呪いを解くには、セ×クスするしかありません?!

文野

好き、の自覚3

 高遠との撮影は順調に済んだ。萌はトークが上手ではなかったが、途中でネット出演してくれた他のゲストも交えて、それなりに良い動画ができたように思った。萌の下手な部分を高遠は編集で補うだろう。
 終わったあと、高遠が言ってきた。

「また、近いうちに出ない? 俺、来春、大学卒業したら外資系コンサルで働くからさ、今しかできないから精いっぱいやるつもりなんだよね」
「へえ、じゃあ、高遠くん、本業は大学生だったんだ、すごいね」

 萌は高遠もフリーターだと思い込んでいた。自分の立ち位置でしか他人を見れないものだ。

「俺、さりげなく萌ちゃんにアピールしているつもりだけど」
「え?」
「外資系コンサルって言えば、大抵の女の子は食いつくんだけどな」
「私も食いついたほうが良かった?」
「俺たち、付き合わない? 急だけど、前々から知った仲だし。やっぱり、俺、萌ちゃんが好きだ」

 ああ、以前も高遠くんはこんな風にまっすぐに告白してくれたっけ。
 そして、私は何も考えずに、うん、って言った。
 高遠くんをクラスメートとして好きだった。あのときの感情は、恋愛とまでは言えなかった。
 今は、気持ちがないのに受け入れてはいけないことを知っている。

「ごめん、私、付き合えない」
「ひょっとして、桐生さん? あの人、昔から女関係では悪い噂しかないよ。今も女優と噂があるし」
「違うの。今は、声優に専念したい。今が頑張りどきだと思ってるから」
「そっか、残念だな。でも、萌ちゃんらしいよ。じゃあ、俺ももっと上を目指すかな」

 高遠はさらりと言った。
 帰り際、結構な額の報酬を渡してきた。驚いて押し返そうとするも受け取らなかった。

「萌ちゃんは、声優を仕事にしたいんでしょ。それなら、正当な報酬を受け取らないとだめだ。自分を安売りしてたら二流にしかなれない」

 高遠の言葉には説得力があった。さすがにフォロワーを多く抱えた製作者の言葉は違うと思った。萌は素直に受け取ることにした。
 高遠が自動車で送ってくれることになった。ガレージで自動車に乗り込んだところで、高遠が萌に訊いてきた。

「家、前と変わってない?」
「うん。うちの家、知ってたの?」
「好きな子の家くらい、調べるでしょ」

 ガレージの自動シャッターが音を立てて上がっていく。
 開き切ると、誰かがこちらを向いて立っていた。
 驚いたことに、腕組みをした天馬が発車せんばかりの自動車の正面に立っている。
 なんで?
 もしかして、ずっと待ってたの?
 見れば、通りの端っこに、天馬の自動車があった。
 運転席の高遠が舌を鳴らす。

「この人、しつこいね」
「私、天馬くんに送ってもらうね」

 わざわざ高遠に自動車を出してもらうこともない。天馬とは帰る先はほぼ同じだ。
 助手席から降りかける萌を高遠は引き留める。

「いいよ、俺が送る」
「でも」

 高遠は運転席の窓を開けて、天馬に言った。

「どいてください、轢きますよ」
「タカトーくん、今日のところは、俺に譲って欲しい。萌と話がある」

 天馬は助手席まできて、ドアを開けた。

「いやです。あなたは信用ならない」
「萌の彼氏なら、萌を信用して欲しい」

 高遠くんは彼氏じゃない、そう言おうとするも、萌はまたもや声が出なくなっていた。
 天馬に手を引かれて、萌は助手席から降りた。高遠は引き留めなかった。

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