致し方ないので、上司お持ち帰りしました

柚月しずく

30 夢の中で




 その日、真白さんに抱かれた夜、夢を見た。
 どこか懐かしくて、あたたかい夢だ。

「涼香……」

 私の名前を呼ぶ懐かしい声がした。
 何度も何度も、聞いた声。
 何度も何度も、もう一度聞きたいと願った声だ。

「おばあちゃん!」
「涼香、」
「おばあちゃん。私ね、たくさん話したい事ある! わからないの。おばあちゃんの予言通りに生きているのか、わからないの」
「涼香、ご縁が見つかってよかったね」
「ご縁って、真白さんのこと? 真白さんは童貞卒業したけど大丈夫だよね? 私、彼が大好きなんだ」
「おばあちゃんは、涼香と結ばれたご縁を引き合わせただけ。あとは涼香たち次第……」
「それって……」
「涼香、幸せになりなさい」
「おばあちゃん! おばあちゃん!」

 私の呼びかけに反応せず、おばあちゃんの姿が遠のいていく。
 もっと、話したいのに――。

 目が覚めた時、心に残っていたのは、あたたかな感情だった。そして、夢の中でおばあちゃんはとびきり優しい笑顔で笑っていた。

 祖母が導いてくれた不思議なご縁。
 隣には愛しい人が寝息を立てて眠っている。

 

 幸せは自分にしか感じられない。
 今心にあるこの感情は、胸を張って伝えられる。


「おばあちゃん、私。幸せになれたよ」

 この声は、天国の祖母に届くだろうか。

 彼が起きたらこの話をしよう。
 そして、真白さんにも伝えよう。

 今、幸せです。と。



 【完】
 
 

 

コメント

  • 清水レモン

    しあわせの感じが伝わってきます!!
    心の声がとても丁寧で、はらはらしました。よかったあ!

    2
コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品