一途な淫魔の執着愛
ーー1ー2
「ご、ごめんなさい。忙しくてつい返すの忘れちゃってたわ……」
「パティシエって忙しいんですね。そりゃそうか、こんなにたくさんのケーキ作ってるんだもんな」
悠夜はキラキラした瞳で並んで居るケーキたちを見渡している。
……いえ、仕事は確かに忙しいけれどそれ以上に頭の中を占領している奴がいるからなんです。
なんてことは口が裂けても言えない。でも忙しいということにしておこう。そうすれば連絡を返さなくてもいい口実になる。
「そうなのよ! 朝も早くて、夜も遅いし休みも少ないしで忙しいんだよね!」
アハハと笑いながら、軽くブラック会社のように言ってしまい心の中で健に謝った。
「そうなんですね。じゃあ、次の休みの時に僕と――」
「お前、誰?」
悠夜の言葉に覆いかぶさるように明らかに機嫌の悪い低い声が重なった。
スリーピーススーツをビシッと着こなした洸夜がまるで獲物を捉えた狼のような鋭い眼光で悠夜を睨んでいる。まぁあらかた察しはつくけれど。
「何しに来たの?」
日和の冷ややかな声。
「なにしにって日和の顔を見に来たんだ。婚約者なんだから店にいつ来たっていいだろう? それに俺はケーキだって買いに来たんだ」
わざわざアピールするように婚約者と強調して言うものだから溜息が出る。婚約者だなんて認めてはいないのに。認めてはいないけれど、最初に比べて悪い気はしなく、むしろ少し嬉しいと思ってしまい、胸の奥がそわそわくすぐったい。
「じゃあ、日和さん、また連絡しますね!」
「あ、うん。お買い上げありがとうございました」
危険を察知したかのように悠夜は自分に火の粉が降ってくる前にシュガーベールを出て行った。何か言いかけていたような気がしたけれど、気のせいだろうか。
「なぁ、あいつ誰? 日和のこと名前で呼んでた」
不機嫌な声に不機嫌な態度の洸夜。悠夜の後ろ姿を睨みつけている。
「誰でもいいでしょう。仕事中なんで帰ってもらえます?」
胸の奥がそわそわしてしまっている事を気づかれたくない一心で冷静を装いすぎて冷たい態度になってしまう。
「俺はお前が他の男にその可愛い笑顔を振りまくのは嫌だ」
この前も同じような事を言っていたが、そんなことを真剣な顔で言われても困る。困るけれどドキッとしてしまった自分もちゃんちゃらおかしい。昨日から自分が自分じゃないような気がするくらい洸夜の一言、一言にいちいち反応してしまう。洸夜のことを深く知ってしまったからだろうか。心音を掻き回すように乱されてしまう。
「仕事なんだからしょうがないでしょう」
乱されているけれど平然を必死で装った。
「日和は俺の婚約者だろ?」
「だから、婚約者じゃないってば。ケーキ買いに来たなら早く選びなさいよ」
「日和、さっきのあの男には気をつけろよ。なんか気に食わない目付きだった。もしかしたら日和の事狙ってるのかもしれねぇからな」
話が噛み合わない。早くケーキを選べと言ったのに洸夜は違う話をしだす。しかも悠夜が自分の事を好きかもしれないって? そんな事あり得ない。悠夜はケーキが好きで気に入ってくれているだけだ。自分とは真逆の可愛らしい子犬のような目つきが気に入らなかったのだろうか。
「いいから早く選びなさいよ」
そう急かさせると店の中に「社長、遅すぎます!」とスーツ姿の秘書らしき男性がタイミングよく洸夜を引っ張るようにして店を出ていった。
本当嵐のような男だ。いきなり現れては日和の心をガサガサとかき乱して急に去っていく。
「今日の社長も独占欲が最強だっだわ。あの爽やかイケメンに嫉妬してたわね、あれは」
うんうん、と綾乃が顎に手を添えて頷いている。
「爽やかイケメンって……」
いつの間にか悠夜の事を綾乃は爽やかイケメンと呼んでいる。確かに側から見たら黒髪の笑顔が可愛い爽やかイケメンなのかもしれない。
「独占欲なんだか、俺様なんだか……」
日和は呆れたように溜息をついた。
「婚約者だなんて焦れったいこと言ってないでさっさと結婚しちゃえば?」
「な、何いってんのよ! そんなの有り得ないでしょ。付き合ってもいないんだし」
「え、そうなの? てっきりもう付き合ってるのかと思ってたわ」
「本当あの男何考えてるんだか分からないし……婚約者なんかじゃないから」
そうだ。あんなに愛おしそうに日和を見つめ、好きだと何度も囁き、あんなにキスをして、セックスする。なのに日和と洸夜は付き合ってはいない。この関係を言葉にするならなんて言うのだろう。恋人? いや、付き合ってとは言われていない。セフレ? とはまた違う、曖昧な関係にただただ、もやもやする。
「パティシエって忙しいんですね。そりゃそうか、こんなにたくさんのケーキ作ってるんだもんな」
悠夜はキラキラした瞳で並んで居るケーキたちを見渡している。
……いえ、仕事は確かに忙しいけれどそれ以上に頭の中を占領している奴がいるからなんです。
なんてことは口が裂けても言えない。でも忙しいということにしておこう。そうすれば連絡を返さなくてもいい口実になる。
「そうなのよ! 朝も早くて、夜も遅いし休みも少ないしで忙しいんだよね!」
アハハと笑いながら、軽くブラック会社のように言ってしまい心の中で健に謝った。
「そうなんですね。じゃあ、次の休みの時に僕と――」
「お前、誰?」
悠夜の言葉に覆いかぶさるように明らかに機嫌の悪い低い声が重なった。
スリーピーススーツをビシッと着こなした洸夜がまるで獲物を捉えた狼のような鋭い眼光で悠夜を睨んでいる。まぁあらかた察しはつくけれど。
「何しに来たの?」
日和の冷ややかな声。
「なにしにって日和の顔を見に来たんだ。婚約者なんだから店にいつ来たっていいだろう? それに俺はケーキだって買いに来たんだ」
わざわざアピールするように婚約者と強調して言うものだから溜息が出る。婚約者だなんて認めてはいないのに。認めてはいないけれど、最初に比べて悪い気はしなく、むしろ少し嬉しいと思ってしまい、胸の奥がそわそわくすぐったい。
「じゃあ、日和さん、また連絡しますね!」
「あ、うん。お買い上げありがとうございました」
危険を察知したかのように悠夜は自分に火の粉が降ってくる前にシュガーベールを出て行った。何か言いかけていたような気がしたけれど、気のせいだろうか。
「なぁ、あいつ誰? 日和のこと名前で呼んでた」
不機嫌な声に不機嫌な態度の洸夜。悠夜の後ろ姿を睨みつけている。
「誰でもいいでしょう。仕事中なんで帰ってもらえます?」
胸の奥がそわそわしてしまっている事を気づかれたくない一心で冷静を装いすぎて冷たい態度になってしまう。
「俺はお前が他の男にその可愛い笑顔を振りまくのは嫌だ」
この前も同じような事を言っていたが、そんなことを真剣な顔で言われても困る。困るけれどドキッとしてしまった自分もちゃんちゃらおかしい。昨日から自分が自分じゃないような気がするくらい洸夜の一言、一言にいちいち反応してしまう。洸夜のことを深く知ってしまったからだろうか。心音を掻き回すように乱されてしまう。
「仕事なんだからしょうがないでしょう」
乱されているけれど平然を必死で装った。
「日和は俺の婚約者だろ?」
「だから、婚約者じゃないってば。ケーキ買いに来たなら早く選びなさいよ」
「日和、さっきのあの男には気をつけろよ。なんか気に食わない目付きだった。もしかしたら日和の事狙ってるのかもしれねぇからな」
話が噛み合わない。早くケーキを選べと言ったのに洸夜は違う話をしだす。しかも悠夜が自分の事を好きかもしれないって? そんな事あり得ない。悠夜はケーキが好きで気に入ってくれているだけだ。自分とは真逆の可愛らしい子犬のような目つきが気に入らなかったのだろうか。
「いいから早く選びなさいよ」
そう急かさせると店の中に「社長、遅すぎます!」とスーツ姿の秘書らしき男性がタイミングよく洸夜を引っ張るようにして店を出ていった。
本当嵐のような男だ。いきなり現れては日和の心をガサガサとかき乱して急に去っていく。
「今日の社長も独占欲が最強だっだわ。あの爽やかイケメンに嫉妬してたわね、あれは」
うんうん、と綾乃が顎に手を添えて頷いている。
「爽やかイケメンって……」
いつの間にか悠夜の事を綾乃は爽やかイケメンと呼んでいる。確かに側から見たら黒髪の笑顔が可愛い爽やかイケメンなのかもしれない。
「独占欲なんだか、俺様なんだか……」
日和は呆れたように溜息をついた。
「婚約者だなんて焦れったいこと言ってないでさっさと結婚しちゃえば?」
「な、何いってんのよ! そんなの有り得ないでしょ。付き合ってもいないんだし」
「え、そうなの? てっきりもう付き合ってるのかと思ってたわ」
「本当あの男何考えてるんだか分からないし……婚約者なんかじゃないから」
そうだ。あんなに愛おしそうに日和を見つめ、好きだと何度も囁き、あんなにキスをして、セックスする。なのに日和と洸夜は付き合ってはいない。この関係を言葉にするならなんて言うのだろう。恋人? いや、付き合ってとは言われていない。セフレ? とはまた違う、曖昧な関係にただただ、もやもやする。

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