プロローグ　魔法の歴史より

記録によれば、魔法などという存在は存在しなかった時代があった。信じられないかもしれないが、これは事実である。

記録によれば、1928年頃まで、我々は科学技術の進歩にのみ頼っており、超自然的な力や存在には疑念を抱いていた。魔法は、たかだか物語や伝説の中で語り継がれる幻想に過ぎなかったのだ。

しかし、その年、突如として世界各地で異形の姿をした正体不明の存在が現れた。後に魔物と呼ばれるようになったそれらは人々の命を脅かした。恐怖と混乱が広がり、人々は突如として現れた魔物たちに立ち向かう手段を持たなかった。
当時発展していた科学技術では歯が立たなかったそうだ。

住居が襲撃され、都市が壊滅した。人類は無力感に襲われ、この恐怖に直面しなければならなかった。

しかし、そこで世界各地で伝説として語り継がれてきた者たち、魔法使い、陰陽師、あるいは呪術師等と呼ばれた者達が世界の表舞台に姿を現したのだった。
今では魔導士と呼ばれている存在だ。
世界各地で様々な呼ばれ方をしていた彼らだが統一して魔導士と呼ぶようになったそうだ。

魔法使いたちは力強く立ち向かった。数多くの犠牲が出たが魔物からの侵攻は完全に食い止めることはできず、最終的には遅らせることしかできなかった。侵攻の勢いは収まらず、疲弊した人々は希望を失いかけていた。

しかし、その時、ある国が奇跡的な発見を成し遂げた。その国の科学者と魔法使いたちは、研究を重ねていくにつれて魔法という存在を扱える人間が現れ出したのだ。
魔法は先天的ギフテッドのようなものではなく後天的に扱えるようになることがわかったのだ。
魔法と科学の融合による成果だった。
もちろん魔法を使うには才能が必要ではあったが魔法使い達にもわかっていなかった魔法の仕組みが解明されて扱える人が大幅に増えたのだ。

この発見により、人類は新たな希望を見出し、魔物たちに対抗できる力を手に入れた。魔法使いたちは数を増やし、ついに魔物の侵攻を食い止める事ができたのだ。
しかしあくまで食い止められただけ。
魔物は突然現れるのだ。倒してもキリが無いので魔物が現れたら魔導士が駆けつけ退治をする仕組みが出来上がった。

魔法と科学が交わり、人間と魔物が終わりなき戦いを繰り広げる新たな時代が始まったのだ。

それから285年が経った今もなお、魔導士は国家の中心的な存在となっている。各国は競うように魔導士の養成に力を入れている。
それは魔導士が不足すれば国は滅びる運命を辿るからだ。
だが国が滅ぶ時、それは魔物によるものか、あるいは…

Drアレキサンダー・ブラックウッド著
「魔法の歴史」より

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