一途な淫魔の執着愛

森本イチカ

ーー4ー5

「やっと分かったのか。待ちくたびれたよ。でももう遅い、俺のここも限界だから日和に挿れさせて」


「えっ!? 何!? ちょっとどうゆうことなの!? んん――」


 腰を打ち付けた洸夜は嬉しそうに口角をあげている。


「俺、淫魔なんだよ」


 は……? 今なんて?


 一瞬思考がフリーズする。


「ずっと日和のことだけを夢で抱いてた。俺のこの形覚えてるだろ?」


 ゆっくりと腰を動かしながら洸夜は話続けるが日和は下腹部からの甘い刺激に耐えるので精一杯で言葉を返せない。日和の上で額に汗をかき眉間にシワを寄せ苦しそう。頬を赤く染めた洸夜の表情に、快楽から漏れ出す声に、妙に嬉しくなる。


 なんなの、この感情。なんで嬉しいの?


「おいっ……それは締め付けすぎだって、あーもうっ、可愛すぎだろ」


 近づいてくる唇をすんなり受け入れて、絡みついてくる舌に吸い付いた。


「あンッ、もうだめッ……へんへん、へんになるからぁッ!」


「大丈夫、そのまま俺に預けて。やっと会えたんだ。ッつ、俺は日和を絶対に離さないよ」


「あぁっ……なんか、へ、ん……ンンッ、やっ、い、イクッ、や、こわいッ」


 夢でなんどもイッていてもリアルでイクのは初めてだ。唐突に怖いと思った。自分がどうなってしまうのか日和は知らない。


「怖くない、俺が日和に導いた快楽なんだから。ほら、思う存分乱れていいんだ」


 肌と肌がぶつかり合いインテリアもなにもないシンプルな社長室に卑猥な音が響く。


「やぁ、もうだめっ、きもちいいッ、いいっ……あぁぁっ――!」


 洸夜が強く腰を突き上げた瞬間官能がはじける。


 荒れる息を整えるすきもない。息を荒げる日和を洸夜は抱きしめなおした。


「上手にイケたな。じゃああと少し俺に付き合ってもらうからな」


「え、あっ、んんッ――」


 キスで喘ぐ口を塞がれ密閉される。なにもかも全てを身体の中に閉じ込められたみたいだ。洸夜は身体揺さぶり、全身に力が入らない。これほどの恍惚に満ちた脱力感は日和は知らない。息を詰まらせた洸夜は日和の身体に軽く覆いかぶさる。


「日和……」


 艶めいた優しい声で名前を呼ばれ、洸夜は身体を離した。フワリと服を身体にかけられたのは洸夜のジャケットだ。日和のふわふわした所に居座る溶けた思考回路は未だに修繕されていない。


「日和、やっと俺のものになった」


 大切な宝物を抱きしめるように洸夜は日和の頭を撫でた。


「……あ、えっと」


 撫でられた頭が気持ちいい。思わず頬をすり寄せたくなったところでハッと自我が戻った。


 ちょ、ちょっとまって! 甘い雰囲気に流されかけた! この人は何者なの!? 夢の中の男なの!? 淫魔ってあの淫魔!?


 急いでふわふわしていた思考回路を叩き起こした。


 淫魔ってあの夢とかにでてきて女の生気を食い物にするとかいう……え!? 私生気吸われて殺されるの!?


 頭の中は沢山の情報でてんやわんやしている。


 ……と、とにかくこの場からにげないとヤバイ!


 今更身の危険を感じた日和は脱がされた服を急いで拾い身だしなみを整えた。


「もう身体は大丈夫なのか?」


 焦っている日和に対して洸夜はどんっと平然な顔をして座っている。


 なっ……! や、優しく話しかけるなっ!


 キッと洸夜を睨み、日和はソファーから勢いよく立ち上がった。


「大丈夫です。このことはお互い忘れましょう。では失礼しました!」


 ペコリと頭を下げ後ろにあるドアをめがけて一直線にどすどすと向かう。


「ちょっと待て」


 洸夜の怒っているような低い声が背中に突き刺さる。


「忘れるってどういうことだ? 日和はもう俺の婚約者だ」


 あと一歩で外に出られるところで腕を捕まれ行く手を閉ざされた。


 KONYAKUSYA? は? この男は淫魔だの、婚約者だのってもしかして嘘をついて私を馬鹿にしてるの?


 日和の顔は引きつり、怒りに満ちて力いっぱい腕を振り洸夜の腕を振り払った。


「何すんのよ! この変態スケベのヤリチン野郎!!」


「はあ!? ヤリチンなんかじゃねぇ! 俺は日和しか抱いたことねぇよ!」


「ひゃあっ」


 勢いよく引き込まれ洸夜の腕の中に囚われた。


 ジタバタ動こうにも男の力はやっぱり強くて抜け出せない。


「離してっ」


「やだ。日和が提出したアンケート見た。年齢、収入、容姿、煙草も吸わないし、ギャンブルもしない。理想の結婚相手は俺だろ? 身体の相性もバッチリだし」


 足の爪先から湧き狂うように怒りが込み上がる。


「もう、決定事項だからな! っつぅ――」


 この男何言ってんの!? 自意識過剰もいい加減にしろ!!!


 日和は身体に巻きついた洸夜の腕をガブリと噛み腕から抜け出した。


「いってぇ、何すんだよ!」


「知るか! あんたなんて願い下げだよ! このヤリチン野郎!!!」


 捕まる前に逃げるが勝ち! 


 日和は全力疾走でハピフルコネクトライフを出た。


 ……あいつ、私しか抱いた事無いって言ってた……本当に淫魔って存在するの……?


 遠く離れたところで、日和は足を止めた。


 「そんなのあり得ないよね」


 ……だってあんなに女の身体を知っているような抱き方をするんだから。淫魔なんかじゃなくて淫乱野郎だ!


 絶対そうだと自分に言い聞かせる。じゃないと信じてしまいそうだから。あの真剣な瞳に、日和と名前を呼ぶ優しい声。あり得ない話なのに夢に出てくる男と同じ抱き方、同じ髪色、同じ声、同じ指だった。



コメント

  • せいとも

    相性バッチリ笑
    逃げられないね

    1
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