一途な淫魔の執着愛

森本イチカ

ーー1

 ゆっくりと目を開けるとそこは自分のベッドの上だった。真っ白なベッドの上でもなければ、隣に洸夜も居るはずがない。現実のようでこれは夢なのだ。


 たくさんのキスをされ、艶のある声を身体に注ぎ込まれ、なんだか消化不良のようでムラムラする。


「熱が下がって元気になったとたんこれなんだから……こっちの身にもなってほしいわよね」


ぶつぶつと文句を言うが、頬は何故は緩んでいた。
 

 身だしなみを整え、外に出ると少し太陽が顔を出してきたぐらいで薄暗い。日和の熱のこもった溜息は真っ白な色をつけて外の寒い空気と混じり合う。冬の朝は寒すぎる。両手をこすり合わせながら仕事場へ向った。


「おはようございます」


「ん〜おはよーさん」


 健は今日も安定の気怠げな話し方。あぁ、シュガーベールにきたんだなぁと安心する声でもある。


「んじゃあ今日もよろしく〜」


「了解です」


 ショートケーキの準備にとりかかるため、サラサラとボウルにクリーム用の砂糖を計る。


 ふと気を抜けば洸夜の顔が、声が、身体が、頭の中に現れて、心臓をガサガサと乱暴に振り回されているようにざわつかせた。


 あぁ! ダメダメ! 仕事に集中しなくちゃ!


 頭の中を空にする勢いで生クリームをかき混ぜ、その勢いでショートケーキを完成させた。


 十時開店。綾乃の「いらしゃいませ」と明るい声が店内に響く。


 使った道具の洗い物をしていた日和のもとに慌ただしく綾乃が駆けつけてきた。なんだかこんな光景前にもあったような気がする。


「日和っ! 日和のケーキファンのお客さんだよ!」


 自分のケーキのファンと聞き真っ先に浮かんだのは洸夜の顔だった。以前日和の作ったザッハトルテが好きだと言っていた。


 まず会ったら今朝の夢の文句を言ってやる! 
熱が治ったからって調子にのるなってね! 


そう言ってやると意気込み売り場に出る。


「え……?」


 洸夜が来ているとそう思っていたのだが売り場に顔を出すと子犬のような人懐っこいオーラを放つ悠夜がヒラヒラと手を日和に向けて振っていた。


「日和さん! 日和さんにラインしても既読無視するからケーキ買いに来たっていう口実で会いに来ちゃました」


 テヘッという効果音がいかにも似合う笑みを悠夜は見せた。


 あぁ、ライン……。


 悠夜と連絡先を交換した後にラインが来ていたことをすっかり忘れていた。後で返そう、後で返そうと思っていたらどうやらそのまま忘れてしまったらしい。


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