堕天使の選択

「おはようございます。」
「おはよー。」
いつもと同じ日常だ。けれど何か違う。オフィスに入るとその違和感は益々強くなった。
「椎名さん。おはよう。」
その声にバッと振り返った。そこにはシーナが立っていたのだ。
「シーナ…」
「お早う。緑子！」
普通に挨拶をしてデスクに着いた。
「え。え。どういう事。」
私は混乱した。そう言えばある日起きたら世界が変わってるって言ってた。もしかしてもうすでに晃さんはシーナの物になっているの！？
「シーナ、ちょっといい？」
「あ、ごめーん。緑子。これからダーリンが来ちゃうからまた後でお話しよ！」
心臓がドクンドクンと早くなった。
「お早うございます。」
ニューヨーク支社の人が入って来た。シーナは東条を見つめている様だ。もう、私達は恋人ではなくてただの他人になったのだろうか。
「皆さんにお知らせがあります。私達ニューヨーク支社のメンバーは一旦、ニューヨークへ帰ります。短い間でしたがありがとうございました。」
パチパチパチパチ。拍手が起こる。
「それと僕からご報告があります。僕はこちらの本社に移動になりましたので、またよろしくお願いします。後、私事ですが婚約いたしました事を報告します。」
ドクンドクンドクンドクン。ああ。そうか。これがきっとシーナになったんだ。私は全てを理解した。


「そのお相手は和倉緑子さんです。」


一瞬、全ての時が止まった。
「へ？」
パチパチパチパチ。
「おめでとうございます！」
「おめでとうございますー。」
周りからは温かい拍手とお祝いの言葉がかけられている。
「いやあ。晃に先越されたかあ。」
西郷がそう言いながら拍手っをしている。シーナを見ると完全に目がハートだ。
一体どういう事なんだ。


「ねえ、シーナお昼一緒に食べよう。」
私はシーナを昼食に誘った。
「うん！いいよ！」
シーナは前と変わらない感じで笑いながら返事をした。
「何がどうなってるの！？！」
「へ？緑子の好きな人貰ったじゃん。」
「どういう事！？」
「だって、西郷さん、緑子が魔法使って飛んでるの見てたよ。緑子の好きな人は魔法知ってるって言ったじゃん。それに西郷さんは大切な人でしょ。」
あっけらかんと言うシーナに拍子抜けしてしまった。そりゃ大切だけれども。シーナは単純に西郷と東条を間違えたのだろうか。
「もう！シーナのばか！」
「何だろう、悪魔になるよりも人間になった方が楽しそうだったし、緑子とまたこうやって会いたかった。これが悪魔になる事を捨てた天使の選択だよ。