一途な淫魔の執着愛

森本イチカ

ーー3

 色鮮やかできらびやかな空間。赤と緑の装飾が多いのは今がクリスマスシーズンだからだ。今日も日和は綾乃と一緒に洸夜の会社の婚活パーティーを手伝いに来ている。たくさんのケーキを前回と同様綺麗に並べると、はなやかな空間効果もプラスされてか、より一層ケーキたちが宝石のように輝いて見える。クリスマスイベントなのでシュトーレンやブッシュ・ド・ノエルなどクリスマスらしいケーキのラインナップにした。


「今日も社長のヤキモチが炸裂しちゃうのかしら〜」


 洸夜のヤキモチを妬いている姿がみたいらしく綾乃はすでにワクワクしている。


「何言ってんのよ、私達は仕事でここにきてるんだからね?」


「分かってますよ〜。なに? 日和はもうパーティーに参加したいって言わない感じ? 運命の王子様に出会えたもんね」


「なっ、ち、違うからっ!」


「はいはい、素直じゃないんだから。もたもたしてるとすんごいセクシーダイナマイト美女が現れて取られちゃうかもよ?」


「そ、そんなことあるわけ無いじゃない」


 そう言いながらもそうなってしまたらどうしようと考えてしまった。洸夜はイケメンだ。ちょと現れただけで周りにいる女性は洸夜に釘付けになるほど、男性の艷やかな色気を放っている。「油断禁物!」と綾乃に言われ、確かに油断禁物かもしれない。しれないけれど、洸夜は淫魔……なんだよね? 人間じゃないってこと……だよね? 好きと伝えたい想いもあるけれど、どうしてもあと一歩が踏み出せない。


 そんな雑談をしているとあっという間にゾロゾロと会員の人が会場に入ってきた。その中に見覚えのある姿を日和は見つけた。向こうも日和に気づいたのか嬉しそうな満面の笑みで近づいてくる。


「日和さんっ! また日和さんのケーキだって聞いて来ちゃいました」


 悠夜が興奮している子犬のようにキラキラした眼差しで並んでいるケーキたちを見つめている。こんなに可愛い子を警戒しろって言うほうが無理がある。


 悠夜さんは本当にケーキが好きなんだなぁ。


 嬉しそうな祐也の姿を見て思わず頬が緩む。


「今日も存分に食べていってね」


「ははっ、もう婚活というよりケーキ目当てだよね、僕。なかなかいい出会いもないし」


「人との出会いって簡単そうで難しいのよね」


 そうだ、出会いとうのは難しい。だから婚活サイトだってあるし、マッチングアプリなんかも存在する。そんな難しい中で自分をこんなにも強く想ってくれる人……人なのかはハッキリしていないけど、素直に真っ直ぐ愛情表現してくれる人とはもう出会えないかもしれない。


「日和さんはいい人いないの? この前ケーキ屋に来た人とか、もしかしてそう?」


「へぇ!?」


 心臓がビクッと飛び跳ねた。悠夜は多分この前見せで鉢合わせた洸夜のことを言っているのだろう。あの日ものすごく洸夜に睨まれていたから悠夜もさすがに気が付いていたのかもしれない。


「うーん。いい人……なのかな」


「ふーん。そうなんだ」


 パタパタ振っていた尻尾がすぅっと静かに静止したような気がする。


「日和さん、ちょっと来て」


「え? ちょ、ちょっと!」


 ギュッと痛いくらいに腕を強引に引かれる。いつもと違う雰囲気の悠夜に反射的に恐怖心が出てきた。


 ――気をつけろ。


 洸夜の言葉が突然頭をよぎった。あれはただの嫉妬から出た言葉だと思っていたから気にしていなかったけれど、今は何故かその言葉がしっくりしているような気がする。


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