
しょげ込んだ萌は、清掃員の仕事にもナレーションの仕事にも、没頭した。仕事をしている間は、天馬のことを考えないで済んだ。
母親は口うるさく訊いてきた。
「ねえ、萌ちゃん、天馬くんとはどうなの? うまくいってるのよね?」
萌が無視していると、母親はまた言ってきた。
「天馬くんはずっと留守にしてるみたいだけど、お隣の家も売るのかしら。不動産屋の車が止まってたわ。萌ちゃん、天馬くんから何か聞いてる?」
え、そうなの?
天馬くん、もう二度と隣りの家に帰ってくる気がないの?
萌が思わず母親を見返したことで、天馬から何も聞いておらず、天馬との関係が途切れたことも見抜いたようだった。
「あらあ、萌ちゃん、罰が当たったのよ。天馬くんのこと、大事にしないから。やっぱり萌ちゃんには天馬くんはもったいない人だったのね」
萌は二階へ駆けあがった。
ベッドに伏せると涙が出てきた。
そうだ、罰が当たったんだ。私は天馬くんを手下分扱いしてたから。
私、傲慢だった。
とてもとても傲慢だった……。
それでもキキを恨めしく思う。
どうして、天馬くんにだけ話せないようにしたの? それなら、天馬くんにだけ話しかけられるようにしてくれたらよかったのに。
もっとも、それがキキの手違いだったことなど萌には知る由もない。
泣き終えると考えが前向きになった。
一番好きな人への声を奪われるという大きい支払いが必要だったんだわ。
大きい支払いで、私は天馬くんを助けた。
私が支払ったから天馬くんは今も生きてる。
天馬くんが死ぬことを考えたら、私が天馬くんに話しかけられないことくらいなんでもない。
落ち込んでいる場合じゃない。やっぱり天馬くんを取り戻す。
萌は天馬に手紙を出すことにした。
清掃員の先輩の「手紙」との言葉がヒントになった。
隣の家のポストに手紙はたまっていない。となると、どこかに転送をしているはずだ。それなら、天馬くんに届くはずだ。
どうして思いつかなかったんだろう。
『天馬くんへ。天馬くんが好きです。ひどいことを言ってごめんなさい。また、高遠くんと私は何でもありません。天馬くんに会いたいです』
返事を待たずに二通目、三通目と手紙を書いた。しばらく経っても返事が来ることはなかったが、いつも天馬に話しているように書き綴った。
『天馬くんへ。天馬くんが好きだよ。昨日のオーディションは少しだけ手ごたえがあったよ。寒いから温かくして寝てね』
『天馬くんへ。天馬くんが好きだよ。端役だけど役をもらえたよ』
『天馬くんへ。天馬くんが好きだよ。冬でも脱水症状があるんだって。ちゃんと水分を取ってね』
返事はない。
ひたすら壁打ちとなっている手紙を、萌は書き続けた。
そんな折、所属する声優事務所で、萌の担当者が言ってきた。
「萌ちゃん、ツナグルから、創立10周年記念パーティーへのお誘いが届いてるよ」
「えっ? 松本会長の?」
ツナグルとは天馬との関係がこじれるきっかけとなったナレーションをした会社だ。
萌は声を上げた。
まだ天馬とつながっていた。松本会長を通して、天馬と萌はまだつながっているのだ。
「行きたいなら行く?」
「行きたいです!」
天馬も来る。萌に誘いが来るくらいなのだからきっと招待されている。
ふと見た庭の梅の木が開花していた。まだ厚手のコートが必要だが、すぐそこに春は来ていた。
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