空を飛べない私は嫌いですか?
助け船
「では、皆さん。コスメ発売まであと少しですので、頑張りましょう。」
東条は私をあんなに惑わせる言葉を言っておきながら、相変わらずスマートに進行した。それにしてもさっきのあの言葉は気になってしまう。どういうつもりで皆の前で言ったのだろう。深い意味はないのか、自分の考え過ぎか。お腹は空いてるのに胸がつかえてサラダが喉を通らない。これが恋ならとても苦しくて楽しいのかもしれない。
胸が張り裂けそうなランチから帰って来ると、コスメのイメージモデルの候補の人達が会議室に集まっていた。皆とても綺麗でうっとり見とれてしまう。その中に東条が入っても全く目おとりしない。私は東条から目を離す事が出来ない。
「せんぱーい。婚活相手は東条本部長ですかぁ?」
耳障りな声が聞こえて来て今までのちょっと幸せだった気分は台無しになった。
「モデルさん達を見てたの。」
イライラしながら素っ気なく答えた。
「ふふ。分かりやすいんですね。クールぶってる割には。でも聡さんも引き留める事が出来ない人が東条本部長に行くのは無理だと思いますよ。」
ああ。この子とこれ以上話をすると殴りそうになる。自分は人の彼氏を略奪した事を悪い事だとは思っていないのだろう。他の女子社員にも勝ち誇ったかの様にベラベラと話をして平気な顔で居れるその神経が理解出来ないし、こんな子なのに顔がかなり整って媚びるのが上手いので上司と男性社員からの人気は高い。
「もし私が本部長を好きでも姫野さんには関係ない事よね?放っておいてもらえるとすごく助かるな。最近、私にちょっかい出してくるけど暇なの?」
あまり関わらないでおこう思っていたけれど意志にはんして結構強く言い返してしまった。
「あ、伊藤課長―!和倉先輩が怖いですぅ。少しお話しようとしたらちょっかい出すなとか言って来るんです。」
今まで何にもせずボーっとしていた伊藤課長が姫野の声に反応して私をキッと睨みつけた。
「和倉。お前、この間から姫野に強く当たりすぎだぞ。もう少し先輩としての余裕を見せろ。パワハラ問題になるから気をつけろ。あんまり酷いとチームから外れてもらうからな。」
はああ?近くにいて今の私達の話の内容聞こえなかったの?なぜ私だけが怒られるんだよ。折角、仕事も楽しくなって来たのに本当この人達のせいで居心地悪いんですけど。
「私は姫野さんが色々とプライベートに口出しするので注意しただけです。課長は姫野さんだけの意見を鵜呑みにするのですか?」
なるべく落ち着いたトーンで反論してみた。
「そうやってああ言えばこう言う。年なんだから若い子のやる事くらい大目に見ろっていうんだよ。ったくこんなんだから扱いにくいんだよ。」
ダメだ我慢の限界が近づいて来てる。この返答はもう殴っていいレベルだよね?
「伊藤課長、それはあなたの方がパワハラではないですか?」
殴ってしまおうとした時に、落ち着いてるが凄みのある声がした。
「東条本部長!いや、これはですね和倉が姫野に対してパワハラをしたという報告を聞いたので注意してただけです。」
「証拠はあるんですか?パワハラだという。ボイスレコーダーか何かに録音データなどあるのでしょうか。」
東条が淡々と課長を問いただす。
「それは無いですが、日頃から和倉は姫野に対して酷い態度を…」
「なので、その証拠はあるのですか?言った言わないの水掛け論をしている暇はないので本気でそのパワハラ問題を解決したいのならこのチームを降りて頂いて思う存分やってください。今、そう言う事をされる暇はないので。」
東条は冷たく冷酷な態度で課長に注意した。課長はみるみる青ざめていった。
「申し訳ございません。すぐ仕事に戻ります。」
伊藤課長はそそくさと逃げるように姫野を連れてその場を離れた。姫野はかなり不服そうな顔をしていた。
「あの、申し訳ございませんでした。」
こんなゴタゴタに巻き込まれて恥ずかしい場面を見られて情けない。
「いいえ。今は面倒事は避けたいので。」
それはそうだけど、冷たく言われると落ち込んでしまう。
「はい。気を付けます。」
シュンとして頭を下げた
「僕は緑子さんの力になれました?」
こそっと耳元で言われたその問いかけにハッと顔をあげた。
「こういうのは職権乱用ですかね?伊藤課長の事を力でねじ伏せちゃいました。」
東条がフッと笑った。その顔に心臓が爆発しそうなほど鼓動が跳ね上がっている。
「いえ、正論かざしてたので常識の範囲内です!」
私が勢いよく答えると東条はもっとクシャっとした笑顔で笑った。私の胸のドキドキのメーターはずっと振り切れっぱなしだ。貴方は私のスーパーヒーローだ。ダメだと思うほどに好きという気持ちが段々大きくなって来てしまう。生れて初めての片思いに甘酸っぱさを感じながら切ない気持ちに震えてしまう。そして姫野も今ので大人しくなるだろうと思っていたが怒られた腹いせに人の彼氏を略奪する位だ大人しくなる訳がなかった。甘く見ていた私が馬鹿だった。
「記念すべき第一店舗目はショッピングモールに出店予定です。この商業施設は注目度も高いですし、ここは私達の力の見せ所です。なので皆さんこれからもっと気合を入れて頑張りましょう。」
いよいよコスメ販売に向け最終調整に入った。コスメチームの皆とこの企画を成功させようと一致団結して頑張った。
「姫野さん。暇ならこっちの事務処理手伝ってもらえませんか?」
初めは自分の意見を言う事も出来なかったチームのメンバーもきちんと意見が出せる様になっている。女性社員が活躍しているのを見ると、こんなはずじゃなかったという感じがあからさまに出ている姫野とそれをフォローする姫野親衛隊。慣れては来たがやっぱり腹は立つ。けれど目まぐるしいほどに忙しい毎日に救われている所もある。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様でーす。」
皆が我先にと帰ろうとしている。
「突然すいません。今日、予定のない方が居ましたら僕たちと食事に行きませんか?強制ではないので行きたい方がいればいかがでしょうか?」
それまで皆は帰りたいオーラ満載だったのに、東条の声かけにほとんどの人が賛同した。その声掛けはその場では収まらず企画課全体に広り、急な声掛けにの関わらず大人数が集まってしまった。
「この人数だと居酒屋ですね。」
「予約取れたらいいけど。」
皆が頑張って入れるお店を探しているので私も一緒に探した。
「僕の思い付きなのに皆さんに迷惑かけてすいません。居酒屋とかあまり詳しくなくて。」
東条が申し訳なさそうにしている姿に女性社員達がキュンとしている。そういうのを見ると胸がチクチクしてしまう。
「入れそうなお店見つかりました!この近くでこれからすぐ来てくださいだそうです!行けそうですか?」
一人の女性社員が大きい声で叫んだ。
「では、皆さん。行きましょうか。」
クールな東条が笑顔で答えるとまた女性社員達は虜になる。私は自分だけが知ってる東条の笑顔が他の人に向けられるのが少し辛かった。
東条は私をあんなに惑わせる言葉を言っておきながら、相変わらずスマートに進行した。それにしてもさっきのあの言葉は気になってしまう。どういうつもりで皆の前で言ったのだろう。深い意味はないのか、自分の考え過ぎか。お腹は空いてるのに胸がつかえてサラダが喉を通らない。これが恋ならとても苦しくて楽しいのかもしれない。
胸が張り裂けそうなランチから帰って来ると、コスメのイメージモデルの候補の人達が会議室に集まっていた。皆とても綺麗でうっとり見とれてしまう。その中に東条が入っても全く目おとりしない。私は東条から目を離す事が出来ない。
「せんぱーい。婚活相手は東条本部長ですかぁ?」
耳障りな声が聞こえて来て今までのちょっと幸せだった気分は台無しになった。
「モデルさん達を見てたの。」
イライラしながら素っ気なく答えた。
「ふふ。分かりやすいんですね。クールぶってる割には。でも聡さんも引き留める事が出来ない人が東条本部長に行くのは無理だと思いますよ。」
ああ。この子とこれ以上話をすると殴りそうになる。自分は人の彼氏を略奪した事を悪い事だとは思っていないのだろう。他の女子社員にも勝ち誇ったかの様にベラベラと話をして平気な顔で居れるその神経が理解出来ないし、こんな子なのに顔がかなり整って媚びるのが上手いので上司と男性社員からの人気は高い。
「もし私が本部長を好きでも姫野さんには関係ない事よね?放っておいてもらえるとすごく助かるな。最近、私にちょっかい出してくるけど暇なの?」
あまり関わらないでおこう思っていたけれど意志にはんして結構強く言い返してしまった。
「あ、伊藤課長―!和倉先輩が怖いですぅ。少しお話しようとしたらちょっかい出すなとか言って来るんです。」
今まで何にもせずボーっとしていた伊藤課長が姫野の声に反応して私をキッと睨みつけた。
「和倉。お前、この間から姫野に強く当たりすぎだぞ。もう少し先輩としての余裕を見せろ。パワハラ問題になるから気をつけろ。あんまり酷いとチームから外れてもらうからな。」
はああ?近くにいて今の私達の話の内容聞こえなかったの?なぜ私だけが怒られるんだよ。折角、仕事も楽しくなって来たのに本当この人達のせいで居心地悪いんですけど。
「私は姫野さんが色々とプライベートに口出しするので注意しただけです。課長は姫野さんだけの意見を鵜呑みにするのですか?」
なるべく落ち着いたトーンで反論してみた。
「そうやってああ言えばこう言う。年なんだから若い子のやる事くらい大目に見ろっていうんだよ。ったくこんなんだから扱いにくいんだよ。」
ダメだ我慢の限界が近づいて来てる。この返答はもう殴っていいレベルだよね?
「伊藤課長、それはあなたの方がパワハラではないですか?」
殴ってしまおうとした時に、落ち着いてるが凄みのある声がした。
「東条本部長!いや、これはですね和倉が姫野に対してパワハラをしたという報告を聞いたので注意してただけです。」
「証拠はあるんですか?パワハラだという。ボイスレコーダーか何かに録音データなどあるのでしょうか。」
東条が淡々と課長を問いただす。
「それは無いですが、日頃から和倉は姫野に対して酷い態度を…」
「なので、その証拠はあるのですか?言った言わないの水掛け論をしている暇はないので本気でそのパワハラ問題を解決したいのならこのチームを降りて頂いて思う存分やってください。今、そう言う事をされる暇はないので。」
東条は冷たく冷酷な態度で課長に注意した。課長はみるみる青ざめていった。
「申し訳ございません。すぐ仕事に戻ります。」
伊藤課長はそそくさと逃げるように姫野を連れてその場を離れた。姫野はかなり不服そうな顔をしていた。
「あの、申し訳ございませんでした。」
こんなゴタゴタに巻き込まれて恥ずかしい場面を見られて情けない。
「いいえ。今は面倒事は避けたいので。」
それはそうだけど、冷たく言われると落ち込んでしまう。
「はい。気を付けます。」
シュンとして頭を下げた
「僕は緑子さんの力になれました?」
こそっと耳元で言われたその問いかけにハッと顔をあげた。
「こういうのは職権乱用ですかね?伊藤課長の事を力でねじ伏せちゃいました。」
東条がフッと笑った。その顔に心臓が爆発しそうなほど鼓動が跳ね上がっている。
「いえ、正論かざしてたので常識の範囲内です!」
私が勢いよく答えると東条はもっとクシャっとした笑顔で笑った。私の胸のドキドキのメーターはずっと振り切れっぱなしだ。貴方は私のスーパーヒーローだ。ダメだと思うほどに好きという気持ちが段々大きくなって来てしまう。生れて初めての片思いに甘酸っぱさを感じながら切ない気持ちに震えてしまう。そして姫野も今ので大人しくなるだろうと思っていたが怒られた腹いせに人の彼氏を略奪する位だ大人しくなる訳がなかった。甘く見ていた私が馬鹿だった。
「記念すべき第一店舗目はショッピングモールに出店予定です。この商業施設は注目度も高いですし、ここは私達の力の見せ所です。なので皆さんこれからもっと気合を入れて頑張りましょう。」
いよいよコスメ販売に向け最終調整に入った。コスメチームの皆とこの企画を成功させようと一致団結して頑張った。
「姫野さん。暇ならこっちの事務処理手伝ってもらえませんか?」
初めは自分の意見を言う事も出来なかったチームのメンバーもきちんと意見が出せる様になっている。女性社員が活躍しているのを見ると、こんなはずじゃなかったという感じがあからさまに出ている姫野とそれをフォローする姫野親衛隊。慣れては来たがやっぱり腹は立つ。けれど目まぐるしいほどに忙しい毎日に救われている所もある。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様でーす。」
皆が我先にと帰ろうとしている。
「突然すいません。今日、予定のない方が居ましたら僕たちと食事に行きませんか?強制ではないので行きたい方がいればいかがでしょうか?」
それまで皆は帰りたいオーラ満載だったのに、東条の声かけにほとんどの人が賛同した。その声掛けはその場では収まらず企画課全体に広り、急な声掛けにの関わらず大人数が集まってしまった。
「この人数だと居酒屋ですね。」
「予約取れたらいいけど。」
皆が頑張って入れるお店を探しているので私も一緒に探した。
「僕の思い付きなのに皆さんに迷惑かけてすいません。居酒屋とかあまり詳しくなくて。」
東条が申し訳なさそうにしている姿に女性社員達がキュンとしている。そういうのを見ると胸がチクチクしてしまう。
「入れそうなお店見つかりました!この近くでこれからすぐ来てくださいだそうです!行けそうですか?」
一人の女性社員が大きい声で叫んだ。
「では、皆さん。行きましょうか。」
クールな東条が笑顔で答えるとまた女性社員達は虜になる。私は自分だけが知ってる東条の笑顔が他の人に向けられるのが少し辛かった。
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